異世界行ったら従者が最強すぎて無双できない。

カザミドリ

文字の大きさ
20 / 45

東の街イリマ

しおりを挟む
 さて、矢継ぎ早に変態と遭遇したわけだが。まさかの?魔王軍幹部だった。

「ふふん、驚きに声も出ないようだな!」

「さすがアニキですぜ!」

 いつの間にかワラワラと子分が出てきていた。因みに全員ブーメランパンツ。

「ブーメランパンツの盗賊ってどうなんだろうか?」

 恐怖を与えるという事なら、ブーメランパンツ一丁の集団は効果抜群ではあるが。

「ん?そう言えば人魔って?」

「なんだ?知らないのか?なら教えてやろう!」

 子分①が前に出てきて誇らしそうに語り出す。

「この御方こそ!人の身でありながら、彼の魔神にも匹敵するであろう力を得て、魔王軍にスカウトされた人魔将ダナン様であーる!」

 今にも頭が高い!と言い出しそうな勢いで子分①が矢継ぎ早に説明をする。人の身でありながら魔神に?まぁ、確かにその格好からは人を捨てた感が漂うが。

「……そこまで強そうには見えないな?」

「ふふん、見ているがいい!」

 そう言ってダナンは近くにあった岩に近づいていく。

「はぁぁぁ、ふん!」

 ポージングを取り。

「はぁ!」

 岩に拳を叩き込み粉砕する。ポージングの意味はともかく確かにその力は普通の人のものではない。

「どうだ!見たか俺の力!」

 再度ポージングを取りながら暑苦しく問うダナンだが。

「………フェン」

「はい、タクト様!」

 呼んだだけで意図を察してくれたフェンがダナンの砕いた岩の隣にある倍以上は大きい岩の前に立つ。

「ほっ!」

 少し気の抜けた掛け声と共にフェンが軽く岩を叩くと。

ドオォン!

 まるで爆撃にでも有ったかのような轟音と共に岩の有った場所が吹き飛ぶ。

「…………」

 あんぐりと口を開けて呆然とするダナンとその子分。

「これでよろしいでしょうか?タクト様!」

 子犬が誉めて欲しそうにするように、満面の笑みのフェンの頭を撫でる。

「ああ、バッチリだ」

 バッチリ力の差は見せられただろう。

「おーい!人魔のダナンさん?」

「…………」

「ダメだ、聞こえてない」

「い、いったい、その子は?」

「うちの従者だよ、他に三人同じ様なのが控えてるけど」

 後ろに控えているメロウ達を見て引きつった笑いをするダナン。

「お、お前ら何者だ?」

 何者と聞かれたらまぁ。

「勇者パーティー?かな」

 手の甲を見せてとりあえず勇者と名乗る。

「な!?ゆ、勇者だと!?」

「ダナンのアニキ!そういえばこいつらベイルンの方から来ましたぜ!」

「なに?確かベイルンにはミエムが行っていたはず、そういえばミエムは勇者を倒しに行くと言っていたな、こいつらがここに居るという事は取り逃がした?いや、ミエムは変態だが四天王の一人だ、簡単に取り逃がすとは考えずらい、それに聞いていた勇者とは違うように見える………」

 変態が変態を罵りつつ何か考えていたようだが。

「まぁいい!ミエムが取り逃がしたのなら、俺の手柄にしてくれる!」

 直ぐに考える事を放棄した。潔さに感心するべきか?脳みその固さに呆れるべきか?

「ここで潰れろ勇者!」

 両手を広げ掴みに来るダナンであったが。

「ふっ」

 その前に出て掴み合いをするフェン。本来なら体格差的にフェンが押し負けるはずだが。

「え?いや、ちょっと、くっ、お?ぬぅ……」

 徐々にダナンは押さえつけられ、最終的には地面に這いつくばる形になる。

「ちょっと待って!痛い、痛い、痛い!」

 這いつくばって尚押し込むのを止めないフェン。

「あー、フェン?離して上げなさい」

「はーい!」

 指示すると直ぐにフェンが手を離し、慌ててダナンが逃げる。

「な、何なんだその子供は!?」

「悪い事は言わないから帰れ、追いかけないから」

 正直追う理由も捕まえる理由も無い、勇者とはいえ今後どうするかは検討中である。

「………くっ、今日の所は見逃してやる!有り難く思え!」

「野郎共ずらかるぞ!」

 ダナンが一目散に逃げる中、子分達が慌てて追いかける。

「……はぁ、もう魔王軍は勘弁だな」

 魔王軍って変態の集まりなのか?

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 さて、ダナンが去り一難去ってまた一難……とはならず、その後はイリマまで何事もなく進んで居たのだが。

「タクト様、検問があります」

「……またか」

「また勇者ですかね?」

「いやフェン、勇者今俺だからね?」

「あはは、そうでした」

 勿論俺達は道を塞げなんて言っていない。

「何のための検問何だ?」

「……ふむ、以前のものより些か険しいですな」

「はい、何か空気がぴりぴりしてます」

 どうやら何か相応の理由があって検問が開かれているらしい。

「クロノあまり刺激しないようにゆっくり近づいてくれ」

「承知しました」

 殺気立つ検問にゆっくりと差し掛かる。

「停まれ!」

 もう言い方が殺気立ってる。

「これは何の騒ぎですか?」

「ギルドマスターレイツ様の命により、盗賊の一斉排除をしている!中を改めさせてもらうぞ!」

「はぁ、どうぞ」

 うーん、ギルドマスター直属の命令なら仕方ないか。盗賊関連で何かあったのかも。

「む!?この少女達は何だ?何処から拐ってきた!」

「いえ、拐ってません、従者兼冒険者仲間です」

「嘘をつくな!怪しいな……」

 あー、人の話を聞かないタイプの兵士だ。

「まぁまぁ、そんなにぴりぴりしなさんな」

 後から話を聞かない兵士を宥める声が聞こえた。

「悪いねぇ、ちょいと苛立ってるのよ許してやってくれ」

 そこにはヨレッとしたオッサン兵士が居た。鎧を身に付けているんだが、雰囲気と言うか、纏う空気がヨレッとしている。

「隊長しかし!」

「まぁまぁ、とりあえず全員のギルドカード確認したらどうだい?」

「む、それもそうですな………」

 部下を宥めつつ解決策を投じる、できる上司だ。

「いやー申し訳ないがギルドカードを見せてもらっていいかな?」

「いいですよ」

 低い姿勢からの柔らかい物言いに快くギルドカードを渡す。メロウ達もギルドカードを出して確認してもらう。

「はい、確かに皆さん冒険者ですね」

「失礼しました!」

 冒険者で有ることを確認すると直ぐに部下の人は謝って来た。

「いえ、分かって貰えれば大丈夫です」

 その後馬車に積んでいた申し訳程度の食料(ほとんどの荷物はメロウが空間魔法で収納している)などを確認して検問は無事終わる。

「はい、大丈夫ですね通っていいですよ、お騒がせしました」

 通行の許可は貰ったが、興味本意で話を聞くことに。

「どうしてあんなに威圧的と言うか、苛立ってたんですか?」

「ん?ああ、君達が来る前にここを盗賊に突破されちゃってね」

「盗賊にですか?」

 俺達の対応をした二人の他にも、武装した兵士が多く駐留しているここを突破する盗賊が居るなんて………心当たりは一つしかない。

「………もしかして変な格好、具体的にはパンツ一枚の集団では?」

「よく知ってるね?我々も彼らがこの近くに潜伏しているのを知らなかったのに」

 兵士の視線が鋭くなる。

「ええ、まぁ、来る前に絡まれたんで」

 隠すことでもないので素直に答える。

「ほぅ?彼らは魔王軍の幹部だよ?よく無事だったね」

 更に視線が鋭くなるのが分かった。

「そうですね、この子のお陰で撃退できました」

 フェンの頭を撫でながらにこやかに言うと。

「………君達は本当に何者だい?」

 さっきまで穏やかだった兵士隊長の顔が険しくなったので仕方なく。

「一応勇者です」

 名乗ったのだが。

「…………」

 どうやらまだ俺達の事は伝わっていなかったらしく、目を点にして驚く兵士隊長とその部下。それだけでは留まらず、検問所に居た兵士も馬車の御者もこちらを見て唖然としている。
 
「あ……ああ………」

「大丈夫ですか?」

「も、申し訳ありませんでした!!」

 先程とは比べ物にならない謝罪をされる。両手、両膝を地面につける所謂土下座スタイルである。

「えっと?」

「す、直ぐに冒険者ギルドにご案内致します!おい!道を開けろ!」

 その後何が何だかわからないまま冒険者ギルドに連れて行かれ、そこで目にしたのは。

パーパパパンパパパパー!!

 パレード並の鼓笛隊によるトランペットの様な楽器演奏と。

「ようこそいらっしゃいました!勇者タクト様!!」

 満面のギルドマスターレイツさんによる大歓迎だった。前にも思ったけど俺、レイツさんに何かしたっけ?

 こうして俺達は東の街イリマにたどり着いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...