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38. 幸せなこと
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あの後、私達は今にも崩れ落ちそうな城壁から降りて、怪我人の治療にあたった。
防御魔法の魔道具があっても、トレントの葉で負傷した人が殆どだったのよね……。
私は酷い怪我の人を優先して治癒魔法をかけていく。
「ありがとうございます。もう死ぬかと思いました」
「……古傷まで治して頂けるとは。本当にありがとうございます」
聖女だった頃は辛かったのに、笑顔を向けられるだけで幸せに思える。
お陰で疲れを感じずに治療を続けられて、気が付いた時には魔力が殆ど空になっていた。
「重傷の人は治せたわ。でも、魔力が限界だから、残りは明日にしても良いかしら?」
「そもそも命令されていないから、気にしなくて大丈夫だよ。帰って休もう」
ルイスと言葉を交わしていると、治癒魔法を使える人達が到着したようで、私が治せなかった人達の治療が行われていく。
この様子を見て安心したからか、一気に疲れが襲ってきた。
「ええ。ルイスも疲れているのに、ありがとう」
そうして、私達はエトワール商会の本部に戻ることにした。
お兄様とルイスの両親は知り合いの貴族の屋敷に泊まるそうだから、馬車には二人で乗る。
「……なんとかなって良かったわ」
「ああ。セシルが居なかったらと思うと恐ろしいよ」
すっかり暗くなった道を光の魔道具で照らしながら、馬車を進める。
この後は簡単に夕食を済ませ、私はベッドに入った。
翌日。
昨日のことを報告するために登城した私達は、陛下からこんなことを告げられた。
「昨日の戦い、見事だった。スタンピードそのものの対処からトレントを倒すまで、どれも我々だけでは成し遂げられなかった。よって、二人には褒賞を授けようと思う。
詳しいことはまだ決めていないが、出来る限りのものを用意しよう。セシル殿は重傷者の治療までされたと聞いている。国民を救ってくれて、本当にありがとう」
「私は当然のことをしただけです。
それなのに褒賞を頂けるなんて、感謝しても仕切れませんわ」
「感謝したいのは余の方だ。褒賞は遠慮なく受け取って欲しい」
「「ありがとうございます」」
私達の謁見時間はこれで終わり。ルイスと揃ってお礼を言ってから、玉座の間を後にした。
玉座の間の前には謁見待ちの列が出来ていて、その中にはお兄様の姿もある。
王国では勝利に最も貢献した人しか謁見出来ないけれど、公国では戦いに貢献していれば褒賞も頂けるという。
褒賞の内容は活躍によって決められるとはいえ、大勢が戦いに参加していた理由はここにあるらしい。
私はその列の横を通って祝勝会の会場へと向かった。
祝勝会は貴族や冒険者と騎士団だけが立ち入りを許されていて、私達は冒険者として参加を許されている。
これは貴族のパーティーだから、所作には気を付けないといけない。
一応社交界に参加できるようなドレスは用意していたのだけど、貴族のものと比べると見劣りしそうだ。
「私のドレス、変なところは無い?」
「大丈夫そうだよ。俺の方も平気かな?」
「ええ、何も気にならないわ」
せめて粗相が無いように、ルイスとお互いの装いを確認してから、会場へと足を踏み入れる。
既に何組もの貴族がダンスや談笑を楽しんでいて、ダンスの相手が居ない冒険者達は豪勢な食事に没頭している様子。
冒険者ギルドの酒場で毎日見られる騒ぎは起きていないから、今日は私達も楽しめそうだわ。
「セシル、人が増える前に一曲練習したい」
「足を踏んでしまうかもしれないけど、大丈夫?」
「むしろ俺が踏みそうだから、痛い思いをさせたら申し訳ない」
「私も大丈夫よ。それくらい耐えられるわ」
そう口にしたところで流れている音楽が止まり、次の曲が始まる。
少し難易度が高いものだったけれど、私はルイスの手を引いて空いている場所へと移動した。
「――不安そうにしていたのが嘘みたいだな。もしかして練習してた?」
「そういうルイスだって上手よ。さっきの不安は何だったのかしら?」
勢いでステップを踏み始めると、思っていたよりも身体が動いて、少しずつ楽しくなってくる。
ダンスで楽しいと思えるのは初めてで、ずっとこうしていたかった。
でも、ダンスだけが祝勝会ではない。
だから私達は三曲だけ楽しんで、残りの時間は貴族や冒険者達とお話して過ごすことにした。
そこでは王国の悲惨な状況やファンタム公爵家が取り潰しになったという情報が入ってくる。
良い情報もあって、魔道具のお陰で使用人達が元気になったことや、魔道具のお陰で病気が減ったらしい。
昨日の治癒魔法のお礼も何度も言われて、嬉しいのに恥ずかしくなった。
でも、この時間はすごく心地よい。
少し前は文句を言われてばかりで辛い日々だったのに、今は色々な人から感謝される。
エトワール商会のことだって、忙しくても毎日が楽しい。
だから……今の私は幸せだって胸を張って言えるわ。
防御魔法の魔道具があっても、トレントの葉で負傷した人が殆どだったのよね……。
私は酷い怪我の人を優先して治癒魔法をかけていく。
「ありがとうございます。もう死ぬかと思いました」
「……古傷まで治して頂けるとは。本当にありがとうございます」
聖女だった頃は辛かったのに、笑顔を向けられるだけで幸せに思える。
お陰で疲れを感じずに治療を続けられて、気が付いた時には魔力が殆ど空になっていた。
「重傷の人は治せたわ。でも、魔力が限界だから、残りは明日にしても良いかしら?」
「そもそも命令されていないから、気にしなくて大丈夫だよ。帰って休もう」
ルイスと言葉を交わしていると、治癒魔法を使える人達が到着したようで、私が治せなかった人達の治療が行われていく。
この様子を見て安心したからか、一気に疲れが襲ってきた。
「ええ。ルイスも疲れているのに、ありがとう」
そうして、私達はエトワール商会の本部に戻ることにした。
お兄様とルイスの両親は知り合いの貴族の屋敷に泊まるそうだから、馬車には二人で乗る。
「……なんとかなって良かったわ」
「ああ。セシルが居なかったらと思うと恐ろしいよ」
すっかり暗くなった道を光の魔道具で照らしながら、馬車を進める。
この後は簡単に夕食を済ませ、私はベッドに入った。
翌日。
昨日のことを報告するために登城した私達は、陛下からこんなことを告げられた。
「昨日の戦い、見事だった。スタンピードそのものの対処からトレントを倒すまで、どれも我々だけでは成し遂げられなかった。よって、二人には褒賞を授けようと思う。
詳しいことはまだ決めていないが、出来る限りのものを用意しよう。セシル殿は重傷者の治療までされたと聞いている。国民を救ってくれて、本当にありがとう」
「私は当然のことをしただけです。
それなのに褒賞を頂けるなんて、感謝しても仕切れませんわ」
「感謝したいのは余の方だ。褒賞は遠慮なく受け取って欲しい」
「「ありがとうございます」」
私達の謁見時間はこれで終わり。ルイスと揃ってお礼を言ってから、玉座の間を後にした。
玉座の間の前には謁見待ちの列が出来ていて、その中にはお兄様の姿もある。
王国では勝利に最も貢献した人しか謁見出来ないけれど、公国では戦いに貢献していれば褒賞も頂けるという。
褒賞の内容は活躍によって決められるとはいえ、大勢が戦いに参加していた理由はここにあるらしい。
私はその列の横を通って祝勝会の会場へと向かった。
祝勝会は貴族や冒険者と騎士団だけが立ち入りを許されていて、私達は冒険者として参加を許されている。
これは貴族のパーティーだから、所作には気を付けないといけない。
一応社交界に参加できるようなドレスは用意していたのだけど、貴族のものと比べると見劣りしそうだ。
「私のドレス、変なところは無い?」
「大丈夫そうだよ。俺の方も平気かな?」
「ええ、何も気にならないわ」
せめて粗相が無いように、ルイスとお互いの装いを確認してから、会場へと足を踏み入れる。
既に何組もの貴族がダンスや談笑を楽しんでいて、ダンスの相手が居ない冒険者達は豪勢な食事に没頭している様子。
冒険者ギルドの酒場で毎日見られる騒ぎは起きていないから、今日は私達も楽しめそうだわ。
「セシル、人が増える前に一曲練習したい」
「足を踏んでしまうかもしれないけど、大丈夫?」
「むしろ俺が踏みそうだから、痛い思いをさせたら申し訳ない」
「私も大丈夫よ。それくらい耐えられるわ」
そう口にしたところで流れている音楽が止まり、次の曲が始まる。
少し難易度が高いものだったけれど、私はルイスの手を引いて空いている場所へと移動した。
「――不安そうにしていたのが嘘みたいだな。もしかして練習してた?」
「そういうルイスだって上手よ。さっきの不安は何だったのかしら?」
勢いでステップを踏み始めると、思っていたよりも身体が動いて、少しずつ楽しくなってくる。
ダンスで楽しいと思えるのは初めてで、ずっとこうしていたかった。
でも、ダンスだけが祝勝会ではない。
だから私達は三曲だけ楽しんで、残りの時間は貴族や冒険者達とお話して過ごすことにした。
そこでは王国の悲惨な状況やファンタム公爵家が取り潰しになったという情報が入ってくる。
良い情報もあって、魔道具のお陰で使用人達が元気になったことや、魔道具のお陰で病気が減ったらしい。
昨日の治癒魔法のお礼も何度も言われて、嬉しいのに恥ずかしくなった。
でも、この時間はすごく心地よい。
少し前は文句を言われてばかりで辛い日々だったのに、今は色々な人から感謝される。
エトワール商会のことだって、忙しくても毎日が楽しい。
だから……今の私は幸せだって胸を張って言えるわ。
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