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死から得た希望
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夏の夕刻、彼は死亡した。享年19であった。
彼の肌は白く、身体は痩せ気味であり、髪はボサボサ、目の下には大きな隈があった。健康的な人間とは言えない身体をしていた。
彼は報われない人生だった。彼の父母は、彼がこの世に生を受けてすぐ離婚し、彼を母が引き取った。
彼の親友は中学三年の時に死亡した。
彼の親友は中性的な見た目であった。とても虚弱体質であり、クラス内ではヒトの輪に入れるようなヒトではなく、クラスメイトによって、心も身体も荒んでいき、彼の親友は還らぬヒトとなった。
彼は親友の心と身体が荒んでいるのを知りながら、クラスメイトを止める勇気がなかった。
彼も親友と同じく、ヒトの輪に入ることができないヒトであり、ずっと独りの中学校生活を送ってきた。
そんな彼に、話しかけてくれた親友は、彼にとって希望の光であり、彼の人生を変えた瞬間だった。
親友との学校生活は、今までの孤独な学校生活とは違い、家族ともあまり会話しない彼にとっては、唯一の話し相手だった。
でも、彼は親友を見殺しにした。
彼は怖かった。彼自身がクラスメイトの玩具にされるのが、彼の人生が狂ってしまうのが、助けを求めることすらできないような傷を負うのが。
彼はその結果、親友を助けるような行動を起こさずに、彼の親友は死亡した。
未来は、親友を救わなかった彼に責任が降りかかる結果となった。
親友を救わなかった彼を母は叱りつけ、母は彼に失望した。彼の親友の親は叱り付けはしなかったが、彼に失望したような、眼差しで見ていた。
この頃から、彼は何も考えられなくなった。
もうヒトと、関わる気すら彼は無くしてしまった。
彼自身の判断が彼自身を苦しめ 彼の将来の足枷となった。
彼は高校にこそ進学はしたが、昔に逆戻りしたような孤独な学校生活を卒業まで送った。
高校を卒業してから、彼は就職をせず、永遠と部屋で自堕落な生活を謳歌していた。
彼の人生は自分が主役なのではなく、彼はヒトを目立たせる脇役であると、そう考えているくらい、彼は荒んでいた。
高校を卒業して半年後の夏、彼、黒石影秋《くろいしかげあき》は母、黒石琴美《くろいしことみ》から一階へ呼び出されていた。
影秋がリビングのテーブルに腰掛けると、琴美は口を開いた。
「影秋くん、話があるの、、、」と言葉を放った。
いつもの母の言葉とは違い、いつにも増して重厚感があった。
琴美はそう言うと、机の上に札束を置いた。ざっと百万円くらいはあるだろう。
今度は少し冷めた口調で言葉を放った。
「このお金を持って出て行って。もう、戻ってこないで。もうお母さん、これ以上は貴方を養えない」
「わかった」と咄嗟に言葉が出てた。
影秋もいつかは言われると少し勘づいていた言葉。
このような自堕落な生活は影秋も悪いと少し思っていた。
自堕落に落ちた影秋との縁を切った母。
彼は母との今まで感謝とこの決断への感謝を込めて、「ありがとう」と言葉を小さい声で放ち、家を後にした。
琴美の目は少し潤んでいた。
家を去った後、全てを失った影秋の目から数多の滴がこぼれ落ちた。
なにも考えず家を出てきた影秋はとりあえず近所の駅を目指した。
影秋が住んでいる場所は、周りには何もない田舎。
地元で影秋は生きていける気が微塵もしなかった。
近くの駅を目指して歩いていると、小綺麗な新聞紙が落ちていた。見る限り、昨日の朝刊か夕刊だろうと思った。
興味本位で覗いてみると、その表紙には「○○県□□市の公民館で放火事件発生 死者12名 行方不明者3名」の文字が見えた。
影秋は、あの日以来何事にも、興味を示さないないのだが、何故か影秋は、この記事に惹かれてしまった。
間違ったヒトが起こした忌々しい事件なのだが、影秋は不思議に思えた。(何故公民館なのか、何故死者が12名も出たのか、そして、何故行方不明者がいるのか、ニュースにある写真を見る限り、公民館は全焼していない。倒壊している場所も見当たらない。そして、この公民館、本当に、燃えたのか?)
このように思えるほど、公民館は燃焼跡が少ない。
影秋は少し不思議思ったが、その新聞紙を駅のゴミ箱に捨て、ホームを目指した。
地元の小さな駅から、地方の中心となる駅へ向かっている途中も、その間もあの新聞紙の内容は離れなかった。
影秋は地方の中心駅から、都心へ向かう特急に乗ると、すぐに眠ってしまった。
影秋はこの半年間、部屋からほぼ動いていなかったため、少し動いただけでも、かなりの労力を使ってしまった。
午後四時頃、影秋は都心に着いた。影秋は都会に来たことがないため、影秋は人の多さに圧倒されてい
た。
影秋に都会は早かった。人の流れるような動きについて行けず、影秋は午後六時頃、疲れ果てて、都市の閑散とした近郊住宅街を歩いていた。
影秋は信号機もない交差点に通りかかった。
その交差点を歩こうとるすと、「バァァァン!!」と何かに身体があたり、轟音が響き、彼の意識は途絶えた。
彼は眼を見開いた。目に映った景色は一面中彼岸花が咲き、空の色は先が見えない程、漆黒に塗られた空が広がっていた。
「お前の命は尽きた、黒石影秋。
もう一度、黒石影秋として、命が欲しいか?」と女性の声が聞こえた。
影秋は声のする方向を見た。そこには、漆黒のスーツで身を包んだ、流れるような黒髪の女性が立っていた。
影秋は、見知らぬ場所、見知らぬ女性に「自分は死んだ」と突きつけられて、影秋は混乱と不安を覚えていた。
ヒトに絶望していた彼にとって、とても良い機会だった。
影秋はなにも考えず口を開いた。
「俺はもう、全てを失った自分を捨てたい、だから、俺に新たな生をくれないか?」
彼の本心を告げた。
もう、何もかも忘れたくて忘れたくて仕方がなかった。
しかし、彼のその発言は彼女の逆鱗に触れた。
「ふざけるな!!
自分で創った人生を、失敗などという言葉で簡単に片付けるな!!
その原因を作ったのは紛うとこなき自分であろう!!お前のような自分から目を背けるヒトが、新たな生が与えられると思うな!!」と彼女は怒鳴った。
少し落ち着いた後、彼女は
「お前には罰が必要だな、お前にはまだ知るものがある。それを知ってから、そのような大口を叩け。」
と話した後、何処へ消えてしまった。
彼女が去った後、影秋は急に目が眩み、その場に倒れ込んだ。
影秋は目を覚ました。
その瞳の中に、映り込んだ世界に目を疑った。
そこは野原であった。
草木が生い茂っていて、青空が広がっていた。
だだ、その空は、ガラスのような壁で、覆われていた。
そして、壁の先にあるのは空中に浮かぶ島、
島の真下には、純白の壁で建てられた巨大な城があった。
この光景を見た影秋は、少し興味を唆られてしまった。
ヒトに絶望した影秋の興味を唆るものは今まで一つもなかった。
初めて見た、現実離れした光景。
この世界に彼は少し、希望を抱いた。
暗闇の中、二人の男女は話し合っていた。
「そうか 君が、ヒトに怒りを示すなんて、成長したものだねぇ。」
「造り物のお前が、言えたセリフではないだろう?」
「おっと、それはそれは悪かった。でも、こんな不良品を造ったのは、君なんじゃないのかなぁ?」
「不良品? お前はやはり、失礼なやつだな。」
「あはは、やっぱり、君は成長しないなぁ。
あれは、少しの同情、いや、同族嫌悪から来た言葉なんだろう?」
「彼を送る為には、あのような言葉を放つしかなかったのだ。」
「ああ、彼は今まで見てきたヒトの中でも最高クラスの品だ。
必ず彼は素晴らしい作品を見せてくれるだろうさ。」
と言うと、男は暗闇の中に消えていった。
「そうか。」
女は何かを決めたような声を漏らすと、暗闇の中へ消えていった。
(さあ 見せてみろ。黒石影秋!!お前の生き方を、お前の絶望を、お前の死に方を、この腐り切った。
この私の世界で!!)
彼の肌は白く、身体は痩せ気味であり、髪はボサボサ、目の下には大きな隈があった。健康的な人間とは言えない身体をしていた。
彼は報われない人生だった。彼の父母は、彼がこの世に生を受けてすぐ離婚し、彼を母が引き取った。
彼の親友は中学三年の時に死亡した。
彼の親友は中性的な見た目であった。とても虚弱体質であり、クラス内ではヒトの輪に入れるようなヒトではなく、クラスメイトによって、心も身体も荒んでいき、彼の親友は還らぬヒトとなった。
彼は親友の心と身体が荒んでいるのを知りながら、クラスメイトを止める勇気がなかった。
彼も親友と同じく、ヒトの輪に入ることができないヒトであり、ずっと独りの中学校生活を送ってきた。
そんな彼に、話しかけてくれた親友は、彼にとって希望の光であり、彼の人生を変えた瞬間だった。
親友との学校生活は、今までの孤独な学校生活とは違い、家族ともあまり会話しない彼にとっては、唯一の話し相手だった。
でも、彼は親友を見殺しにした。
彼は怖かった。彼自身がクラスメイトの玩具にされるのが、彼の人生が狂ってしまうのが、助けを求めることすらできないような傷を負うのが。
彼はその結果、親友を助けるような行動を起こさずに、彼の親友は死亡した。
未来は、親友を救わなかった彼に責任が降りかかる結果となった。
親友を救わなかった彼を母は叱りつけ、母は彼に失望した。彼の親友の親は叱り付けはしなかったが、彼に失望したような、眼差しで見ていた。
この頃から、彼は何も考えられなくなった。
もうヒトと、関わる気すら彼は無くしてしまった。
彼自身の判断が彼自身を苦しめ 彼の将来の足枷となった。
彼は高校にこそ進学はしたが、昔に逆戻りしたような孤独な学校生活を卒業まで送った。
高校を卒業してから、彼は就職をせず、永遠と部屋で自堕落な生活を謳歌していた。
彼の人生は自分が主役なのではなく、彼はヒトを目立たせる脇役であると、そう考えているくらい、彼は荒んでいた。
高校を卒業して半年後の夏、彼、黒石影秋《くろいしかげあき》は母、黒石琴美《くろいしことみ》から一階へ呼び出されていた。
影秋がリビングのテーブルに腰掛けると、琴美は口を開いた。
「影秋くん、話があるの、、、」と言葉を放った。
いつもの母の言葉とは違い、いつにも増して重厚感があった。
琴美はそう言うと、机の上に札束を置いた。ざっと百万円くらいはあるだろう。
今度は少し冷めた口調で言葉を放った。
「このお金を持って出て行って。もう、戻ってこないで。もうお母さん、これ以上は貴方を養えない」
「わかった」と咄嗟に言葉が出てた。
影秋もいつかは言われると少し勘づいていた言葉。
このような自堕落な生活は影秋も悪いと少し思っていた。
自堕落に落ちた影秋との縁を切った母。
彼は母との今まで感謝とこの決断への感謝を込めて、「ありがとう」と言葉を小さい声で放ち、家を後にした。
琴美の目は少し潤んでいた。
家を去った後、全てを失った影秋の目から数多の滴がこぼれ落ちた。
なにも考えず家を出てきた影秋はとりあえず近所の駅を目指した。
影秋が住んでいる場所は、周りには何もない田舎。
地元で影秋は生きていける気が微塵もしなかった。
近くの駅を目指して歩いていると、小綺麗な新聞紙が落ちていた。見る限り、昨日の朝刊か夕刊だろうと思った。
興味本位で覗いてみると、その表紙には「○○県□□市の公民館で放火事件発生 死者12名 行方不明者3名」の文字が見えた。
影秋は、あの日以来何事にも、興味を示さないないのだが、何故か影秋は、この記事に惹かれてしまった。
間違ったヒトが起こした忌々しい事件なのだが、影秋は不思議に思えた。(何故公民館なのか、何故死者が12名も出たのか、そして、何故行方不明者がいるのか、ニュースにある写真を見る限り、公民館は全焼していない。倒壊している場所も見当たらない。そして、この公民館、本当に、燃えたのか?)
このように思えるほど、公民館は燃焼跡が少ない。
影秋は少し不思議思ったが、その新聞紙を駅のゴミ箱に捨て、ホームを目指した。
地元の小さな駅から、地方の中心となる駅へ向かっている途中も、その間もあの新聞紙の内容は離れなかった。
影秋は地方の中心駅から、都心へ向かう特急に乗ると、すぐに眠ってしまった。
影秋はこの半年間、部屋からほぼ動いていなかったため、少し動いただけでも、かなりの労力を使ってしまった。
午後四時頃、影秋は都心に着いた。影秋は都会に来たことがないため、影秋は人の多さに圧倒されてい
た。
影秋に都会は早かった。人の流れるような動きについて行けず、影秋は午後六時頃、疲れ果てて、都市の閑散とした近郊住宅街を歩いていた。
影秋は信号機もない交差点に通りかかった。
その交差点を歩こうとるすと、「バァァァン!!」と何かに身体があたり、轟音が響き、彼の意識は途絶えた。
彼は眼を見開いた。目に映った景色は一面中彼岸花が咲き、空の色は先が見えない程、漆黒に塗られた空が広がっていた。
「お前の命は尽きた、黒石影秋。
もう一度、黒石影秋として、命が欲しいか?」と女性の声が聞こえた。
影秋は声のする方向を見た。そこには、漆黒のスーツで身を包んだ、流れるような黒髪の女性が立っていた。
影秋は、見知らぬ場所、見知らぬ女性に「自分は死んだ」と突きつけられて、影秋は混乱と不安を覚えていた。
ヒトに絶望していた彼にとって、とても良い機会だった。
影秋はなにも考えず口を開いた。
「俺はもう、全てを失った自分を捨てたい、だから、俺に新たな生をくれないか?」
彼の本心を告げた。
もう、何もかも忘れたくて忘れたくて仕方がなかった。
しかし、彼のその発言は彼女の逆鱗に触れた。
「ふざけるな!!
自分で創った人生を、失敗などという言葉で簡単に片付けるな!!
その原因を作ったのは紛うとこなき自分であろう!!お前のような自分から目を背けるヒトが、新たな生が与えられると思うな!!」と彼女は怒鳴った。
少し落ち着いた後、彼女は
「お前には罰が必要だな、お前にはまだ知るものがある。それを知ってから、そのような大口を叩け。」
と話した後、何処へ消えてしまった。
彼女が去った後、影秋は急に目が眩み、その場に倒れ込んだ。
影秋は目を覚ました。
その瞳の中に、映り込んだ世界に目を疑った。
そこは野原であった。
草木が生い茂っていて、青空が広がっていた。
だだ、その空は、ガラスのような壁で、覆われていた。
そして、壁の先にあるのは空中に浮かぶ島、
島の真下には、純白の壁で建てられた巨大な城があった。
この光景を見た影秋は、少し興味を唆られてしまった。
ヒトに絶望した影秋の興味を唆るものは今まで一つもなかった。
初めて見た、現実離れした光景。
この世界に彼は少し、希望を抱いた。
暗闇の中、二人の男女は話し合っていた。
「そうか 君が、ヒトに怒りを示すなんて、成長したものだねぇ。」
「造り物のお前が、言えたセリフではないだろう?」
「おっと、それはそれは悪かった。でも、こんな不良品を造ったのは、君なんじゃないのかなぁ?」
「不良品? お前はやはり、失礼なやつだな。」
「あはは、やっぱり、君は成長しないなぁ。
あれは、少しの同情、いや、同族嫌悪から来た言葉なんだろう?」
「彼を送る為には、あのような言葉を放つしかなかったのだ。」
「ああ、彼は今まで見てきたヒトの中でも最高クラスの品だ。
必ず彼は素晴らしい作品を見せてくれるだろうさ。」
と言うと、男は暗闇の中に消えていった。
「そうか。」
女は何かを決めたような声を漏らすと、暗闇の中へ消えていった。
(さあ 見せてみろ。黒石影秋!!お前の生き方を、お前の絶望を、お前の死に方を、この腐り切った。
この私の世界で!!)
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