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18. 何かが違うらしい
「二度と戻らない、か。
間違いなく一番効くだろうな。エリーが生きていると明かしてから絶縁を告げたら、面白い顔が見られると思うよ」
私が二度と戻らないと宣言すると、ライアス様は愉しそうな様子でそう口にする。
彼も私と同じで、お父様の絶望する表情を楽しみにしているみたい。
これだけでは私の味わってきた絶望には届かないけれど、少しでも心のわだかまりが晴れるのなら、これくらいのことは苦にならないのよね。
……こんなこと、性格悪いと思われるかもしれないけれど、こうしたくなるくらい怒りを感じているのだから仕方ないと思う。
「間違いありませんわ。
ところで、エリーさんの義母はこれからどうなりますの?」
「極刑以外にあり得ない。
幸いにもエリーが川に落とされるところを見ていた使用人は十人近く居たから、エリーが証人になる必要も無いだろう」
「そうだったのですね……。安心しました!
でも、証言で仕返ししたい気持ちもあるので、なんだか複雑です」
「エリーが望むのなら、証人にすることも出来る。
ただし、どんな言葉が飛んでくるかは分からないから、覚悟はした方が良い」
お義母様は私をずっと見下している様子だったから、私に負けそうになればどんな手でも使うと思う。
言葉で済めば良いけれど、きっと物も飛んでくると思う。
……裁判までに飛んでくる物を避ける練習をしなくちゃ。
「それでも大丈夫なので、私も証人になりますわ」
「分かった。そのように伝えておこう。
大変だと思うが、応援している」
「ありがとうございます」
私が笑顔でお礼を言うと、ライアス様も笑顔を返してくれる。
この後は明るい話題に変えて、お茶とお菓子を楽しむことになった。
場所をテラスに移して、お菓子が広げられている丸テーブルを囲う私達。
左前にはフィリア様、右前にはライアス様が座っていて、私達それぞれの後ろに侍女が控えていて、雰囲気は貴族のお茶会と同じになっている。
フィリア様は何も言っていないけれど、きっと私が予行練習をする機会を作ってくれたのだと思う。
今はライアス様が私を受け入れてくれる家の候補について説明してくれていたのだけど、話が途切れたところでフィリア様がこんなことを口にした。
「……お兄様、エリーさんが養子に行く家を見定めるのも良いですけれど、いつになったら婚約者を決めますの?」
「確かに、ライアス様の歳なら決まっている事の方が多いですものね。フィリア様が心配するのも分かりますわ。
でも、何か理由がおありだと思うので、ご無理はなさらないでください」
こんなにも優しいライアス様が王位継承権を剥奪されるのは私だって嫌だし、第二王子殿下と第三王子殿下は少し問題がおありのようだから、国王にはライアス様がなって欲しい。
けれど婚約を急いで後悔はしないで欲しいから、急かしたくも無いのよね。
「心配されるのは当然だろうな。このままだと王位継承権も危うい。
だが……俺の趣味に理解を示してくれて、一緒に居て楽しいと思える令嬢は一人しか居ないから、今決めるのは無理だ」
「その方には嫌われていますの?」
「嫌われてはいないと思う」
「それなら、お気持ちを告げた方が良いと思いますわ」
フィリア様が問いかけると、ライアス様は私の方に視線を向けていた。
不思議に思って首を傾げると、視線を逸らされてしまう。
「……今は無理だろう」
「もしかして、エリーさんのことが……?」
「それは言うな」
フィリア様の言葉は図星だったみたいで、ライアス様は恥ずかしそうにしている。
それにしても、どうしてライアス様は私のことが好きになったのかしら?
趣味を認めてくれた令嬢が他に居なかったというだけでは、好きになることは難しいと思う。
私はライアス様に色々なことで助けられたから、イリヤさんと同じくらい好きだ。
すごく優しくしてくれていて、困った時はどんな相談でも親身になってくれているフィリア様のことだって同じように好きになっている。
「私もライアス様のことは好きなので、恥ずかしがらなくても大丈夫です!」
だからそう口にしてみたのだけど、フィリア様はかなり衝撃を受けてしまったみたいで、驚いているような悲しんでいるような表情を浮かべている。
今の言葉でフィリア様を傷付けてしまったかもしれない。そう思ったから、私は慌てて言葉を付け加えた。
「フィリア様のことも同じくらい好きですから、これからもよろしくお願いしますわ」
「私もエリー様のことは友人として好みですわ。こちらこそ、これからもよろしくお願いします」
「……そうだよな。期待した俺が馬鹿だったようだ」
「ライアス様……?
もしかして、好きになったら駄目でしたか?」
「駄目なんて事は無い。もっと好きになってくれても良いくらいだ」
「良かったです。こんな私ですけれど、嫌いにならないでくださいね?」
「ああ、もちろんだ」
嫌われてはいないみたいだけど、ライアス様の表情はさっきから晴れない。
一体何が駄目だったのか思い返してみたけれど、いくら考えても原因は分からなかった。
間違いなく一番効くだろうな。エリーが生きていると明かしてから絶縁を告げたら、面白い顔が見られると思うよ」
私が二度と戻らないと宣言すると、ライアス様は愉しそうな様子でそう口にする。
彼も私と同じで、お父様の絶望する表情を楽しみにしているみたい。
これだけでは私の味わってきた絶望には届かないけれど、少しでも心のわだかまりが晴れるのなら、これくらいのことは苦にならないのよね。
……こんなこと、性格悪いと思われるかもしれないけれど、こうしたくなるくらい怒りを感じているのだから仕方ないと思う。
「間違いありませんわ。
ところで、エリーさんの義母はこれからどうなりますの?」
「極刑以外にあり得ない。
幸いにもエリーが川に落とされるところを見ていた使用人は十人近く居たから、エリーが証人になる必要も無いだろう」
「そうだったのですね……。安心しました!
でも、証言で仕返ししたい気持ちもあるので、なんだか複雑です」
「エリーが望むのなら、証人にすることも出来る。
ただし、どんな言葉が飛んでくるかは分からないから、覚悟はした方が良い」
お義母様は私をずっと見下している様子だったから、私に負けそうになればどんな手でも使うと思う。
言葉で済めば良いけれど、きっと物も飛んでくると思う。
……裁判までに飛んでくる物を避ける練習をしなくちゃ。
「それでも大丈夫なので、私も証人になりますわ」
「分かった。そのように伝えておこう。
大変だと思うが、応援している」
「ありがとうございます」
私が笑顔でお礼を言うと、ライアス様も笑顔を返してくれる。
この後は明るい話題に変えて、お茶とお菓子を楽しむことになった。
場所をテラスに移して、お菓子が広げられている丸テーブルを囲う私達。
左前にはフィリア様、右前にはライアス様が座っていて、私達それぞれの後ろに侍女が控えていて、雰囲気は貴族のお茶会と同じになっている。
フィリア様は何も言っていないけれど、きっと私が予行練習をする機会を作ってくれたのだと思う。
今はライアス様が私を受け入れてくれる家の候補について説明してくれていたのだけど、話が途切れたところでフィリア様がこんなことを口にした。
「……お兄様、エリーさんが養子に行く家を見定めるのも良いですけれど、いつになったら婚約者を決めますの?」
「確かに、ライアス様の歳なら決まっている事の方が多いですものね。フィリア様が心配するのも分かりますわ。
でも、何か理由がおありだと思うので、ご無理はなさらないでください」
こんなにも優しいライアス様が王位継承権を剥奪されるのは私だって嫌だし、第二王子殿下と第三王子殿下は少し問題がおありのようだから、国王にはライアス様がなって欲しい。
けれど婚約を急いで後悔はしないで欲しいから、急かしたくも無いのよね。
「心配されるのは当然だろうな。このままだと王位継承権も危うい。
だが……俺の趣味に理解を示してくれて、一緒に居て楽しいと思える令嬢は一人しか居ないから、今決めるのは無理だ」
「その方には嫌われていますの?」
「嫌われてはいないと思う」
「それなら、お気持ちを告げた方が良いと思いますわ」
フィリア様が問いかけると、ライアス様は私の方に視線を向けていた。
不思議に思って首を傾げると、視線を逸らされてしまう。
「……今は無理だろう」
「もしかして、エリーさんのことが……?」
「それは言うな」
フィリア様の言葉は図星だったみたいで、ライアス様は恥ずかしそうにしている。
それにしても、どうしてライアス様は私のことが好きになったのかしら?
趣味を認めてくれた令嬢が他に居なかったというだけでは、好きになることは難しいと思う。
私はライアス様に色々なことで助けられたから、イリヤさんと同じくらい好きだ。
すごく優しくしてくれていて、困った時はどんな相談でも親身になってくれているフィリア様のことだって同じように好きになっている。
「私もライアス様のことは好きなので、恥ずかしがらなくても大丈夫です!」
だからそう口にしてみたのだけど、フィリア様はかなり衝撃を受けてしまったみたいで、驚いているような悲しんでいるような表情を浮かべている。
今の言葉でフィリア様を傷付けてしまったかもしれない。そう思ったから、私は慌てて言葉を付け加えた。
「フィリア様のことも同じくらい好きですから、これからもよろしくお願いしますわ」
「私もエリー様のことは友人として好みですわ。こちらこそ、これからもよろしくお願いします」
「……そうだよな。期待した俺が馬鹿だったようだ」
「ライアス様……?
もしかして、好きになったら駄目でしたか?」
「駄目なんて事は無い。もっと好きになってくれても良いくらいだ」
「良かったです。こんな私ですけれど、嫌いにならないでくださいね?」
「ああ、もちろんだ」
嫌われてはいないみたいだけど、ライアス様の表情はさっきから晴れない。
一体何が駄目だったのか思い返してみたけれど、いくら考えても原因は分からなかった。
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