過労聖女が幸せになるまで

水空 葵

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26. 本部の計画

 しばらくして、お店番をアルベルトとフランクリンに任せた私は、お店の開店前に
会議室へと向かった。
 命を狙われていると分かっている今、表に姿を見せるわけにはいかない。

 だからお店番以外の仕事……新しい工場とエトワール商会本部を建てる計画を立てようと思う。
 この計画はデストリア商会との取引とは関係ないけれど、念のため開発する兵器の試作や実験をするための場所も用意したい。

 予算は足りるはずだから、土地の図を見ながら建物の大きさを決めて、中の部屋の配置も書いていく。
 細かい部分は建築家が設計してくれるけれど、大まかな案は私達で決めないといけないのよね。

 だから中の方も、必要な部屋と大きさを考えながらペンを走らせる。
 そんな時、会議室の扉がノックされ、ルイスの声が聞こえてきた。

「セシル、入ってもいいかな?」

「ええ。何かあったかしら?」

「労を作り終えたから、セシルが何しているのか見に来たんだ。今日は客の入りも少ないから、暇でね」

 その言葉を聞いて、一気に不安が襲ってくる。
 今まで好調だったから、この先も上手く経営出来るのか分からなくなってしまった。

「ルイスの手が空くくらい暇だなんて、先行きが不安になるわ……」

「ファンタム商会が拳銃を売り出したせいだと思う。まあ、すぐに戻ると思うよ。魔道具の方が確実に魔物を倒せるからね。それと、魔道具を活用して他のものを作れば、上手くやっていける。
 だから、今のうちに本部の計画を完成させたい」

 でも、私の不安とは対照的に、ルイスはエトワール商会の将来が明るいと考えている様子。
 魔道具を活用した他の商品……思いつくものだと、コニーが言っていたパン屋さんなのだけど、考えれば他にも新しいものを作れることに気付いた。
 魔道具の可能性は、私が思っていたよりもずっと大きいみたい。

「本部の計画、こんな感じにしてみたのだけど、どうかしら?」

「もう纏めるとは、相変わらず仕事が早いね」

 ルイスは驚いた様子でそう口にし、私が書いた計画案に視線を落とす。
 それから少しして、こんなことを呟いた。

「工場を奥に配置して、本部は道路側というのは良いと思うけど、お店を別の建物にするのはお金が余計にかかる気がするよ」

「本部の中に色々な人が入れるのは、警備がし辛くなると思うの。だから、お店は一番道路側にして、本部と工場は塀で囲うつもりだわ」

「なるほど。そうなると、警備する人をどうするかが問題だな」

「ええ。今後のことを考えると、人を増やす必要はあると思うわ。
 だから、まずはコニー達にある程度お願いするつもりよ。商家の出身なら、人を見る目も私よりあると思うから」

 大抵の商人は人を雇うことで商売を成り立たせているから、雇うときの手筈も身についているはずだ。
 貴族の場合は使用人を雇う時に相手の本性を見抜けないといけないから、そういう教育も受けているが、私は実践したことが無いから自信はなかった。

「セシルも人を見る目はあると思うが……」

「相手が貴族の時だけよ」

「平民相手でも同じだと思う。
 最初はヴィンセント達に面接をお願いして、そこで合格した人をセシルが面接して、本当に雇うのかどうか決めていけばいいと思う」

 大人数を一度に雇うときは、人材を斡旋している組織に募集をお願いして、そこから働きたい人を雇用側で面接をして決めるのよね。
 ただ、これは斡旋側に対価を支払う必要があるから、小さい商店などはお店に広告を貼って人を募っている。

 今回は広告を出すと敵対人物が紛れ込む可能性が高くなるから、斡旋している組織にお願いすると決めていた。

「二重に確認するのね。その案、すごく良いと思うわ」

「これでも不安なら、二回目は俺が面接して、三回目にセシルが面接しても良いかもしれない」

「三回の方が安心できるから、そのやり方にしましょう」
 これで敵対する人を弾ければいいけれど……」

「三人で確認すれば、大丈夫だと思う」

「ルイスは人を見る目があるから、安心できるわ」

「それは買い被りすぎだと思う。アルベルト達が良い人だったのは、偶然だよ」

 ルイスはそう口にしているが、最初に声をかけたのがコニー達だったのは、彼の見る目があったからだと思う。
 一カ月も商売を続けられているのは、あの時のルイスの功績が大きいと思う。

「謙遜しなくても大丈夫よ。
 明日には募集を出したいから、コニー達にも相談してくるわ。牢はどこにあるかしら?」

「空き部屋に置いたよ」

「ありがとう」

 お礼を言って廊下に出る私。
 そのままルイスが言っていた部屋に入ると、耳を塞ぎたくなるほどの絶叫が聞こえた。

 廊下は静かだったから、部屋に防音の魔法が張ってあるらしい。
 絶叫のした方に視線を向けると、ヴィンセントが暗殺者の爪を剥ごうとしているところが目に入る。

「そろそろ話す気になったか」

「絶対に言わない!」

「そうか。もっと痛くなるぞ?」

「少し相談があるのだけど、話してもいいかしら?」

 次の絶叫が聞こえる前にと、口を開く私。
 するとヴィンセントとコニーの肩が同時に跳ね、暗殺者が絶叫したかと思えば気絶してしまった。

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