妻は六英雄だが俺はしがない道具屋です

どらごんまじっく

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次の一手 アリナ視点

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「なんだと……ここから二手に別れるって?」
私の提案に、ゼロスが難色を示した。
「敵は神殿の封印を次々破っているわ、この後、狙われるのはおそらく東の神殿か南の神殿……このまま、私たちがこのどちらかに向かっても敵がそれとは違う方へ向かえば、また一つ神殿の封印が破られるだけよ……」
「確かにそうだが……さっきの戦いでもわかったが、敵の力は侮れないぞ……戦力を分散して危険じゃねえか」
「そう……だから王都へ援軍の要請をお願いするのよ……」
「なんだって……なるほどな、なら話は早い、俺とアリナで東の神殿に向かって、残りの面子は南の神殿に向かう……南の神殿組は行く途中に王都に寄って援軍を得ることで戦力を増強するってことだな」
「ゼロスさんと私、アリナさんとバルティの組み合わせとかではダメなのですか」
フリージアがそう代案を言うが……
「残念だけどそれでは昨日の戦いのように、魔神二体を相手にするには戦力不足になるの……」
そう私が言うと、フリージアは沈黙した……

またゼロスとの旅が続くのは心苦しいが、これがベストの作戦だろ……

うまくいけば王都には他の六英雄の誰かがいる可能性がある、そうなれば安心なんだけど……六英雄がいなくても、王都には三十人の聖騎士が待機しているので、それだけでも南の神殿はなんとか対応できるとは思う。

「フリージア、これを王に渡して……それに全ての事が書いているから、スムーズに援軍を出してくれるはずよ」
「アリナさん、ありがとうございます……」
そう返事をするフリージアだが、どこか寂しそうだ……おそらくだけど、ゼロスと離れるのが嫌なんだろう……

「私はゼロス様について行くよ」
女山賊はそう宣言する。
「ダメだ……これからは危険な旅になる……お前は家に帰れ」
ゼロスが女に気遣いするなんて……今まで一緒にいて愛着が湧いたのだろうか……
「どうしてですか、連れて行ってください!」
女山賊は粘るが、ゼロスの意思が硬いのか、首を縦には振らなかった……どうやらこの騒動が終わったら、専属の従者としてそばに置いてもらえると言う話で女山賊も納得した。

女山賊と同じ理由で、セシルも王都への帰還を命令した……彼女もゼロスと離れるのがよほど嫌なのか難色を示したが、こちらも、騒動が終わったらたっぷり可愛がってくれるとの話で折り合いがついたようだ。


さて……仕方ないと言っても、ここからはゼロスと二人っきりの旅になる……さすがに無理やり手を出してくることはないと思うけど、夜の相手であった女たちが全ていなくなったので、何かしらのアクションはしてくる可能性はある……そこは細心の注意を払う必要があるだろう……だけど……少し前の私ならその細心の注意に自信があったけど……少しだけ……ほんの少しだけ……今の私には、自分でもわからない危険な要素があるような気がしてならなかった……それは以前なら絶対に断ったゼロスとの二人旅を、仕方ないとはいえ受け入れている事が物語っているような気がする……
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