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第2章
96. 複雑な気持ち
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私とクラウスがエイブラム邸で居候を始めてから二日目の朝。
昨日と同じようにクラウスと二人で昼食をとっていると、グレン様が重たい空気を纏って姿を見せた。
一昨日の夜に捕らえられたエリスとカグレシアン公爵家の従者の取り調べで、良くない事でも分かったのかしら?
そんな予想をして構えていると、グレン様は私達と一つ離れた椅子に腰を下ろした。
「会話中に申し訳ない。取り調べで進展があったから、話しても良いだろうか?」
グレン様は真剣な面持ちのまま、私達に声をかけてきた。
予想していた通りの言葉だったから、私は直ぐに頷いてから口を開く。
「ええ、お願いしますわ」
「こちらからお願いしたいくらいです」
私に続けてクラウスも口にすると、グレン様は手に抱えていた紙を私達の前へと出してくれた。
どうやら取り調べの時に出てきた発言をまとめたものの原本みたいで、乱雑な字で書かれていて読みやすいとは言えない。
けれど、少し流し見れば大体の内容は読み取ることが出来た。
「取り調べ中に出てきた発言をまとめたものだ。
見辛いから、纏めて説明させてもらう」
それから語られたのは、こんな内容だった。
護衛になっていた体格の良い男二人は、カグレシアン公爵家の執事からエリスを利用するように指示されていたらしい。
カグレシアン公爵様はエリスが闇魔法を使えることを知っていたみたいで、何かの目的があると予想出来てしまう。
一方のエリスはというと「従わなければ姉を殺す」と脅されていて、指示に従わないといけない状況になっていたことも分かった。
「あの公爵は悪魔としか思えなくなりましたわ……」
「全く同じ感想だよ。今の聖女になっているアイリスの方も、カグレシアン公爵の欲望のために利用されていると考えた方が納得できる」
クラウスがそんな予想を口にすると、グレン様も同じ考えみたいで深々と頷いていた。
私も同じことを考えているから、小さく頷いている。
「しかし、そうなるとアイリスの扱いが難しくなりそうだな。
大切な人を失った人々の怒りは相当なものになるから、国として処刑しない訳にもいかないだろう」
「私は恨みもあるけれど、アイリス様が居なかったらクラウスと出会えていないから、感謝もしているのよね。
だから、正直に言うと複雑な気持ちだわ」
もしもアイリスが居なければ、アノールド王太子殿下が私の知る場所で浮気に及ぶことも無かった。
あの婚約解消が無ければ、私はあの地獄のような日々から逃げ出すことなんて叶わなかったうえに、いつか浮気するような男と一生を共にすることになっていたはずなのよね。
そうなっていたら、一生苦しむことになっていたと思う。
アイリス様がしている闇魔法を振りまく行動は許せないけれど、あの束縛から解き放ってくれた事には感謝もしているから、自分がどうすれば良いのか分からなくなってしまう。
「正義なんて、その人の中にしか無いものだから、シエルはシエルの思う通りに動けば良いと思う。
王太子妃なら国民を大切にする責務があるけど、冒険者は自分の身を護るのが責務だからね」
「そうね……。
民達は許してくれないかもしれないけれど、アイリス様を助け出してみるわ」
王太子殿下といちゃ……親しげな様子を私に見せつけては勝ち誇った笑みを浮かべていたことは許さないけれど、それは今の幸せな姿を見せつけて仕返しすれば済むお話。
カグレシアン公爵様を追い詰めるためにも、アイリス様を味方に引き込むことは必要だと思うから、急がなくちゃいけないわね。
アイリス様の評判が下がっている今は、カグレシアン公爵様が彼女を処分することだって有り得る。
だから、すぐにでも行動を起こした方が良いと思った。
「よし、そうと決まれば早速行動しよう。
グレン殿、急で申し訳ないですが、食事を終えたらアルベール王国に向かいます」
「構わない。港まで馬車を手配しよう」
「出来れば、帝都の外――南の出口までお願いしたいです」
「二人なら大丈夫だと思うが、まさか山越えをするつもりなのか?」
クラウスの言葉に戸惑いを見せるグレン様。
国境の山は魔物が居なくても危険な場所だから、正気を疑うのは当然だと思う。
でも、船よりもワイバーンを利用した方が早いのだから、仕方ないわよね。
「ええ、そのつもりですわ。この前も同じことをしているので、大丈夫です」
「それなら安心だ。
しかし、フレイムワイバーンが大量に現れた理由がまだ分かっていないから、その調査はこちらで進めていく」
次から次へと降りかかってくる問題に頭を掻くグレン様。
そんなに強く掻き毟っては毛根も傷付いてしまいそうだから、すごく心配になってしまった。
昨日と同じようにクラウスと二人で昼食をとっていると、グレン様が重たい空気を纏って姿を見せた。
一昨日の夜に捕らえられたエリスとカグレシアン公爵家の従者の取り調べで、良くない事でも分かったのかしら?
そんな予想をして構えていると、グレン様は私達と一つ離れた椅子に腰を下ろした。
「会話中に申し訳ない。取り調べで進展があったから、話しても良いだろうか?」
グレン様は真剣な面持ちのまま、私達に声をかけてきた。
予想していた通りの言葉だったから、私は直ぐに頷いてから口を開く。
「ええ、お願いしますわ」
「こちらからお願いしたいくらいです」
私に続けてクラウスも口にすると、グレン様は手に抱えていた紙を私達の前へと出してくれた。
どうやら取り調べの時に出てきた発言をまとめたものの原本みたいで、乱雑な字で書かれていて読みやすいとは言えない。
けれど、少し流し見れば大体の内容は読み取ることが出来た。
「取り調べ中に出てきた発言をまとめたものだ。
見辛いから、纏めて説明させてもらう」
それから語られたのは、こんな内容だった。
護衛になっていた体格の良い男二人は、カグレシアン公爵家の執事からエリスを利用するように指示されていたらしい。
カグレシアン公爵様はエリスが闇魔法を使えることを知っていたみたいで、何かの目的があると予想出来てしまう。
一方のエリスはというと「従わなければ姉を殺す」と脅されていて、指示に従わないといけない状況になっていたことも分かった。
「あの公爵は悪魔としか思えなくなりましたわ……」
「全く同じ感想だよ。今の聖女になっているアイリスの方も、カグレシアン公爵の欲望のために利用されていると考えた方が納得できる」
クラウスがそんな予想を口にすると、グレン様も同じ考えみたいで深々と頷いていた。
私も同じことを考えているから、小さく頷いている。
「しかし、そうなるとアイリスの扱いが難しくなりそうだな。
大切な人を失った人々の怒りは相当なものになるから、国として処刑しない訳にもいかないだろう」
「私は恨みもあるけれど、アイリス様が居なかったらクラウスと出会えていないから、感謝もしているのよね。
だから、正直に言うと複雑な気持ちだわ」
もしもアイリスが居なければ、アノールド王太子殿下が私の知る場所で浮気に及ぶことも無かった。
あの婚約解消が無ければ、私はあの地獄のような日々から逃げ出すことなんて叶わなかったうえに、いつか浮気するような男と一生を共にすることになっていたはずなのよね。
そうなっていたら、一生苦しむことになっていたと思う。
アイリス様がしている闇魔法を振りまく行動は許せないけれど、あの束縛から解き放ってくれた事には感謝もしているから、自分がどうすれば良いのか分からなくなってしまう。
「正義なんて、その人の中にしか無いものだから、シエルはシエルの思う通りに動けば良いと思う。
王太子妃なら国民を大切にする責務があるけど、冒険者は自分の身を護るのが責務だからね」
「そうね……。
民達は許してくれないかもしれないけれど、アイリス様を助け出してみるわ」
王太子殿下といちゃ……親しげな様子を私に見せつけては勝ち誇った笑みを浮かべていたことは許さないけれど、それは今の幸せな姿を見せつけて仕返しすれば済むお話。
カグレシアン公爵様を追い詰めるためにも、アイリス様を味方に引き込むことは必要だと思うから、急がなくちゃいけないわね。
アイリス様の評判が下がっている今は、カグレシアン公爵様が彼女を処分することだって有り得る。
だから、すぐにでも行動を起こした方が良いと思った。
「よし、そうと決まれば早速行動しよう。
グレン殿、急で申し訳ないですが、食事を終えたらアルベール王国に向かいます」
「構わない。港まで馬車を手配しよう」
「出来れば、帝都の外――南の出口までお願いしたいです」
「二人なら大丈夫だと思うが、まさか山越えをするつもりなのか?」
クラウスの言葉に戸惑いを見せるグレン様。
国境の山は魔物が居なくても危険な場所だから、正気を疑うのは当然だと思う。
でも、船よりもワイバーンを利用した方が早いのだから、仕方ないわよね。
「ええ、そのつもりですわ。この前も同じことをしているので、大丈夫です」
「それなら安心だ。
しかし、フレイムワイバーンが大量に現れた理由がまだ分かっていないから、その調査はこちらで進めていく」
次から次へと降りかかってくる問題に頭を掻くグレン様。
そんなに強く掻き毟っては毛根も傷付いてしまいそうだから、すごく心配になってしまった。
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