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変態が過ぎ去り……?
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魔王軍幹部ミエムの痴態を見て引いていると、ミリアリアの呟きが聞こえた。
「……やはり、鉄壁のミエムですね」
「鉄壁の?」
「はい、高い防御力を誇り、傷を付けられるものはいないと言われています」
「いや、でも切れたぞ?」
「ええ、しかし見てください」
ミリアリアが差す方を見ると。
「はぁ、はぁ……」
斬られた腕をペロペロ舐めるミエムが居た。
「……あれが?」
「既に傷が治っています」
確かに、言われてみれば腕には傷は無くきれいになっていた。
「唾液にすごい回復効果が!?」
「いえ、元々ミエムは高い防御力と驚異的な瞬間回復能力を持ち、鉄壁の二つ名が付けられたのです」
いや、それに加えてもう一つ。
「はぁ、はぁ、さぁ、さぁ、もっともっとわたくしを傷つけて下さいましー!」
圧倒的被虐趣味が鉄壁の由来では?
「タクト様危険です、御下がり下さい」
メロウが前に出て俺を背に隠そうとする。危険なのは能力?それとも思考?
「はぁ、はぁ、はぁ……」
思考かな?そんな事を考えていると、いつの間にかクロノ達がミエムに接近していた。
「いやはやさすが魔王軍幹部、貴女は実に危険です」
言うが早いか、クロノがミエムの腕を切り飛ばし、フェンが腹に掌底を叩き込む、極めつけはエニによる焼却。
「あ、あれはさすがに……」
死んでるんじゃないか?そう思ったが。
「はぁぁぁ、しゅ、しゅごいぃ!」
炎が収まるとそこには内股で小鹿のように脚を震わせるミエムの姿。
「マジか……」
驚異的な瞬間回復能力、確かに鉄壁だ何より痛みに恐怖がないのが恐ろしい。
「………」
「タクト様、如何いたしますか?」
ふむ、このままでは埒が明かない、何か解決策は無いものだろうか。
「ミリアリア、ミエムに攻撃能力は?」
「私が知る限り魔物を操るぐらいだったかと」
なるほど、ならば。
「とりあえずミエムは無視!周りの魔物を倒せ!」
『はい!』
従者達に指示を出すと直ぐに取り掛かり始めた。
「え?え?え?」
どうやらミエムは混乱しているらしい。その間にも次々と魔物は倒されていく。
「くっ、わたくしを無視するなんて!そんな事許されると思い!?」
ミエムがクロノの前に立ちはだかるが。
「失礼」
「なっ!?」
クロノは一礼していつの間にかミエムを通り過ぎる。ミエムは諦めず今度はフェンの前に出る。
「よっ!」
「うきゃ!?」
フェンは馬跳びのようにミエムを飛び越える。ミエムは懲りずに魔法を撃とうとしているエニの前に行く。
「ん……」
「へぅ!?」
放たれた魔法はミエムの脇をすり抜けていく。ミエムはメロウの前に出ようとするが。
「そこで大人しくしてなさい」
「放しなさい!」
魔法の鎖によって拘束されようやく動きを止める。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
さて、ミエムを拘束して少し。ようやく魔物を倒し終え後片付けを他の冒険者に任せて、俺達は今も拘束されているミエムの元へ。
「うぅ、ひどい、こんな仕打ちあんまりよ……」
どうやら拘束放置が相当効いたらしい。
「タクト様、如何いたしますか?」
「離してやれ」
とりあえず脅威は去ったので拘束を解き話をしようとしたが。
「ふ、ふふふ、まさかわたくしにこの技を使わせるとは……」
不適に笑うミエムを見て身構える。
「はぁぁぁ!最終奥義……」
ミエムの最終奥義?確か戦闘能力はないはず……?
「………逃げる!!」
突然の事に固まっていた俺達を置いてミエムは反転、走り始めた、そして逃げ足は結構早い。
「追いますか?」
「放っておけ、もう疲れた」
わざわざ追跡する理由も無いしそのままミエムを見送る。
「後片付けは冒険者に任せて良いそうなんで、俺達は教会に戻るか」
「畏まりました」
従者を連れてその場を後にする。
「そういえば魔王軍幹部って何人居るんだ?」
「えっと、確か四人だったはずです」
教会に戻る途中、何故か着いてきたミリアリア達に話を振る。じゃなきゃメロウ達のこいつら何?って視線が居たたまれない。
「鉄壁のミエム、豪傑のダナン、疾風のハウザン、道化のヒウンだったかな」
「四天王と呼ばれる魔王軍幹部」
ふむ、四天王ね。
「まさか、全員変態じゃないよな?」
「それはさすがに……」
「でも私達もミエムのあの性質は知らなかったよな?」
「無いとは言い切れないわね」
おう、あんなのが他に三人も?精神衛生上悪いな、できれば会いたくないものだ。
「………勇者辞めていい?」
「ダメです!」
ですよねー。魔王軍の可能性を知り肩を落としつつ教会に戻ると。
「おお!勇者様のご帰還だ!」
「勇者様!!街をお救いくださりありがとうございます!」
「勇者様!」
と、教会に避難していた街の人から感謝の言葉が雨霰と掛けられる。いや、ほとんど従者がやったんだけどね?俺はミエムの可能性を引き出しただけだよ?結局今回も俺はほぼ何もしていない。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
魔王軍幹部ミエムを撃退してから明くる日、教会は阿鼻叫喚に包まれていた。
「あぁぁ………」
「ヴォォ………」
「うぅぅ………」
決して魔王軍の策略などではない、主に二日酔いの為である。
「昨日飲み過ぎたんだな」
「この街って確か神聖な場所でしたよね?」
フェンの容赦ないツッコミを聞きつつ昨日の惨状を思い出す。何でも魔王軍が攻めて来て無傷だったのは奇跡だったらしく、街を上げてのお祭り騒ぎだった。町民だけならまだしも、騎士やシスター、果ては司祭まで参加する大賑わい。
「勿論俺達も飲んだのだが、不思議とスッキリしてるんだよな……」
たぶんメロウ辺りが何かしてくれたのだろう。
「このまま放置して次の街へって訳には行かないよな」
というわけで、今はメロウ、エニ、クロノに頼んで最低限街の機能が維持できるようにしてもらっている。俺とフェンは留守番だ。
「う、うぅ、た、タクト様、次はどちらへ?」
頭を押さえつつ青い顔でミリアリアが聞いてくる。あ、ミリアリアは最低限に入らなかったのね。良く見たら魔法使いと騎士も倒れてる、元勇者パーティーはクロノ達からしたら要らないらしい。
「あー、えっと、東の街イリマに行く予定だ、その後、拠点にしている南の街ファストに戻る予定だな」
「わ、わかりました、では、魔王軍の、うっぷ、情報が手に入ったら、うぅ、ファストに届けるようにします」
「あ、ああ、無理しないようにな?」
時よりえずくミリアリアに距離を取りつつ話をしているとクロノ達が戻ってきた。
「タクト様、一通りの処置は完了しました、出発しても問題ないかと」
「ご苦労、じゃあ行くか」
『はい!』
イリマへ行くため街の門に移動したのだが。
「うっぷ、ゆ、勇者様、うっ、誠に今回はありがとう、おぇ、ございました」
何故か阿鼻叫喚も着いてきた。いや、寝てろし。
「あ、いえ、はい、皆さんお大事に」
「うっ、また、ぜひお立ち寄り、おぇぇ」
うん、今立ち寄る気持ちが下がった。
「で、では、我々はこれで」
これ以上居たらもらいげろしそうなので素早く立ち去る。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
イリマに向けて馬車を走らせること数分。俺達は今困った事になっていた。
「ふははは!ここを通りたければ荷物を全て置いていけ!」
盗賊だ。いや、ただの盗賊なら別に困る事は無いんだが。
「ヌゥン!フゥン!フォォウ!」
「………なぁ、あんた一つ聞いていいか?」
「ん?何だ?」
「………何で、裸なんだ?」
「何を言う、ちゃんと着てるだろう?」
「うん、パンツだけな、それもブーメランパンツだけ、と言うかよくこの世界ブーメランパンツあったな、あとそのポーズなに?」
「これは、我が一族に伝わる由緒正しき強者を示すポーズである!」
うん、平たく言うと、ボディービルダーが盗賊として出てきたから困っているのだ。
ボディービルダーの名誉の為に言っておくが、彼らは然るべき所であの格好をしているからカッコよく見えるのであって、突然の物陰から飛び出して来たら、それはそれは困った存在になるのである。
「あー、うん、どうしようか?」
「排除しますか?」
「ふふん、どうやら知らないようだな?ならば教えてやろう!我こそは魔王軍幹部が一人!人魔!豪傑のダナンとはワタシの事だ!」
あいたたたー、自分から魔王軍幹部って名乗っちゃうし、サイドチェスト綺麗に決めてるし、見た目露出しまくりだし。
変態が過ぎ去ったら変態が来た。
「……やはり、鉄壁のミエムですね」
「鉄壁の?」
「はい、高い防御力を誇り、傷を付けられるものはいないと言われています」
「いや、でも切れたぞ?」
「ええ、しかし見てください」
ミリアリアが差す方を見ると。
「はぁ、はぁ……」
斬られた腕をペロペロ舐めるミエムが居た。
「……あれが?」
「既に傷が治っています」
確かに、言われてみれば腕には傷は無くきれいになっていた。
「唾液にすごい回復効果が!?」
「いえ、元々ミエムは高い防御力と驚異的な瞬間回復能力を持ち、鉄壁の二つ名が付けられたのです」
いや、それに加えてもう一つ。
「はぁ、はぁ、さぁ、さぁ、もっともっとわたくしを傷つけて下さいましー!」
圧倒的被虐趣味が鉄壁の由来では?
「タクト様危険です、御下がり下さい」
メロウが前に出て俺を背に隠そうとする。危険なのは能力?それとも思考?
「はぁ、はぁ、はぁ……」
思考かな?そんな事を考えていると、いつの間にかクロノ達がミエムに接近していた。
「いやはやさすが魔王軍幹部、貴女は実に危険です」
言うが早いか、クロノがミエムの腕を切り飛ばし、フェンが腹に掌底を叩き込む、極めつけはエニによる焼却。
「あ、あれはさすがに……」
死んでるんじゃないか?そう思ったが。
「はぁぁぁ、しゅ、しゅごいぃ!」
炎が収まるとそこには内股で小鹿のように脚を震わせるミエムの姿。
「マジか……」
驚異的な瞬間回復能力、確かに鉄壁だ何より痛みに恐怖がないのが恐ろしい。
「………」
「タクト様、如何いたしますか?」
ふむ、このままでは埒が明かない、何か解決策は無いものだろうか。
「ミリアリア、ミエムに攻撃能力は?」
「私が知る限り魔物を操るぐらいだったかと」
なるほど、ならば。
「とりあえずミエムは無視!周りの魔物を倒せ!」
『はい!』
従者達に指示を出すと直ぐに取り掛かり始めた。
「え?え?え?」
どうやらミエムは混乱しているらしい。その間にも次々と魔物は倒されていく。
「くっ、わたくしを無視するなんて!そんな事許されると思い!?」
ミエムがクロノの前に立ちはだかるが。
「失礼」
「なっ!?」
クロノは一礼していつの間にかミエムを通り過ぎる。ミエムは諦めず今度はフェンの前に出る。
「よっ!」
「うきゃ!?」
フェンは馬跳びのようにミエムを飛び越える。ミエムは懲りずに魔法を撃とうとしているエニの前に行く。
「ん……」
「へぅ!?」
放たれた魔法はミエムの脇をすり抜けていく。ミエムはメロウの前に出ようとするが。
「そこで大人しくしてなさい」
「放しなさい!」
魔法の鎖によって拘束されようやく動きを止める。
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さて、ミエムを拘束して少し。ようやく魔物を倒し終え後片付けを他の冒険者に任せて、俺達は今も拘束されているミエムの元へ。
「うぅ、ひどい、こんな仕打ちあんまりよ……」
どうやら拘束放置が相当効いたらしい。
「タクト様、如何いたしますか?」
「離してやれ」
とりあえず脅威は去ったので拘束を解き話をしようとしたが。
「ふ、ふふふ、まさかわたくしにこの技を使わせるとは……」
不適に笑うミエムを見て身構える。
「はぁぁぁ!最終奥義……」
ミエムの最終奥義?確か戦闘能力はないはず……?
「………逃げる!!」
突然の事に固まっていた俺達を置いてミエムは反転、走り始めた、そして逃げ足は結構早い。
「追いますか?」
「放っておけ、もう疲れた」
わざわざ追跡する理由も無いしそのままミエムを見送る。
「後片付けは冒険者に任せて良いそうなんで、俺達は教会に戻るか」
「畏まりました」
従者を連れてその場を後にする。
「そういえば魔王軍幹部って何人居るんだ?」
「えっと、確か四人だったはずです」
教会に戻る途中、何故か着いてきたミリアリア達に話を振る。じゃなきゃメロウ達のこいつら何?って視線が居たたまれない。
「鉄壁のミエム、豪傑のダナン、疾風のハウザン、道化のヒウンだったかな」
「四天王と呼ばれる魔王軍幹部」
ふむ、四天王ね。
「まさか、全員変態じゃないよな?」
「それはさすがに……」
「でも私達もミエムのあの性質は知らなかったよな?」
「無いとは言い切れないわね」
おう、あんなのが他に三人も?精神衛生上悪いな、できれば会いたくないものだ。
「………勇者辞めていい?」
「ダメです!」
ですよねー。魔王軍の可能性を知り肩を落としつつ教会に戻ると。
「おお!勇者様のご帰還だ!」
「勇者様!!街をお救いくださりありがとうございます!」
「勇者様!」
と、教会に避難していた街の人から感謝の言葉が雨霰と掛けられる。いや、ほとんど従者がやったんだけどね?俺はミエムの可能性を引き出しただけだよ?結局今回も俺はほぼ何もしていない。
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魔王軍幹部ミエムを撃退してから明くる日、教会は阿鼻叫喚に包まれていた。
「あぁぁ………」
「ヴォォ………」
「うぅぅ………」
決して魔王軍の策略などではない、主に二日酔いの為である。
「昨日飲み過ぎたんだな」
「この街って確か神聖な場所でしたよね?」
フェンの容赦ないツッコミを聞きつつ昨日の惨状を思い出す。何でも魔王軍が攻めて来て無傷だったのは奇跡だったらしく、街を上げてのお祭り騒ぎだった。町民だけならまだしも、騎士やシスター、果ては司祭まで参加する大賑わい。
「勿論俺達も飲んだのだが、不思議とスッキリしてるんだよな……」
たぶんメロウ辺りが何かしてくれたのだろう。
「このまま放置して次の街へって訳には行かないよな」
というわけで、今はメロウ、エニ、クロノに頼んで最低限街の機能が維持できるようにしてもらっている。俺とフェンは留守番だ。
「う、うぅ、た、タクト様、次はどちらへ?」
頭を押さえつつ青い顔でミリアリアが聞いてくる。あ、ミリアリアは最低限に入らなかったのね。良く見たら魔法使いと騎士も倒れてる、元勇者パーティーはクロノ達からしたら要らないらしい。
「あー、えっと、東の街イリマに行く予定だ、その後、拠点にしている南の街ファストに戻る予定だな」
「わ、わかりました、では、魔王軍の、うっぷ、情報が手に入ったら、うぅ、ファストに届けるようにします」
「あ、ああ、無理しないようにな?」
時よりえずくミリアリアに距離を取りつつ話をしているとクロノ達が戻ってきた。
「タクト様、一通りの処置は完了しました、出発しても問題ないかと」
「ご苦労、じゃあ行くか」
『はい!』
イリマへ行くため街の門に移動したのだが。
「うっぷ、ゆ、勇者様、うっ、誠に今回はありがとう、おぇ、ございました」
何故か阿鼻叫喚も着いてきた。いや、寝てろし。
「あ、いえ、はい、皆さんお大事に」
「うっ、また、ぜひお立ち寄り、おぇぇ」
うん、今立ち寄る気持ちが下がった。
「で、では、我々はこれで」
これ以上居たらもらいげろしそうなので素早く立ち去る。
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イリマに向けて馬車を走らせること数分。俺達は今困った事になっていた。
「ふははは!ここを通りたければ荷物を全て置いていけ!」
盗賊だ。いや、ただの盗賊なら別に困る事は無いんだが。
「ヌゥン!フゥン!フォォウ!」
「………なぁ、あんた一つ聞いていいか?」
「ん?何だ?」
「………何で、裸なんだ?」
「何を言う、ちゃんと着てるだろう?」
「うん、パンツだけな、それもブーメランパンツだけ、と言うかよくこの世界ブーメランパンツあったな、あとそのポーズなに?」
「これは、我が一族に伝わる由緒正しき強者を示すポーズである!」
うん、平たく言うと、ボディービルダーが盗賊として出てきたから困っているのだ。
ボディービルダーの名誉の為に言っておくが、彼らは然るべき所であの格好をしているからカッコよく見えるのであって、突然の物陰から飛び出して来たら、それはそれは困った存在になるのである。
「あー、うん、どうしようか?」
「排除しますか?」
「ふふん、どうやら知らないようだな?ならば教えてやろう!我こそは魔王軍幹部が一人!人魔!豪傑のダナンとはワタシの事だ!」
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