世界一身体が弱い姫と世界一メンタルが弱い騎士が冒険する話

なつみかん

文字の大きさ
1 / 10

囚われの姫

しおりを挟む

その昔、身体が弱い姫がいた。
息をすれば喉が張り裂け、歩くと骨が折れ…。
生まれてこの方外へ出たことがない。


一度でいいから太陽を浴びたい、

一度でいいから地に足をつけたい。

そしてあわよくば、
かっこいいお付きの騎士様と恋をしてみたい…………。

そういった想いが頭に駆け巡っていたその時、下の階から声がした。


床に耳をつけて聞き耳を立てる。


………どうやら医師と王が会話をしている様子。

そしてその会話内には驚きの内容があったーーーーーーーー。



「姫の寿命は持ってあと一年」



ショックで強く呼吸をしてしまう。
そして吐血。

いつものように、小さくゆっくりと呼吸を…と集中する。


そうしている内、ドアからコンコンとノックの音が。

「どうぞ」と姫は素っ気なく答えた。


そこには案の定、
王が立っており真剣な眼差しでこちらを見ている。

先刻の内容を伝えに来たというのだろうか。
とは言うものの、動揺を隠しきれてはいない。
王は迷いごと等があると手を後ろに組む癖があるのだ。


そして息を呑み、王は言った。



「何でも一つ、願いを叶えてやろう」



哀れみの慈悲だろうか。

私はあらゆる感情がどっと押し寄せてきた。


そして気づけば、口が動いていた。



「外へ出たい」



王は悲痛の表情をした後、

「わかった…少し考えてみよう」
と言いその場を後にした。


私は全てを諦めた。


あの言葉を発してただの一度も王は聞いてくれたことがない。

またいつもの通り適当な物を渡してきて遇らわれるのであろうーーーー。












数日後、またドアからノックの音が。


「何…?」と弱々しい声で私は答える。

扉は開き、
そこにはボサボサ頭の隈が酷い頼りなさそうな男騎士がいた。


信じられなかった。


王はこんなのを私に寄越したのだろうか…。



男騎士は何やら言いづらそうにごもごもしている。

私はギロっとした目で彼を見た。

男騎士はヒッと小さく声を出した後、漸く口を開いた。


「この城は魔物に現在進行形で襲われており、姫の身が危ないとのことでここへ来ました…」



私は目を見開いた。


身が危ないと王から聞いたのだろうか。

そして今ここには王がいない。ということは…………。

騎士は私の表情から察したのか、残念ながら…と低い声で報せた。




プツン、と糸が切れた音がした。




「私は産まれてから今までずっと不幸…。外へ出ることもままならず…これからの人生もどこかで幽閉されて生きていく…」

気づけばそんなことを口走っていた。


そんな時、
連絡通路の奥から魔物が押し寄せてくるのが見えた。

男はなにを思ったか鎧の左籠手を外し、
魔物たちに左腕を向けた。
手の甲には文字のようなものが刻まれていた。



「”風“のルーン」



男がそう言った途端、
全てがブワっと吹き飛んだ。

何が起こったのかわからず私は呆然としていたが、
塔と城との間が隔絶され外の風景が見えるようにーーーーーーー。

生まれて初めての“外”を目の当たりにし自然と涙が出てきた。




風がなびく風穴の前で男は言う。




「外へ出るだけ?もったいない。この広大な世界を共に冒険しませんか」




そうして手を差し伸べてきた。


私は
「うん」
と一言答え、その手を取った。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...