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28. 恐ろしい計画
あれからしばらくして、夕食を作り終えたところにルイス達が厨房に姿を見せる。
お店を閉める時間に合わせて作っていたお陰で、今日は出来立ての料理をみんなで楽しめそうだ。
私はまだ料理上手とは言えないものの、最初の頃に比べたら食材も上手く切れるようになった。
味付けの方も失敗することは少なくなってきて、今日も上手く出来たと思う。
「夕食、運んでも大丈夫?」
「ええ、お願いしてもいいかしら?」
湯気を上らせている料理を手分けして会議室へと運んでいき、私達は夕食を始める。
今日は白いパンとサラダにお肉を焼いたもの。昼食より簡素でも、王侯貴族の夕食はこの組み合わせが多い。
一日の中で一番豪華な食事は昼食なのが普通だから、物足りないとは思わなかった。
「……美味しいな」
「ああ、本当に美味い。最初のセシルの料理は本当に不味かったが、一カ月でここまで上達するとは思わなかった」
ヴィンセントの言葉を聞いて、私が最初に料理をした日のことが頭に浮かぶ。
あの時は、私も含めて誰も会話をする余裕が無くて、全員黙々と口を動かしていた。それでも誰も文句を言わなかったから、しばらく罪悪感から料理から離れようと思っていたくらいだ。
でも、ルイスは「仲間として信頼されなくなる」と言って許さず、私の料理が普通の味になるまでは切り方から味付け、火加減まで細かく教えてくれた。
苦痛を感じずに食べられる程度まで腕を上げてからは私一人で作ることも増えたものの、美味しいと言われたのは今日が初めて。だから、どんな表情をしていいのか分からない。
「ルイスがしっかり教えてくれたお陰だわ」
「俺が教えたのは普通の味までだから、ここまで美味しくなったのはセシルの努力の賜物だよ」
「その努力が出来たのも、ルイスのお陰だと思うの。いつもありがとう」
「改まって言われると恥ずかしいな……」
言葉を交わしながら、夕食を進める私達。
そんな時、コニーがこんなことを口にした。
「モーガンから色々聞き出せたから、報告してもいいかな?」
「ええ、お願いするわ」
私が頷くと、彼女の口からは予想外の言葉が語られた。
モーガンが使用人との間に生まれたということは予想していた通りだったが、私を襲ったのは彼自身の意思だったという。
彼から恨まれるようなことをした覚えはないのに、殺意を持たれていることが恐ろしい。
「……何がきっかけで恨まれたのかしら?」
「楽しそうにお客さんとお話している姿を見て、腹を立てたそうよ。
理解に苦しむけれど、断罪された身で幸せそうにしていることが許せなかったとも言っていたわ。それから、目が合った時に見下されたとも……」
「自分勝手な理由ね。明日、デストリア公爵家に突き出した方が良さそうね。
ファンタム公爵家については何か分かったかしら?」
「魔道具を使って無差別殺人事件を起こして、魔道具を規制する法律を作る計画があるそうなの。だから、早く行動した方がいいと思うわ」
その説明を聞いて、私が理不尽な理由で恨まれたことはどうでも良いと思える。
私が恨まれた理由は腹立たしいが、エトワール商会を潰すために多くの人を手にかけようとすることの方が許せない。
もし事件が起きたら、魔道具が後ろ指を差されるだけに留まらず、魔道具を正しく使っている人達も侮蔑の目を向けられることになってしまう。
お客さん達の笑顔を二度と見られなくなると想像したら、悲しさと怒りが入り混じった感情が沸き上がってきた。
「どんな手を使ってでもファンタム公爵家を止めないと」
「法は犯さないようにね」
私が呟くと、ルイスが忠告してくれる。ここまで来て投獄されたくはないから、ファンタム公爵家は正攻法で追い詰めるつもりだ。
もっとも、ファンタム公爵家が権力にものを言わせて私達を追い詰めようとしているから、いずれ限界が訪れるかもしれない。
そう思うと、今の私達に力がない事が悔しかった。
お店を閉める時間に合わせて作っていたお陰で、今日は出来立ての料理をみんなで楽しめそうだ。
私はまだ料理上手とは言えないものの、最初の頃に比べたら食材も上手く切れるようになった。
味付けの方も失敗することは少なくなってきて、今日も上手く出来たと思う。
「夕食、運んでも大丈夫?」
「ええ、お願いしてもいいかしら?」
湯気を上らせている料理を手分けして会議室へと運んでいき、私達は夕食を始める。
今日は白いパンとサラダにお肉を焼いたもの。昼食より簡素でも、王侯貴族の夕食はこの組み合わせが多い。
一日の中で一番豪華な食事は昼食なのが普通だから、物足りないとは思わなかった。
「……美味しいな」
「ああ、本当に美味い。最初のセシルの料理は本当に不味かったが、一カ月でここまで上達するとは思わなかった」
ヴィンセントの言葉を聞いて、私が最初に料理をした日のことが頭に浮かぶ。
あの時は、私も含めて誰も会話をする余裕が無くて、全員黙々と口を動かしていた。それでも誰も文句を言わなかったから、しばらく罪悪感から料理から離れようと思っていたくらいだ。
でも、ルイスは「仲間として信頼されなくなる」と言って許さず、私の料理が普通の味になるまでは切り方から味付け、火加減まで細かく教えてくれた。
苦痛を感じずに食べられる程度まで腕を上げてからは私一人で作ることも増えたものの、美味しいと言われたのは今日が初めて。だから、どんな表情をしていいのか分からない。
「ルイスがしっかり教えてくれたお陰だわ」
「俺が教えたのは普通の味までだから、ここまで美味しくなったのはセシルの努力の賜物だよ」
「その努力が出来たのも、ルイスのお陰だと思うの。いつもありがとう」
「改まって言われると恥ずかしいな……」
言葉を交わしながら、夕食を進める私達。
そんな時、コニーがこんなことを口にした。
「モーガンから色々聞き出せたから、報告してもいいかな?」
「ええ、お願いするわ」
私が頷くと、彼女の口からは予想外の言葉が語られた。
モーガンが使用人との間に生まれたということは予想していた通りだったが、私を襲ったのは彼自身の意思だったという。
彼から恨まれるようなことをした覚えはないのに、殺意を持たれていることが恐ろしい。
「……何がきっかけで恨まれたのかしら?」
「楽しそうにお客さんとお話している姿を見て、腹を立てたそうよ。
理解に苦しむけれど、断罪された身で幸せそうにしていることが許せなかったとも言っていたわ。それから、目が合った時に見下されたとも……」
「自分勝手な理由ね。明日、デストリア公爵家に突き出した方が良さそうね。
ファンタム公爵家については何か分かったかしら?」
「魔道具を使って無差別殺人事件を起こして、魔道具を規制する法律を作る計画があるそうなの。だから、早く行動した方がいいと思うわ」
その説明を聞いて、私が理不尽な理由で恨まれたことはどうでも良いと思える。
私が恨まれた理由は腹立たしいが、エトワール商会を潰すために多くの人を手にかけようとすることの方が許せない。
もし事件が起きたら、魔道具が後ろ指を差されるだけに留まらず、魔道具を正しく使っている人達も侮蔑の目を向けられることになってしまう。
お客さん達の笑顔を二度と見られなくなると想像したら、悲しさと怒りが入り混じった感情が沸き上がってきた。
「どんな手を使ってでもファンタム公爵家を止めないと」
「法は犯さないようにね」
私が呟くと、ルイスが忠告してくれる。ここまで来て投獄されたくはないから、ファンタム公爵家は正攻法で追い詰めるつもりだ。
もっとも、ファンタム公爵家が権力にものを言わせて私達を追い詰めようとしているから、いずれ限界が訪れるかもしれない。
そう思うと、今の私達に力がない事が悔しかった。
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