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17. 酷すぎる状況
あれから一週間。
貴族令嬢に必要な作法を身に着けることが出来て、いつでも貴族の養子に行けるようになった。
学問の勉強はまだ途中だけれど、ダンスも出来るようになったから、いつでも社交界に出られるとメアリ様のお墨付きを頂いた。
「早速ですけれど、来週私が開くお茶会に参加してみませんか?
今のエリーさんなら、ご友人を増やすことも出来ますわ」
「本当に宜しいのですか?」
「ええ。私が信頼している方しか招いていませんから、多少の粗相も問題ありませんわ。
エリーさんが粗相するとは思えませんけれど」
「ありがとうございます。私で宜しければ、参加したいですわ」
このお嬢様言葉にはまだ慣れていないけれど、丁寧な口調なら問題無いらしい。
それでも言葉遣いは合わせた方が良いみたいだから、今も練習の最中だ。
「断る理由なんてありませんもの。楽しみにしていますわ」
そう口にして笑顔を浮かべるフィリア様。
デビュタントはパーティーと決まっているから、まだ先になりそうだけれど、その前に知り合いを増やす機会があるのは心強い。
だから私も素の笑顔を浮かべてお礼を言った。
「フィリア、エリー。少し時間を貰っても良いだろうか?」
「ええ、大丈夫ですわ」
「私も大丈夫です」
いつの間にかここ中庭に姿を見せたライアス様の問いかけに頷く私達。
彼は重々しい雰囲気を纏っていて、一体何が語られるのかと身構えてしまう。
「今朝、キャロル・バードナ元伯爵夫人が騎士団に捕えられた」
「元、ですか……?」
「そうだ。どうやらバードナ伯爵がキャロルの悪事に気付いたらしく、一昨日には勘当していたらしい。
その書簡が届いたのは今日だが、送られた日が一昨日なのは確からしい」
「……父から爵位を剥奪するのは難しくなってしまったのですか?」
家名を汚すような行いをした人を勘当するのは、過去の公爵家や王家でも行われていたこと。
それを他の貴族達や王家は許してきていたから、今回の件でお父様から爵位を剥奪することは無理だと思う。
「そういうことになる。
エリーはそこまで学んでいたのか」
「王国史を教わったお陰ですわ」
「歴史を学んだだけでこの答えを出せるとは……将来有望だな。
一応、バードナ伯爵本人に問える罪は子女を放置していたと裁くことも不可能ではないが、これを裁くと王国の貴族は殆ど居なくなる。父上もそうだったが、男は育児に無関心なことが多いらしい。
酷い話だが、どうにもならない以上はこの状況を受け入れるしかない」
「家長になると他の仕事で忙しくなることは想像できますから、仕方のない事だと思います。
でも、父は私が助けを求めても義母には強く言えなかったみたいで、仕事とは関係無かったのかもしれません」
お父様はお義母様を溺愛していて、私のことは二の次だった。
もし助けを求めた時に助けの手を差し伸べてくれていたら、きっとこんなことにはならなかったと思う。
もしかしたら、跡継ぎがエルウィンしか居ない状況に焦っていたのかもしれないけれど……女性が家を継いではいけない決まりは無いから、そんな言い訳を受け入れたりはしない。
先々代の国王は女性だったことくらい、お父様が知らないわけないもの。
「そうだろうな。今まで調べた情報を集めてみたが、エリーの義母のことを第一に動いていたように見える。それと、エリーの義妹達だが、正確には異母妹だと分かった」
「そうだったのですね……」
「まだあるぞ。エリーが居なくなってから、バードナ邸の状況はかなり悲惨だ。
使用人は使い物にならず、日々の食事は庶民と同じかそれよりも酷い物になっている。
伯爵は大慌てで辞めていった使用人達に戻るよう打診したが……全て断られたらしい」
ライアス様は引き攣った表情を浮かべながら、今のバードナ家の惨状を説明してくれている。
私の味方をしてくれていた使用人達が解雇されてからずっと、屋敷の仕事は殆ど私一人で回していた。
他の使用人達はずっと休憩していて、仕事を見ることすらしていなかった。だから誰も仕事が出来なくて当たり前。
だから、こうなることは分かっていたけれど、想像していたよりも酷い状況に、私は苦笑いしか浮かべられない。
「まだあるぞ。
キャロルはその生活に耐えられずに癇癪を起して、伯爵はそれに耐えられずに離縁を決めていたそうだ。
今は別荘に避難して執務をこなしている状況だが、今度はエリシアが恋しくなったらしく、キャロルとは別に捜索隊を出して血眼で探しているらしい。毎晩会いたいと呟いていると影から報告が入っているよ。
そうそう、別荘にいる使用人はしっかり仕事が出来るそうだ」
「私、愛されていますのね。
こんなに最悪な気分になったのは初めてですわ」
今更愛されたって全く嬉しくない。
私が辛い思いをしている時に助けを求めても何もしてくれなかったのに、自分が辛くなってから会いたいだなんて……。
あまりの酷さに、怒りを通り越して呆れてしまう。
「酷すぎて私まで怒りを感じてしまいますわ」
「今のお話を聞いて、ますます父のことが許せなくなりました。
法で裁くことが出来ないのなら、私は二度と父の元に戻らないことで抵抗します」
貴族令嬢に必要な作法を身に着けることが出来て、いつでも貴族の養子に行けるようになった。
学問の勉強はまだ途中だけれど、ダンスも出来るようになったから、いつでも社交界に出られるとメアリ様のお墨付きを頂いた。
「早速ですけれど、来週私が開くお茶会に参加してみませんか?
今のエリーさんなら、ご友人を増やすことも出来ますわ」
「本当に宜しいのですか?」
「ええ。私が信頼している方しか招いていませんから、多少の粗相も問題ありませんわ。
エリーさんが粗相するとは思えませんけれど」
「ありがとうございます。私で宜しければ、参加したいですわ」
このお嬢様言葉にはまだ慣れていないけれど、丁寧な口調なら問題無いらしい。
それでも言葉遣いは合わせた方が良いみたいだから、今も練習の最中だ。
「断る理由なんてありませんもの。楽しみにしていますわ」
そう口にして笑顔を浮かべるフィリア様。
デビュタントはパーティーと決まっているから、まだ先になりそうだけれど、その前に知り合いを増やす機会があるのは心強い。
だから私も素の笑顔を浮かべてお礼を言った。
「フィリア、エリー。少し時間を貰っても良いだろうか?」
「ええ、大丈夫ですわ」
「私も大丈夫です」
いつの間にかここ中庭に姿を見せたライアス様の問いかけに頷く私達。
彼は重々しい雰囲気を纏っていて、一体何が語られるのかと身構えてしまう。
「今朝、キャロル・バードナ元伯爵夫人が騎士団に捕えられた」
「元、ですか……?」
「そうだ。どうやらバードナ伯爵がキャロルの悪事に気付いたらしく、一昨日には勘当していたらしい。
その書簡が届いたのは今日だが、送られた日が一昨日なのは確からしい」
「……父から爵位を剥奪するのは難しくなってしまったのですか?」
家名を汚すような行いをした人を勘当するのは、過去の公爵家や王家でも行われていたこと。
それを他の貴族達や王家は許してきていたから、今回の件でお父様から爵位を剥奪することは無理だと思う。
「そういうことになる。
エリーはそこまで学んでいたのか」
「王国史を教わったお陰ですわ」
「歴史を学んだだけでこの答えを出せるとは……将来有望だな。
一応、バードナ伯爵本人に問える罪は子女を放置していたと裁くことも不可能ではないが、これを裁くと王国の貴族は殆ど居なくなる。父上もそうだったが、男は育児に無関心なことが多いらしい。
酷い話だが、どうにもならない以上はこの状況を受け入れるしかない」
「家長になると他の仕事で忙しくなることは想像できますから、仕方のない事だと思います。
でも、父は私が助けを求めても義母には強く言えなかったみたいで、仕事とは関係無かったのかもしれません」
お父様はお義母様を溺愛していて、私のことは二の次だった。
もし助けを求めた時に助けの手を差し伸べてくれていたら、きっとこんなことにはならなかったと思う。
もしかしたら、跡継ぎがエルウィンしか居ない状況に焦っていたのかもしれないけれど……女性が家を継いではいけない決まりは無いから、そんな言い訳を受け入れたりはしない。
先々代の国王は女性だったことくらい、お父様が知らないわけないもの。
「そうだろうな。今まで調べた情報を集めてみたが、エリーの義母のことを第一に動いていたように見える。それと、エリーの義妹達だが、正確には異母妹だと分かった」
「そうだったのですね……」
「まだあるぞ。エリーが居なくなってから、バードナ邸の状況はかなり悲惨だ。
使用人は使い物にならず、日々の食事は庶民と同じかそれよりも酷い物になっている。
伯爵は大慌てで辞めていった使用人達に戻るよう打診したが……全て断られたらしい」
ライアス様は引き攣った表情を浮かべながら、今のバードナ家の惨状を説明してくれている。
私の味方をしてくれていた使用人達が解雇されてからずっと、屋敷の仕事は殆ど私一人で回していた。
他の使用人達はずっと休憩していて、仕事を見ることすらしていなかった。だから誰も仕事が出来なくて当たり前。
だから、こうなることは分かっていたけれど、想像していたよりも酷い状況に、私は苦笑いしか浮かべられない。
「まだあるぞ。
キャロルはその生活に耐えられずに癇癪を起して、伯爵はそれに耐えられずに離縁を決めていたそうだ。
今は別荘に避難して執務をこなしている状況だが、今度はエリシアが恋しくなったらしく、キャロルとは別に捜索隊を出して血眼で探しているらしい。毎晩会いたいと呟いていると影から報告が入っているよ。
そうそう、別荘にいる使用人はしっかり仕事が出来るそうだ」
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こんなに最悪な気分になったのは初めてですわ」
今更愛されたって全く嬉しくない。
私が辛い思いをしている時に助けを求めても何もしてくれなかったのに、自分が辛くなってから会いたいだなんて……。
あまりの酷さに、怒りを通り越して呆れてしまう。
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