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赤と青の地雷原
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青い海に体が沈んでいく。あの日の赤い血の匂いがよみがえる。
あの時あれがなければ…今頃どうなっていたか…。
「うわっ!?」
俺は息を整える。ここはフェリーの中だ。
決してここは『あの日のコンビニ』ではない。
「はぁ…おい、うるせぇぞ」
そうこうしていたら、隣の男から注意を受けた。
「あっ、すいません」
俺は軽く謝り、また眠りにつこうとする。
しかし、隣の男は言葉を続けた。
「あんた、悪い夢でも見たのか?」
「え、あ、はい」
「…俺も眠れねぇんだ。お詫びだと思って説明しろや」
男の高圧的な態度に押される。
「…わかりました」
まぁこの男は自分の話を信じないだろう。
そう思いながら、俺は大学時代の最も奇妙な体験を言語化し始めた。
◇◇◇
「…コンビニ行くか」
俺は夏のあの日、近くのコンビニに寄った。
柿ピー、ちょっと高級なアイスクリーム、熱中症対策の塩飴。
俺はこれらを適当に買い物かごに入れて会計を済ませようとしていた。
その時、俺の隣を手をつないで歩くカップルが横切った。
「何か買う?」
「えっと…チョコレートケーキとかあるかな」
ケッ!生まれてこの方彼女というものを持ったことがない俺への当てつけですかい。
俺は内心そう思いながら、とっさにチョコレートケーキをかごに入れる。
チョコレートケーキはラスト一個。つまり彼女はチョコレートケーキを食べられないということになる。
ざまあみやがれ。人前でいちゃついた罰だ。
「ありゃ、チョコレートケーキないねー」
「うーん、じゃあなにか別の買う!」
しかし、彼らは俺の嫌がらせに屈することなくいちゃつき続けていた。
無性に腹が立ってきたが、怒りがピークに達したあたりで男の方がトイレに行った。
俺はその隙に会計を済まそうとする。
店員さんにかごを差し出し、お金を払った瞬間のことだった。
トイレの方から、破裂音が聞こえた。
「え、ちょ、いやぁぁぁ!」
その瞬間、俺もトイレの方を見る。
トイレのすりガラスには、血が飛び散っていた。
「大丈夫ですか?!」
俺は買い物かごを持ったままとっさにトイレのドアを叩く。
そして、ドアノブを激しく動かし始めた。
普段ならこれくらいでドアがこじ開けられることはないだろう。
だが、今日だけは違った。
鍵が閉まっていたはずのドアが開いた。
そして、その先は真っ黒な空間だった。
その空間はどこまでも続いているように見え、そして寒かった。
少しその空間にいると、声が聞こえた。
「赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?」
「は…はぁ?」
俺はこの謎の空間に飲み込まれた。
正直言って訳が分からないが、とにかく一つだけ思い出したことがある。
『赤い紙、青い紙』という怪談だ。
怪談の詳細については覚えていないが、とにかく青い紙を選ぶと血を抜き取られて、赤い紙を選ぶと血まみれになって死ぬという内容だった。
「ちくしょう、詰みじゃねぇか!」
俺は悪態をつく。ただ、俺もリア充を助けに行って自滅するほどお人よしではない。
俺は覚悟を決める。
「欲しいのは、赤い紙だ!」
俺はそう叫ぶと同時に塩飴をかみ砕き、正面に向かって吐き出す。
「ぐあっ!?」
幽霊かなにかのうろたえる声が聞こえる。
俺はとにかく塩飴をかみ砕いては吐き出すを繰り返した。
それが30秒ほど続いた後、俺は無事に現実に帰ってこれた。
その後、俺は現実世界を見回す。
あの彼女は、きれいさっぱりいなくなっていた。
「…ん?ん?!」
俺は軽くパニックに陥る。
そういえば、破裂音がするより一瞬先に彼女は叫んでいた気がするが…?
「もうこのことは忘れよう…」
俺はレジ袋を追加で購入し、そのまま店を後にした。
◇◇◇
「…普通に怖いな」
目の前の男は軽く震えていた。
はっきり言って俺も思い出したくない出来事なんだ。あの一件は。
「おやすみなさい」
俺は男に軽く言い放つ。
「おぉ…おやすみ」
彼もそう言い、眠りにつく。
翌日、やけに周囲に気を使って船内のトイレに入る彼を見かけて、ちょっと申し訳ない気持ちになったのはまた別の話である。
あの時あれがなければ…今頃どうなっていたか…。
「うわっ!?」
俺は息を整える。ここはフェリーの中だ。
決してここは『あの日のコンビニ』ではない。
「はぁ…おい、うるせぇぞ」
そうこうしていたら、隣の男から注意を受けた。
「あっ、すいません」
俺は軽く謝り、また眠りにつこうとする。
しかし、隣の男は言葉を続けた。
「あんた、悪い夢でも見たのか?」
「え、あ、はい」
「…俺も眠れねぇんだ。お詫びだと思って説明しろや」
男の高圧的な態度に押される。
「…わかりました」
まぁこの男は自分の話を信じないだろう。
そう思いながら、俺は大学時代の最も奇妙な体験を言語化し始めた。
◇◇◇
「…コンビニ行くか」
俺は夏のあの日、近くのコンビニに寄った。
柿ピー、ちょっと高級なアイスクリーム、熱中症対策の塩飴。
俺はこれらを適当に買い物かごに入れて会計を済ませようとしていた。
その時、俺の隣を手をつないで歩くカップルが横切った。
「何か買う?」
「えっと…チョコレートケーキとかあるかな」
ケッ!生まれてこの方彼女というものを持ったことがない俺への当てつけですかい。
俺は内心そう思いながら、とっさにチョコレートケーキをかごに入れる。
チョコレートケーキはラスト一個。つまり彼女はチョコレートケーキを食べられないということになる。
ざまあみやがれ。人前でいちゃついた罰だ。
「ありゃ、チョコレートケーキないねー」
「うーん、じゃあなにか別の買う!」
しかし、彼らは俺の嫌がらせに屈することなくいちゃつき続けていた。
無性に腹が立ってきたが、怒りがピークに達したあたりで男の方がトイレに行った。
俺はその隙に会計を済まそうとする。
店員さんにかごを差し出し、お金を払った瞬間のことだった。
トイレの方から、破裂音が聞こえた。
「え、ちょ、いやぁぁぁ!」
その瞬間、俺もトイレの方を見る。
トイレのすりガラスには、血が飛び散っていた。
「大丈夫ですか?!」
俺は買い物かごを持ったままとっさにトイレのドアを叩く。
そして、ドアノブを激しく動かし始めた。
普段ならこれくらいでドアがこじ開けられることはないだろう。
だが、今日だけは違った。
鍵が閉まっていたはずのドアが開いた。
そして、その先は真っ黒な空間だった。
その空間はどこまでも続いているように見え、そして寒かった。
少しその空間にいると、声が聞こえた。
「赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?」
「は…はぁ?」
俺はこの謎の空間に飲み込まれた。
正直言って訳が分からないが、とにかく一つだけ思い出したことがある。
『赤い紙、青い紙』という怪談だ。
怪談の詳細については覚えていないが、とにかく青い紙を選ぶと血を抜き取られて、赤い紙を選ぶと血まみれになって死ぬという内容だった。
「ちくしょう、詰みじゃねぇか!」
俺は悪態をつく。ただ、俺もリア充を助けに行って自滅するほどお人よしではない。
俺は覚悟を決める。
「欲しいのは、赤い紙だ!」
俺はそう叫ぶと同時に塩飴をかみ砕き、正面に向かって吐き出す。
「ぐあっ!?」
幽霊かなにかのうろたえる声が聞こえる。
俺はとにかく塩飴をかみ砕いては吐き出すを繰り返した。
それが30秒ほど続いた後、俺は無事に現実に帰ってこれた。
その後、俺は現実世界を見回す。
あの彼女は、きれいさっぱりいなくなっていた。
「…ん?ん?!」
俺は軽くパニックに陥る。
そういえば、破裂音がするより一瞬先に彼女は叫んでいた気がするが…?
「もうこのことは忘れよう…」
俺はレジ袋を追加で購入し、そのまま店を後にした。
◇◇◇
「…普通に怖いな」
目の前の男は軽く震えていた。
はっきり言って俺も思い出したくない出来事なんだ。あの一件は。
「おやすみなさい」
俺は男に軽く言い放つ。
「おぉ…おやすみ」
彼もそう言い、眠りにつく。
翌日、やけに周囲に気を使って船内のトイレに入る彼を見かけて、ちょっと申し訳ない気持ちになったのはまた別の話である。
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