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第2章
97. 見慣れない景色
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侯爵家の馬車で帝都の外へと向かう事一時間ほど。
乗り合い馬車と違って途中でとまらないお陰で、いつもよりも早く帝都を出ることが出来た。
この辺りはフレイムワイバーンの影響を受けなかったようで、青々とした草原が風に揺られている様子が目に入る。
そして、少し離れているところをワイバーンが飛んでいることも分かった。
「見つけたわ」
「どこだ?」
「あの辺りに飛んでいるわ」
初めてクラウスよりも先にワイバーンを見つけられたことに戸惑いながら、指を向けて位置を教える私。
まだ遠くに居るけれど、幻惑の魔法が届かない距離ではない。
だから、すぐに魔法を使ってワイバーンを私達の方に移動するように操った。
「俺も見つけたよ。もう魔法をかけたんだね」
「ええ。駄目だったかしら?」
「いや、驚いただけだ。
問題は無い。御者や警備にも伝えてあるからね」
アルベール王国に居たら、魔物を闇魔法で操れることなんて口が裂けても言えない。
ここは闇魔法も有意義に用いている帝国だから、事前に知らせておけば帝都の近くに魔物を移動させることも出来る。
エイブラム家の後ろ盾がなければ悪意を疑われるけれど、信頼を得ている今なら大丈夫。
「やっぱりワイバーンは速いわね」
「そうだな。この距離を一分とかからないからな」
ワイバーンに軽く触れて身体強化の魔法をかけていると、私達を乗せてくれた馬車の方から囁き合う声が聞こえてくる。
「こうして見ると迫力すごいな……」
「ああ。しかし、シエル様に頭を下げている様子を見ると、可愛いとも思える」
「やめとけ、魔物は魔物だ。情が移ったら倒せなくなるぞ」
「分かってる。冗談だ」
空を飛んでいる魔物を間近で見ることは無いから、護衛さん達も興味津々という様子。
でも、道草を食う余裕は無いから、身体強化の魔法をかけ終えるとすぐにワイバーンの背中に乗った。
今回もワイバーンを操る私が前に座って、すぐ後ろにクラウスが座る。
そんな時、ワイバーンが首を下げて何かをし始めた。
「道草を食う暇は無いんだけどな……」
「ワイバーンって草も食べるのね……」
新しい発見に驚いてしまう私。
けれど、すぐに気持ちを入れ替えて、護衛さん達に手を振る。
「送って下さってありがとうございました!
行ってきますわ!」
「行ってきます!」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ!」
私に続けてクラウスも軽く頭を下げてから、ワイバーンに道草を食うのを止めるように操ってから、空へと羽ばたかせた。
こうして、私達は一気に空へと舞い上がり、アルベール王国を目指して雲へと飛び込んでいった。
それから数時間。
少し離れたところに王都が見えたから、私は雑談を遮ってからこう口にした。
「そろそろ王都だから低いところに移動するわね」
「分かった。もうそんなに進んだのか……」
思っていたよりも時間が過ぎていなかったみたいで、クラウスは少し戸惑っている様子だ。
私もお話に夢中になっていたから、王都が見えた時は驚いたのよね。
「そうみたい。
話の続きだけれど……」
ここからは何度かしている流れだから、お話をしながらでも動ける。
木々を縫うように飛んでいると右へ左へと激しく揺れるから、捕まっていないと振り落とされそうになってしまうけれど、すっかり慣れてしまったからお菓子くらいなら食べることも出来る。
お茶は零れてしまうから無理だけれど……。
「この辺りで良さそうね」
「ああ、そうだな」
森を抜ける手前でワイバーンを止めて、背中から降りる私達。
ここから先は闇魔法に侵されている危険な場所だから、気持ちを引き締めてから足を踏み出す。
「ここに墓地なんてあったか?」
「無かったわ。また大勢の人が亡くなってしまったのね……」
魔物に墓地を荒らされることは無いけれど、アルベール王国には死者も街で守るという考えがあるから、城壁の外に埋葬することはあり得ない。
でも、城壁の中の土地が足りなくなるくらい、大勢の人が亡くなってしまったみたいだ。
悲しくて涙が溢れそうになってしまうけれど、これからアイリス様を助け出さないといけないから、気にしないようにする。
「この墓は罪人らしいな。
反逆者と書かれているよ」
「……反乱が起きていたのね」
「弾圧か反乱か分からないが……これほどの人が命を落とすとは、王家は腐っているのだろうか」
「元々腐っていたと思うわ」
将来の王妃になる人を無碍に扱うような人達だったから、平民は奴隷と考えていても不思議ではない。
きっとこの弾圧は、闇魔法による洗脳が無くても起こっていたと思うのよね……。
乗り合い馬車と違って途中でとまらないお陰で、いつもよりも早く帝都を出ることが出来た。
この辺りはフレイムワイバーンの影響を受けなかったようで、青々とした草原が風に揺られている様子が目に入る。
そして、少し離れているところをワイバーンが飛んでいることも分かった。
「見つけたわ」
「どこだ?」
「あの辺りに飛んでいるわ」
初めてクラウスよりも先にワイバーンを見つけられたことに戸惑いながら、指を向けて位置を教える私。
まだ遠くに居るけれど、幻惑の魔法が届かない距離ではない。
だから、すぐに魔法を使ってワイバーンを私達の方に移動するように操った。
「俺も見つけたよ。もう魔法をかけたんだね」
「ええ。駄目だったかしら?」
「いや、驚いただけだ。
問題は無い。御者や警備にも伝えてあるからね」
アルベール王国に居たら、魔物を闇魔法で操れることなんて口が裂けても言えない。
ここは闇魔法も有意義に用いている帝国だから、事前に知らせておけば帝都の近くに魔物を移動させることも出来る。
エイブラム家の後ろ盾がなければ悪意を疑われるけれど、信頼を得ている今なら大丈夫。
「やっぱりワイバーンは速いわね」
「そうだな。この距離を一分とかからないからな」
ワイバーンに軽く触れて身体強化の魔法をかけていると、私達を乗せてくれた馬車の方から囁き合う声が聞こえてくる。
「こうして見ると迫力すごいな……」
「ああ。しかし、シエル様に頭を下げている様子を見ると、可愛いとも思える」
「やめとけ、魔物は魔物だ。情が移ったら倒せなくなるぞ」
「分かってる。冗談だ」
空を飛んでいる魔物を間近で見ることは無いから、護衛さん達も興味津々という様子。
でも、道草を食う余裕は無いから、身体強化の魔法をかけ終えるとすぐにワイバーンの背中に乗った。
今回もワイバーンを操る私が前に座って、すぐ後ろにクラウスが座る。
そんな時、ワイバーンが首を下げて何かをし始めた。
「道草を食う暇は無いんだけどな……」
「ワイバーンって草も食べるのね……」
新しい発見に驚いてしまう私。
けれど、すぐに気持ちを入れ替えて、護衛さん達に手を振る。
「送って下さってありがとうございました!
行ってきますわ!」
「行ってきます!」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ!」
私に続けてクラウスも軽く頭を下げてから、ワイバーンに道草を食うのを止めるように操ってから、空へと羽ばたかせた。
こうして、私達は一気に空へと舞い上がり、アルベール王国を目指して雲へと飛び込んでいった。
それから数時間。
少し離れたところに王都が見えたから、私は雑談を遮ってからこう口にした。
「そろそろ王都だから低いところに移動するわね」
「分かった。もうそんなに進んだのか……」
思っていたよりも時間が過ぎていなかったみたいで、クラウスは少し戸惑っている様子だ。
私もお話に夢中になっていたから、王都が見えた時は驚いたのよね。
「そうみたい。
話の続きだけれど……」
ここからは何度かしている流れだから、お話をしながらでも動ける。
木々を縫うように飛んでいると右へ左へと激しく揺れるから、捕まっていないと振り落とされそうになってしまうけれど、すっかり慣れてしまったからお菓子くらいなら食べることも出来る。
お茶は零れてしまうから無理だけれど……。
「この辺りで良さそうね」
「ああ、そうだな」
森を抜ける手前でワイバーンを止めて、背中から降りる私達。
ここから先は闇魔法に侵されている危険な場所だから、気持ちを引き締めてから足を踏み出す。
「ここに墓地なんてあったか?」
「無かったわ。また大勢の人が亡くなってしまったのね……」
魔物に墓地を荒らされることは無いけれど、アルベール王国には死者も街で守るという考えがあるから、城壁の外に埋葬することはあり得ない。
でも、城壁の中の土地が足りなくなるくらい、大勢の人が亡くなってしまったみたいだ。
悲しくて涙が溢れそうになってしまうけれど、これからアイリス様を助け出さないといけないから、気にしないようにする。
「この墓は罪人らしいな。
反逆者と書かれているよ」
「……反乱が起きていたのね」
「弾圧か反乱か分からないが……これほどの人が命を落とすとは、王家は腐っているのだろうか」
「元々腐っていたと思うわ」
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