世界一身体が弱い姫と世界一メンタルが弱い騎士が冒険する話

なつみかん

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自由の騎士

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「お姫様…ですか」


「そうだ。先日そこへ魔物の群れが向かっているとの情報が入った。
ーーーーが、姫は救わなくとも良い。」


「!? なぜ……。ザックくんの妹さんなんですよね……それなら尚更………」


「おまえは知らなくていい。ただ任務を遂行しろ。これは命令だ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

       ・

       ・

       ・


腑に落ちぬまま目的地へと向かう僕、カレル・グリムであった。


取り敢えず王様やその従者さんたちは助けて……。


お姫様は…。


……いや、いや、全員助ける!!!


騎士の本分とは誰かを守る事だ……。

見捨てるなんて到底できない。


そんなことを考えている内、
目的の城へとたどり着く僕。


だが、外観特に変わった様子はない。

まだ襲われていないのだろうか…。


兎も角城の入り口へと向かい、
門を叩く。


「すみませ~~~~ん!!!どなたかいらっしゃいますかーーー!!!!」




…………。





返事が無い。



まさかとは思うが既に…。


僕は“風”のルーンを用いて
門を破壊する。


緊急事態だ…。
致し方ない。




そして城へと入ってみるものの、
そこは真っ暗、
誰一人いる様子はなかった。



……………………。





そうして暗闇の中
恐る恐る前へと進むーーーーーーー。










その瞬間、上階から悲鳴の声がした。








「キャーーーーーーーーーー!!!!!!誰かぁあああああああああああああ!!!!!!!!!」









僕は急いで天井へとルーンを放ち

大穴をつくった。



そして風を勢いよく地面に噴射し
高く飛び
上階へと踏み入れる事に成功した。




ーーーーーーー!!!!







そこは血の海であった。







兵士は皆やられた様で、
従者達、豪華なドレスを纏った恐らく
王様の妃であろう人物も血塗れで倒れていた。






が、その人物は最後の力を振り絞るように奥への扉を指差した。



そこへ王様がいるのか………??




感謝と謝罪を込め礼をした後、
僕は急いでその扉へと駆け寄り
再び風を用いて破壊した。







ーーーーーーすると、






そこには魔物達に囲まれる王様の姿があった。





「“風”のルーン!!!!!!!」






魔物達は吹き飛び
王様は襲われずと済んだ。



「…王様!!!!!!!助けに参りました!!!!四騎士の一、カレル・グリムです!!!!!!!」





僕は自分の身分を明かす事により
王様を少しでも安心させられるのではと考えた。





「四騎士……!!ザックと同じ………。いや、だがもう…遅い………私は終わった……」



…?


そう思い
王様の下半身部を見てみると、
魔物の牙で噛まれた跡があった。




しかもーーーーー。

どうやら毒牙であったらしい。

青く腫れもはや助けられない域にまで
達していた。



「王様…………」



僕は涙ぐみ言葉を発す。




そうすると、王様は
ニコッと微笑み言葉を発した。



「君は心が綺麗なのだな………。君のような人物を待っていたよ……。君なら……彼女を救える」


「彼女………?」



女…王様……

…お姫様のことだろうか。


そうして王様は言葉を続ける。



「娘を……ユーリアを頼む…………。君が彼女を救ってくれ…世界を見せてやってくれ」


「私は…………実に愚かな父であった。」


「そんなことありません!!!!娘さんを共に迎えにいきましょう!!!!!!


「………本当にいい騎士だな、君は」


…………。



彼は息を引き取った。




辛そうな、苦しそうな、寂しそうな…

最初はそのような顔をしていた彼だったが、

今は実に満足そうな顔で眠りへとついている。



…急がねば。






僕は城中の魔物を殲滅していくと共に、姫の居場所を探った。




どこだ……どこだどこだ…………







王様の様子を見た限り、
彼女に余り構えなかったという事だったのだろうか………。

つまり、別棟。
その可能性が高そうだ。




しらみつぶしに幾つかの別棟を探索していくものの、
お姫様は中々見つからない。




…………そして


最後の別棟となった。





ここに居てくれ……。



そうして探索を始めると、


前方奥に大きな頑丈そうな扉が見えた。



これか………??





僕は試しにノックをしてみる。



コンコン…



















「………………何…?」




少女の細い声が聞こえた。


よかった……。


まだ無事だったのか。


そう安堵し扉を開ける僕。







ーーーーが、


なにやら姫は青ざめていた。





え…………????





まさか毒に……?






そう思った瞬間、


鋭い目つきで僕を睨んできた。





えっこわ…………






ヒッと思わず声を出してしまう。

とはいえ…元気そうなのでよかった。



僕は現状を説明する事にした。

「この城は魔物に現在進行形で襲われており、姫の身が危ないとの事でここにきました…」






ーーーーすると、

彼女は何やら察したようだった。






僕は誰も連れていない…………。

それで理解したのだろう。




「残念ながら…」



そう低い声で報せた。









そして、

姫は堰が切れたように言葉を発し始めた。



「私は産まれてから今までずっと不幸…。外へ出ることもままならず…これからの人生もどこかで幽閉されて生きていく…」







…………。


相当辛い思いをしてきたのだろう。



彼女には幸せになってもらいたい……。





そう思っていたその時、

後方から物音がした。



どうやら、最後の魔物の群が
ここへと来たようだった。




…………。







彼女に世界の広さを知らせたい。




そして





























ーーーー僕がこの子を、護る。






「“風”のルーン」



鎧の左籠手を外し、

魔物達へと向け、

そう呟く僕。









連絡通路諸共全ては吹き飛び





外の世界への窓口が開いた。








そして、僕は言った。








「外へ出るだけ?もったいない。この広大な世界を共に冒険しませんか」










涙を流す姫に手を差し出し、



僕は精一杯微笑んだ。












「うん」











彼女はそう答え、僕の手を取った。







~END~
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