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前編
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「変なダンジョンがあるんで、ちょっと相談に乗ってくれると嬉しいんですが」
私が知人の夜桜さんにそう言われたのは、ちょうど3日前のこの時間だった。
ダンジョン――――2048年、突如として圧倒的な力を持つ生物、『悪魔』が現れる迷宮。
放っておくと悪魔がダンジョンの外に出る上、ダンジョンはとても固く破壊は難しい。
なので、『冒険家』と呼ばれる人達が定期的にダンジョンに侵入している。
相談してきた知人も、その冒険家の一人だった。
ダンジョン侵入を配信する、『勇者系配信者』の第一人者で、かなりの経験を積んでいる。
だが、彼の経験を持ってしても、こんな不可解なダンジョンは見たことがなかった。
ダンジョンの第二階層の奥に、奇妙な抜け道があるのだ。
たまに現れる、知能の高い悪魔が抜け道を作ることはありえる。
しかし、その抜け道は行き止まりだった。つまり、抜ける先がないのだ。
夜桜さんはこのダンジョンに疑問を感じ、私に相談してきた。
夜桜さんによると「素人だからこそ、先入観にとらわれずに推理ができるでしょ?」とのこと。
私だって忙しいんだがなぁ……。
ひとまず、土曜日に近所のカフェで考えてみることにした。
◇1・私の推理◇
「うぅ……寒い」
異常気象によってとんでもない寒さを誇る今年の冬。
私はカフェに入り、バッグを開けた。
最近は強力な放射線を利用したシステムによって、ダンジョンに入らずとも間取り図を作ることが可能になったらしい。
私は夜桜さんから送られてきたダンジョンの間取り図を見る。
「うーん……」
確かに第二階層の奥に抜け道らしきものはある。
夜桜さんの言う通り、その抜け道はどこにもつながっていなかった。
他にもデコボコしている場所があるが……特に関係はないだろう。
まず可能性として浮かんだのは、知能を持たない悪魔が知能のある悪魔の真似をした可能性だ。
過去にダンジョンにいたが、寿命か事故で死んだ悪魔がどこかに抜け道を作り、それを見た別の悪魔が真似をした。
悪魔には他の悪魔がやっていることを模倣する癖があるからだ。
だが、それほど知能がないために失敗した。作ってる途中で作ってることを忘れたとか、そんなところだろう。
――――しかし、その仮説にはおかしなところがある。
かつていたはずの『知能がある悪魔』が掘った抜け道がない。
ダンジョン内部はとても固いため、掘った抜け道が時間経過で埋まった、なんて可能性はゼロに近い。
だとすると、この仮説は間違いなのか?
――――先入観にとらわれずに推理ができるでしょ?
夜桜さんの言葉が頭の中を駆け巡る。
私はダンジョンに近寄ったことすらないので、先入観なんてあるはずがない。
――――待てよ。
一つだけ私も、このダンジョンに対する先入観を持っているじゃないか。
『このダンジョンには抜け道がある』という先入観を。
と言っても、この穴に『作りかけの抜け道』以外のタイトルは思いつかない。
仕方がないので、私は一人の友人に電話をかけた。
プルルという音が数秒なった後、電話から声が聞こえた。
「もしもし、光弥です」
私が知人の夜桜さんにそう言われたのは、ちょうど3日前のこの時間だった。
ダンジョン――――2048年、突如として圧倒的な力を持つ生物、『悪魔』が現れる迷宮。
放っておくと悪魔がダンジョンの外に出る上、ダンジョンはとても固く破壊は難しい。
なので、『冒険家』と呼ばれる人達が定期的にダンジョンに侵入している。
相談してきた知人も、その冒険家の一人だった。
ダンジョン侵入を配信する、『勇者系配信者』の第一人者で、かなりの経験を積んでいる。
だが、彼の経験を持ってしても、こんな不可解なダンジョンは見たことがなかった。
ダンジョンの第二階層の奥に、奇妙な抜け道があるのだ。
たまに現れる、知能の高い悪魔が抜け道を作ることはありえる。
しかし、その抜け道は行き止まりだった。つまり、抜ける先がないのだ。
夜桜さんはこのダンジョンに疑問を感じ、私に相談してきた。
夜桜さんによると「素人だからこそ、先入観にとらわれずに推理ができるでしょ?」とのこと。
私だって忙しいんだがなぁ……。
ひとまず、土曜日に近所のカフェで考えてみることにした。
◇1・私の推理◇
「うぅ……寒い」
異常気象によってとんでもない寒さを誇る今年の冬。
私はカフェに入り、バッグを開けた。
最近は強力な放射線を利用したシステムによって、ダンジョンに入らずとも間取り図を作ることが可能になったらしい。
私は夜桜さんから送られてきたダンジョンの間取り図を見る。
「うーん……」
確かに第二階層の奥に抜け道らしきものはある。
夜桜さんの言う通り、その抜け道はどこにもつながっていなかった。
他にもデコボコしている場所があるが……特に関係はないだろう。
まず可能性として浮かんだのは、知能を持たない悪魔が知能のある悪魔の真似をした可能性だ。
過去にダンジョンにいたが、寿命か事故で死んだ悪魔がどこかに抜け道を作り、それを見た別の悪魔が真似をした。
悪魔には他の悪魔がやっていることを模倣する癖があるからだ。
だが、それほど知能がないために失敗した。作ってる途中で作ってることを忘れたとか、そんなところだろう。
――――しかし、その仮説にはおかしなところがある。
かつていたはずの『知能がある悪魔』が掘った抜け道がない。
ダンジョン内部はとても固いため、掘った抜け道が時間経過で埋まった、なんて可能性はゼロに近い。
だとすると、この仮説は間違いなのか?
――――先入観にとらわれずに推理ができるでしょ?
夜桜さんの言葉が頭の中を駆け巡る。
私はダンジョンに近寄ったことすらないので、先入観なんてあるはずがない。
――――待てよ。
一つだけ私も、このダンジョンに対する先入観を持っているじゃないか。
『このダンジョンには抜け道がある』という先入観を。
と言っても、この穴に『作りかけの抜け道』以外のタイトルは思いつかない。
仕方がないので、私は一人の友人に電話をかけた。
プルルという音が数秒なった後、電話から声が聞こえた。
「もしもし、光弥です」
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