5 / 10
王
しおりを挟むそこはとてつもなく寒かった。
荒れ狂う白綿、純白の急坂、
一寸先をも見通せないといった酷く不安定な場所であった。
どこかの誰かが来たいと言った為、仕方なくきた次第だ。
その誰かが言葉を発す。
「お姫様、大丈夫ですか……?」
「まあ、ええ。先刻の森でいろんなもの食べたから大丈夫」
そう、ネムリダケといった悪性のキノコが存在するものの、逆に体に良い効果をもたらす良性のものも存在するのだ。
私の兄、ザックがそのことを教えてくれてわざわざ取りに行ってくれた。
風の衣を纏っているとはいえ、この猛烈な寒波では私はすぐ吹き飛ばされるか凍え死んでいたであろう。
彼に感謝しなくてはならない。
そうふと思った矢先、ウィーンといった機械音がした。
なんだろう…?
そう思って音が聞こえた方向を見ると、赤いまんまるの光が見えた。
「カレル…なにあれ…?」
私は不安げな声で聞く。
「ああ…あれはですね…………って、え?!!?ちょっ逃げましょう!!!!!!」
カレルはいつもの調子で長いうんちくを垂れようとしていたつもりだったらしいが、一気に顔は青ざめ私を抱え逃げようとしていた。
ダッダッダッダ……
l
l
l
ヒューーーー……ドンッッ!!!!
!?
元の私たちがいた地点には巨大な大穴が空いていた……。
ゼェゼェ……とカレルは猛烈な汗を垂らしながら息を吐いている。
「なんなのあれ…」
「次がきます!!逃げましょう!!!!」
私の質問を無視し再び私を抱えて走りだすカレル。
気づけば辺りにはあの光が大量に点々としていた。
ドンッドンッドンッッ!!!!
無数の光線が私たちを襲いかかる。
カレルは力を振り絞り荒れ狂う先の見えない急坂を駆け上って行ったーーーー。
が、石か何かで躓き転んでしまう。
そしてその場で蹲る。
「えっちょカレル……早く立たないとやばいよ……」
「わかってます!!!!けど……!!」
カレルの脚を見るとドクドクと真っ赤な鮮血が滲み出ていた。
ーーーーそして一斉放射。
あーーーーー。
死を覚悟したその時、
バサっと何かが私たちの前に舞い降りた。
光線は全て弾かれ、
光の元に当たったのかとんでもない爆発音が辺りに轟いた。
その閃光で、救世主の姿形が見えた。
白く長い髪、鎧の上から青い羽織りを被せており首元には襟巻きが付いていた。背丈は190cm以上あるのだろうか…。
私たちの方へ振り向き声を掛ける。
「大丈夫か?」
赤く鋭い瞳が私を見据えていた。
カレルは脚を抱えて未だに蹲っている。
「はい…大丈夫です。助けて頂いてありがとうございます。」
「そうか、なら良かった。俺は行く所があるのでこれで。」
えらく淡白な口調だった。
このまま行かせるべきか…。
いや…しかし命を助けてもらったのだ。
何かお礼がしたい。
「あの…お名前だけでも…」
どこかへ立ち去ろうとしている彼に向かって私は声を掛ける。
そして彼は言う。
「そこで蹲ってる男に聞いた方が早いと思うぞ」
え?
私はカレルの方を見る。
完全に死んだと思っていたのか、蹲ったまま気絶していた。
なので肩を揺すって起こすことに。
が、一向に起きない。
というわけで暴言を吐く事にした。
「ぽんこつゲッソリナイト」
はっ、と意識を取り戻し
辺りを見回していた。
「えっなんで僕生きてるの……」
はあ…と私はため息をつく。
そして救世主様の方を見るようにと促す。
すると…………
「!!!!!!師匠!!やっぱりここにいたんですね!!」
師匠……?
急に声を荒げられ私は耳が痛い。
先程の傷はどうやら冷えて固まり落ち着いたようだ。
「ああ、久方ぶりだなカレル。訪ねて来るだろうとは思っていたが、まさか何の備えも無しにここにくるとは」
う…反省してます……と
ペコペコと頭を下げている。
だが仕方ないようにも思える。
立ち入り禁止との看板があったし未開の山といった感じだ…。
「でも、危機に陥っていないと師匠は僕の前に出てくれないでしょう?まあここまで危険な山とは想定外でしたが……師匠も物好きですね…」
「探しものだ。この地に伝説の古代兵器が眠っていると聞いてな。ーーーが、見当はずれのようだ。あのような我楽多しか置かれていないとはな」
我楽多…………。
彼レベルになればそんな風に呼べるのか……。
いろいろ質問があるが、やはり彼の素性を今は知りたい。
「ねえカレル、あの人は誰なの?」
こそこそとした声で聞く。
「え、あ…そうですね……色々肩書きはありますが…ポピュラーなのは四騎士が一、エルウィン・ルイスということでしょうか…」
やはり……。
つまるところこれで…カレルとの四騎士捜索の旅は終わってしまうというわけか………。
少し寂しい…。
私のそんな表情を見かねてか、カレルは朗らかに声を掛けてきた。
「いったん王国にもどっても、僕が王様に頼んで姫と冒険できるよう進言しますので、ご安心を!!」
精一杯笑ってみせたようだった。
たとえ叶わなくとも、
彼と過ごした時間は変わらないものだから、
それでも良いかなと私は自分に言い聞かせた。
「あっえっとそれで、先刻の機械のことですが……。未だ眠ってるんですね…。」
眠っている?未だ?大昔からあるということなのだろうか。
「ああ。この山は人が滅多に寄り付かないからな。100年前の大厄災から何も変わっていない…」
「あっ…ええと…100年前になにかあったんですか?」
私は恐る恐る聞く。
「…100年前、魔神という魔物を統べる神がこの世を支配した。その時、魔神に対抗するべく生み出されたのがこの古代兵器だ」
たしかに……。
どんなものでも吹き飛ばせそうな程の威力であったーーーー。
エルウィンは話を続ける。
「魔神は伝説の古代兵器によって討たれ永遠の眠りへとついた。ーーーが、その古代兵器の居場所は行方知らずだ。俺はこのような未開の地を渡り歩きその行方を追っている」
「師匠は随分前からここに目をつけてましたもんね。その様子だと見回った感じなかったんですね……」
「この山は最も可能性が高かったのだが……。致し方ない。また振り出しからだ」
もう壊れてなくなっちゃったんじゃないの?という意見は胸に収めておく。
ーーーーすると、
エルウィンは私の方をじっと見つめ何やら感じ取ったような素振りを見せる。
え……?心の中読まれてた……?
そして、カレルへと声を掛ける。
「カレル。この先何があっても、この娘を護ると誓うか?」
??
一体なんなのだろう……。
とはいえカレルの答えも気になる。
私はカレルを見つめる。
ーーーーそして口を切った。
「当然です。命に代えても守り抜きます。ユーリア姫の騎士として、一生涯を捧げるつもりです」
彼ははっきりと言ったものの、
自分で言ったことを後になって羞恥心を覚えたのか、顔を赤らめている。
エルウィンは頰元を緩めた。
「それでいい」
カレルはひたすらタジタジとしながら、私は満面の笑みで、エルウィンに王への勅命を伝えた後彼を見送った。
ーーーってあれ?
何か忘れてるような……
あっ…。
「ねえカレル、お兄ちゃんに王国へ戻るようにって言うの言い忘れなかった……?」
「あっ」
カレルは口を半開きにして虚を突かれたような顔をしている。
とはいえ兄の事だから勘か何かで察しているであろう。
うんそう…そうだと信じたいーーーーーーーーーーーー。
・
・
・
・
・
円卓の席には、4人の騎士が座していた。
四騎士が一、アーサー・ナイトレイ
四騎士が一、ザック・フォスター
四騎士が一、エルウィン・ルイス
そしてーーーーーー。
騎士王 ラルフ・グランヴィル
「よく集まってくれた。諸君。」
ラルフが口を切る。
「あーーーー。道中アーサーに会ってなかったら危なかったぜ……。あの野郎……ちゃんと伝えろっての………!!」
「まあまあ…。こうして来れたんだし、いいじゃないですか」
「…」
「カレル・グリムは長期の旅路だったが故に休息を取らせ、今会議は欠席となっている」
「では会議を始めよう」
「ユーリア姫の、処刑について」
0
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】孤独を抱いた英雄と、孤独に生まれた魔法使い〜元Sランクと訳あり美少年の共同生活〜
藤原遊
ファンタジー
かつて“英雄”と呼ばれた女冒険者と、魔族の血を引く訳あり美少年の共同生活。
静かな町外れで暮らす元Sランク剣士シズナ。
魔力が使えず、かつては戦場を駆け抜けた彼女は、今は人目を避けて暮らしている。
ある日、彼女は“人間ではない少年”を拾う。
魔王軍の血を引き、人間にも魔族にも馴染めなかった少年・リュカ。
異質な力に怯えながら、それでも彼は人の中で生きたかった。
「あなたの隣にいたい。守れるくらい、強くなって」
少年は英雄に恋をした。
孤独を知る二人が、“居場所”と“誰かの隣”を探す、あたたかくて少し切ない成長譚。
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる