妻は六英雄だが俺はしがない道具屋です

どらごんまじっく

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帰宅へ(最終話)

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神殿の封印を解いていたと思われるジアーノンを倒して、今回の騒動は一応の終わりを迎える……

あの後、ルーリエは暴れまくったけど、鎮静ポーションで落ち着かせて、なんとか大人しくなった……

「やっと帰れるな」
アリナにそう声をかけると、なぜか少し寂しい表情をしたのを俺は見逃さなかった……
「そうだね、早く帰って店を再開しないと……」

それから俺たちの住んでいるジンムの町へと向かう……王都へ報告に行くというので、ゼロスもそれに同行することになった……

「古い知り合いがこの町にいるの、久しぶりに会ってくるから、ちょっと出かけるわね」
帰りの旅路の途中で泊まった宿で、アリナがそう言う。
「そうか、あまり遅くなるなよ」
「うん、すぐ帰ってくるよ」
そうアリナは言ったが、帰ってきたのは深夜であった……まあ、古い知り合いとは久しぶりだったので話が弾んだんだな……


「あれ……アリナ……どこ行ったんだ……」
もう、ジンムの町まで後少し……帰路での最後の宿での就寝中、ふと起きるとアリナの姿が見えない……

ちょっと心配になって外を見に行った……
「あっ、ゼロス、アリナを見なかったか?」
ゼロスが歩いてこちらに向かってきていたので、そう聞いた。
「アリナか、そこにいるぞ」
見ると廊下の曲がり角の陰に彼女が立っていた。
「どこ行ってたの?」
「あっ……ええと、今日はちょっと飲みすぎちゃったからトイレ行きたくなって……」
「そうか、心配したよ……」
「ごめんね……」
でも……アリナそんなに飲んでたかな……

そしてやっとこさ、家へと到着した……
「ごめん、ヒュレル……やっぱり城への報告なんだけど、私もゼロスと一緒に行くことにしたよ」
「そんな……家に戻ったばっかりなのに……」
「ごめんね、ちゃんと話をしておかないと、後で面倒になりそうだし……」
「そうか……」

ジンムの町から王都にある城まで半日……王への報告、用事を済ませても二日もあれば帰ってくると思ったけど、アリナが帰ってきたのは五日後であった……

「ごめん、ちょっと報告が面倒臭いことになっちゃって……ジアーノンに代わる新しい六英雄の話にもなったし……ジアーノンに共犯者がいる可能性もあるからその話にもなったし……」
「無事に帰ってきてくれればそれでいいよ……」
そう俺が言うと、アリナはちょっと嬉しいような悲しいような微妙な表情をした……疲れてるんだな……ゆっくり休むといいよ……


ルーリエはジンムに戻っても、元の彼女には戻ってくれなかった……ベッドから動こうとしなくなり、いつもそこから外の木を眺めているだけの生活をしている……そんな彼女が不憫で……全部、俺が悪いかもしれない……あの時、彼女を連れていかなければ……


アリナはジンムの町に戻ると、六英雄の顔からいつものアリナに戻り、常連の戦士のキルドを手玉にとっている……あっ、あと、あの妖精だが……ちゃんと今でも俺の周りにいて、見てきた事を話してくれる……

俺は変わらず売れない道具を作って、店に並べている……いつもの日、いつもの時間……これがいかに幸せか噛みしめていた……
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