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王
しおりを挟むそこはとてつもなく寒かった。
荒れ狂う白綿、純白の急坂、
一寸先をも見通せないといった酷く不安定な場所であった。
どこかの誰かが来たいと言った為、仕方なくきた次第だ。
その誰かが言葉を発す。
「お姫様、大丈夫ですか……?」
「まあ、ええ。先刻の森でいろんなもの食べたから大丈夫」
そう、ネムリダケといった悪性のキノコが存在するものの、逆に体に良い効果をもたらす良性のものも存在するのだ。
私の兄、ザックがそのことを教えてくれてわざわざ取りに行ってくれた。
風の衣を纏っているとはいえ、この猛烈な寒波では私はすぐ吹き飛ばされるか凍え死んでいたであろう。
彼に感謝しなくてはならない。
そうふと思った矢先、ウィーンといった機械音がした。
なんだろう…?
そう思って音が聞こえた方向を見ると、赤いまんまるの光が見えた。
「カレル…なにあれ…?」
私は不安げな声で聞く。
「ああ…あれはですね…………って、え?!!?ちょっ逃げましょう!!!!!!」
カレルはいつもの調子で長いうんちくを垂れようとしていたつもりだったらしいが、一気に顔は青ざめ私を抱え逃げようとしていた。
ダッダッダッダ……
l
l
l
ヒューーーー……ドンッッ!!!!
!?
元の私たちがいた地点には巨大な大穴が空いていた……。
ゼェゼェ……とカレルは猛烈な汗を垂らしながら息を吐いている。
「なんなのあれ…」
「次がきます!!逃げましょう!!!!」
私の質問を無視し再び私を抱えて走りだすカレル。
気づけば辺りにはあの光が大量に点々としていた。
ドンッドンッドンッッ!!!!
無数の光線が私たちを襲いかかる。
カレルは力を振り絞り荒れ狂う先の見えない急坂を駆け上って行ったーーーー。
が、石か何かで躓き転んでしまう。
そしてその場で蹲る。
「えっちょカレル……早く立たないとやばいよ……」
「わかってます!!!!けど……!!」
カレルの脚を見るとドクドクと真っ赤な鮮血が滲み出ていた。
ーーーーそして一斉放射。
あーーーーー。
死を覚悟したその時、
バサっと何かが私たちの前に舞い降りた。
光線は全て弾かれ、
光の元に当たったのかとんでもない爆発音が辺りに轟いた。
その閃光で、救世主の姿形が見えた。
白く長い髪、鎧の上から青い羽織りを被せており首元には襟巻きが付いていた。背丈は190cm以上あるのだろうか…。
私たちの方へ振り向き声を掛ける。
「大丈夫か?」
赤く鋭い瞳が私を見据えていた。
カレルは脚を抱えて未だに蹲っている。
「はい…大丈夫です。助けて頂いてありがとうございます。」
「そうか、なら良かった。俺は行く所があるのでこれで。」
えらく淡白な口調だった。
このまま行かせるべきか…。
いや…しかし命を助けてもらったのだ。
何かお礼がしたい。
「あの…お名前だけでも…」
どこかへ立ち去ろうとしている彼に向かって私は声を掛ける。
そして彼は言う。
「そこで蹲ってる男に聞いた方が早いと思うぞ」
え?
私はカレルの方を見る。
完全に死んだと思っていたのか、蹲ったまま気絶していた。
なので肩を揺すって起こすことに。
が、一向に起きない。
というわけで暴言を吐く事にした。
「ぽんこつゲッソリナイト」
はっ、と意識を取り戻し
辺りを見回していた。
「えっなんで僕生きてるの……」
はあ…と私はため息をつく。
そして救世主様の方を見るようにと促す。
すると…………
「!!!!!!師匠!!やっぱりここにいたんですね!!」
師匠……?
急に声を荒げられ私は耳が痛い。
先程の傷はどうやら冷えて固まり落ち着いたようだ。
「ああ、久方ぶりだなカレル。訪ねて来るだろうとは思っていたが、まさか何の備えも無しにここにくるとは」
う…反省してます……と
ペコペコと頭を下げている。
だが仕方ないようにも思える。
立ち入り禁止との看板があったし未開の山といった感じだ…。
「でも、危機に陥っていないと師匠は僕の前に出てくれないでしょう?まあここまで危険な山とは想定外でしたが……師匠も物好きですね…」
「探しものだ。この地に伝説の古代兵器が眠っていると聞いてな。ーーーが、見当はずれのようだ。あのような我楽多しか置かれていないとはな」
我楽多…………。
彼レベルになればそんな風に呼べるのか……。
いろいろ質問があるが、やはり彼の素性を今は知りたい。
「ねえカレル、あの人は誰なの?」
こそこそとした声で聞く。
「え、あ…そうですね……色々肩書きはありますが…ポピュラーなのは四騎士が一、エルウィン・ルイスということでしょうか…」
やはり……。
つまるところこれで…カレルとの四騎士捜索の旅は終わってしまうというわけか………。
少し寂しい…。
私のそんな表情を見かねてか、カレルは朗らかに声を掛けてきた。
「いったん王国にもどっても、僕が王様に頼んで姫と冒険できるよう進言しますので、ご安心を!!」
精一杯笑ってみせたようだった。
たとえ叶わなくとも、
彼と過ごした時間は変わらないものだから、
それでも良いかなと私は自分に言い聞かせた。
「あっえっとそれで、先刻の機械のことですが……。未だ眠ってるんですね…。」
眠っている?未だ?大昔からあるということなのだろうか。
「ああ。この山は人が滅多に寄り付かないからな。100年前の大厄災から何も変わっていない…」
「あっ…ええと…100年前になにかあったんですか?」
私は恐る恐る聞く。
「…100年前、魔神という魔物を統べる神がこの世を支配した。その時、魔神に対抗するべく生み出されたのがこの古代兵器だ」
たしかに……。
どんなものでも吹き飛ばせそうな程の威力であったーーーー。
エルウィンは話を続ける。
「魔神は伝説の古代兵器によって討たれ永遠の眠りへとついた。ーーーが、その古代兵器の居場所は行方知らずだ。俺はこのような未開の地を渡り歩きその行方を追っている」
「師匠は随分前からここに目をつけてましたもんね。その様子だと見回った感じなかったんですね……」
「この山は最も可能性が高かったのだが……。致し方ない。また振り出しからだ」
もう壊れてなくなっちゃったんじゃないの?という意見は胸に収めておく。
ーーーーすると、
エルウィンは私の方をじっと見つめ何やら感じ取ったような素振りを見せる。
え……?心の中読まれてた……?
そして、カレルへと声を掛ける。
「カレル。この先何があっても、この娘を護ると誓うか?」
??
一体なんなのだろう……。
とはいえカレルの答えも気になる。
私はカレルを見つめる。
ーーーーそして口を切った。
「当然です。命に代えても守り抜きます。ユーリア姫の騎士として、一生涯を捧げるつもりです」
彼ははっきりと言ったものの、
自分で言ったことを後になって羞恥心を覚えたのか、顔を赤らめている。
エルウィンは頰元を緩めた。
「それでいい」
カレルはひたすらタジタジとしながら、私は満面の笑みで、エルウィンに王への勅命を伝えた後彼を見送った。
ーーーってあれ?
何か忘れてるような……
あっ…。
「ねえカレル、お兄ちゃんに王国へ戻るようにって言うの言い忘れなかった……?」
「あっ」
カレルは口を半開きにして虚を突かれたような顔をしている。
とはいえ兄の事だから勘か何かで察しているであろう。
うんそう…そうだと信じたいーーーーーーーーーーーー。
・
・
・
・
・
円卓の席には、4人の騎士が座していた。
四騎士が一、アーサー・ナイトレイ
四騎士が一、ザック・フォスター
四騎士が一、エルウィン・ルイス
そしてーーーーーー。
騎士王 ラルフ・グランヴィル
「よく集まってくれた。諸君。」
ラルフが口を切る。
「あーーーー。道中アーサーに会ってなかったら危なかったぜ……。あの野郎……ちゃんと伝えろっての………!!」
「まあまあ…。こうして来れたんだし、いいじゃないですか」
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「カレル・グリムは長期の旅路だったが故に休息を取らせ、今会議は欠席となっている」
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「ユーリア姫の、処刑について」
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