世界一身体が弱い姫と世界一メンタルが弱い騎士が冒険する話

なつみかん

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喧騒

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「なんでこんなことに…………」

樹海で一人の男が立ち尽くしていた。



時は遡るーーーーーーーーーーーー。



ー30分前ー


「カレル、あの緑が茂ってるところは何?」


方向を指で差し、風の衣で共に飛んでいる男に聞く。



「あれは森ですね。木がたくさん立ち並んでいて魔物が潜むには絶好の隠れ場でもあります。ちょうどあそこに用があったんですよね……」



カレルは深刻そうな顔でそこを見ている。



「へー、じゃあさっさと降りよ。なんか面白そうだし」


「まあ…そうですけどやっぱ魔物が多いとなるとユーリア姫はどこかで待って頂いたほうがいいのかなって…」


「私は冒険がしたいの。冒険には危険がつきものでしょ。いいから降ろして」



何やら私をそこに行かせたくない別の理由があるようだった。
カレルは私と目を合わせようとしない。



「じゃあ一人でいく。魔物だって前この衣があれば大丈夫だったし。じゃあね」


私はカレルの手を離し緑の大海へと落ちていった。


「えっあっちょ、ユーリア姫!??!!?!」



ーーーーーーーーーーーーーーー。



「正確に落ちた場所がつかめない……。たしかこの辺だったと思うけど…」


僕は何か音が聞こえないかと耳をすませた後、大声を出してみる。


「ユーリア姫ーーーーー!!ご無事ですかーー!!」


だめだ…。一向に反応がない。彼女は大声が出せずとも口笛やら何やらで反応できると思うんだけど……。


僕はその場を離れようとしたその時、黒い影が僕に襲い掛かってきた。



シュザッ


気づけば僕の腹は斬られていた。

ーーーーといっても皮一枚斬られた程度だ。
この達人技、まさかーーーーーー。


「おいカレル、ここで何してやがる」


赤くツンツンとした髪でつり目、身長は然程無いがそれを補う程の十分な威圧感を放っていた。


「え…あなたは………」


僕は相変わらず言葉が詰まってしまう。
ショッキングな出来事等があると起きてしまう悪い癖だ。

ーーーーそして左腕には誰かを抱えていた。
白い妖精のような衣装、ピンク色の髪、ユーリアだ。


「てめえがこいつをここに捨てたのか?おい。人の妹に何してやがる」


鋭い眼光で僕を睨んでくる。
当然だ…。彼とユーリアは兄妹と王様から聞いていた。
そして、ユーリアは今眠っているらしい。
何かあったのだろうかーーーーー。


「決闘だ…クソ野郎。四騎士同士戦うのは御法度だが、ここでは誰も見てねえ。問題ねえよな」


そうしてユーリアを傍らに置き再び彼は剣を抜く。


そう彼は四騎士の一、ザック・フォスターであり戦闘に特化しているーーーー。
純粋な戦闘力のみで言えば四騎士一の強さだ。

戦えば命はない…。
が…それよりも今ユーリアがどのような状況に陥っているかだけ、確認しておきたかった。


「姫の身になにが……?」


僕が質問した途端、血相を変えザックは襲い掛かってきた。

圧倒的な剣速、素早い身のこなし、僕には到底追いつけなかった。
そして倒れる。


ザンッ

「終いだな。死で償え」


ザックが僕に斬りかかろうとした刹那、ユーリアがやめて!と大きく声を放つ。




ザックは腕を止めた。


当然のことながら大きく声を出したユーリアは口が血塗れだ。
そして、何かを訴えたそうな目でザックの方を見ている。


「ユーリア!大丈夫か!?!!?」


ザックはユーリアの元へと駆け寄る。


「もう…いいの…。興味本位であんなもの食べた私が悪いから…」


「ネムリダケだろ!?食えば一時間は眠りにつく悪性の毒キノコだ…。こんな森でんなモン食ったら魔物にやられるのが落ちだ。カレル…てめえがユーリアをしっかりと見守ってれば…」



これは僕が悪いのだろうか……。
いやでも注意を怠っていたことに変わりはない。

僕は頭を下げすみませんでしたと謝る。


「チッ……人の大事な妹をこんな目に遭わせやがって…。覚えてろよてめえ」


「大丈夫だよお兄ちゃん…。ていうかお兄ちゃんがあの時お城にいればこんなことにならなかったじゃん…」


「ぐ…。悪かった……。あの時は重要な遠征で………。本当にすまなかった………。おまえの危機に気付いてやれず…」


「まあでも…カレルと会えたからいいけど」




ザックは僕に鬼のような形相を向けて来た。


「てめえ…妹に何を吹き込んだ」


「え……特に何も……」


「やっぱてめえは死刑だ!!」


ザックは左籠手を外し手の甲を見せる。

!?
そこには見慣れた文字が刻まれていたーーー。
ザックもルーン使い…。


「燃えろ、“火”のルーン!!!!」



爆炎が上がり辺り一面は火の海に。


「構えろ、カレル」


「お兄ちゃん……」

ユーリアは悲痛な声で言う。


ーーーーそうして僕も同じくルーンを解放。

ユーリアに被害は及んでいない。
ザックは余程細心の注意を払っているのであろう。


その気持ちの一欠片でも僕に向かないのだろうかーーーー。



ボウッ

爆炎が僕に襲い掛かる。


“風”のルーンで懸命に払うが、このままでは彼のルーンさばきに追いつきそうにない。


どうすれば……。


そんな時、ユーリアがこちらを見ていた。
真剣な眼差しだった。
アーサーと勝負をした時の僕のように。


何かを起こそうというのだろうか……。

たしかにザックはユーリアが何かをしでかすとは思わないだろう…。

しかし…でも…。



僕はそんな迷いを取り払うように自分の顔を両掌で叩いた。

そして、彼女を信じることにした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は兄の目元に血を掛けることにした。
血の目潰しというやつだろうか。
そして、
先程の口からの血を勢いよく吐き兄を狙ったーーーー。


案の定ザックは狼狽した。
不意に目を塞がれたということで、四騎士といえども急な対応はできないのだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

僕はその隙を狙った。
ザックの火の海を潜り抜け、ザックに目掛けて斬りかかろうとしたーーーーーー。

が、防がれた。
感覚でだろうか…。
僕の剣を白刃取りした後、
剣を熱で溶かしザックは僕の首根っこを掴んだ。


「死ね」


ザックは全ての火を僕に向ける。
終わったーーーーー。

そう思った次の瞬間、ザックが倒れ込んだ。


??

何が起きたのだろう…。


ユーリアの方を見てみると木の棒を持っていた。
先程の混乱に乗じて取ってきたのであろう。
そして先端には火が。


とはいえそんな少量の火でザックが倒れるとは到底思えない。

ユーリアはザックの体に向けて指を差している。


どこをーーーー。


あっ…。


下半身のある部位から、僅かな煙が立っていたーーーーーーーー。









「まだ、認めたわけじゃねーからな」

そう僕に向かって仏頂面で言うザック。
とはいえ少し顔を赤らめている。
余程先刻の決着が恥ずかしかったのだろうか。

「お兄ちゃん程の騎士でも負けるときは負けるんだね」

「おまえが卑怯な手を使わなければ……!」

若干険悪なムードだ。
といえどもユーリアへの気遣いは変わらない。
自身の体よりもユーリアへの体にどこか怪我はないかと目を配っている。


「まあ、連携力は大したもんだ。この俺を嵌めちまうんだからよ」


そう言い、照れ臭そうに僕をちらっと見る。


そしてユーリアが言葉を発す。

「カレル、この森に用があるって言ってたけれど私に行かせようとしなかったわよね。まさかお兄ちゃんいることがわかっててそうしたんじゃないの?」

ギクっと僕はリアクションをしてしまう。


「てめえ…妹に会わせねえつもりだったのか」


「あ…いやその…アーサーさんからここらにいるよとは聞いていたので……まあはい……ちょっと会わせたらめんどくさそうだなって…」


ユーリアはカレルらしいな、といった表情で僕を見てくる。
が、ザックは違かった。

「やっぱりてめえとは相入れねえ…。もうひと勝負だ……!!」

ザックはカレルを追いかけ、カレルは逃げていく。

先程とは異なり実に微笑ましい光景だった。


木漏れ日が差し込み、辺りは光に包まれた。
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