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29. 苦味がしました③
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「この教室で毒殺未遂が起こりました。これより、所持品検査を行います。
犯人特定のために、協力をお願いします」
教室の中にそんな声が響き渡ると、一部の人達が嫌そうな顔をしていた。
何もしてないのに持ち物の中身を見られるのは嫌だから、気持ちは分かる。
そんな態度を取ったら怪しまれるだけだから、悪手ではあるけれど。
ちなみに、この所持品検査は私やヴィオラも対象になるらしい。
過去に自ら毒を持って他人を罪人に仕立てようとした人がいるから、仕方のないことだと割り切っている。
それに、殿方に見られてはいけない物は全てダリアが持っているから、そういう心配も要らない。
「では、後ろから順番に調べていきます」
だから私の番が回って来た時、躊躇わずに持っている物を全て出した。
「所持品検査の前に、どうか癒しの力をお使いください。許可は取ってありますので、ベルはすぐに止まります」
「分かりましたわ……」
そう言われて、頷いてから癒しの力を使う私。
直後、数秒間だけベルの音が響いた。
このベルは教室や廊下で魔法などを使うと鳴るようになっていて、すぐに音が止まらなかったら必ず騎士さん達が来るようになっている。
そうなればリリア様に逃げられてしまうと思ったから、今まで我慢していたのよね……。
逃げられるだけならまだ良いけれど、この場で自死をされてしまったら、また私達が後手に回ってしまう。
それも避けたくてこうしたのだけど……。
癒しの力を使ったらいつもの気分に戻った。
「使い終わりました」
「今後はすぐにお使いください。非常時に咎められることはありませんので。
「気を付けますわ」
「では、所持品検査に移らせて頂きます」
注意は受けてしまったけれど、今のところ順調ね。
リリア様は発覚しない自信があるみたいで、平然としている。
「……確認出来ました。次は全ての指をこの中に入れてください」
リリア様の様子を見ながら、言われた通りに手を入れる私。
この液体は毒が触れると一瞬で真っ黒に変色するもの。
もし毒を掴んだ手袋を持っていても、この液体に入れればすぐに分かるらしい。
けれども、今のところ誰も毒の反応が出ていないから分からないのよね。
「念のため、お飲み物の中身を確認しても?」
「ええ、構いませんわ」
私の水筒の中身を一滴だけ入れたら、真っ黒に変化したけれど。
ええ、これは本物ね。
「ご協力ありがとうございます。では、最後に指紋を確認させて頂きます」
そんな感じで、数分かけて私の所持品検査は終わった。
他の人も同じくらいの時間をかけているけれど、10人の騎士さんが手分けしているおかげで、もう少しで全員の確認が終わりそうだった。
そんな時、リリア様の方では動きがあった。
「この手袋、怪しいので確認しますね」
そんな言葉と共に、どこかに隠されていたらしい手袋が液体に入れられる。
すると、一気に黒く変色していった。
「貴女には本部まで来て頂き……おい! 吐き出せ!」
そのことに焦ったのか、スカートの中に隠していたらしい白い粒を取り出して、そのまま飲み込むリリア様。
男性の騎士さんが触れられない場所だから発覚しなかったみたいだけど、目の前で取り出せば気付かれるというもの。
でも、バシバシと背中を強く叩かれても、毒が吐き出される事はなくて。
すぐに顔色が悪くなっていった。
このまま死なれたら色々と不味いから、慌ててリリア様のところに駆け寄る私。
すぐに癒しの力を使うと、顔色が少し良くなった。
ベルも鳴り始めたけれど、今はそんな事を気にしていられる余裕なんて無かった。
癒しの力を使えば毒や病の原因になる菌も一緒に消えるから、こういう時にも役立つのよね。
でも、リリア様はそこで諦めてくれなくて、今度はナイフを取り出して私を切りつけてきた。
こんな事をしたら、毒の言い逃れなんて出来なくなるのに……。
そんなことを思っていたら、今度は窓の方に駆け出していて。
「やり直しの邪魔しないで!」
「お断りしますわ!」
私は咄嗟にリリア様の手を引いたけれど、怪我をしている状態で力なんて入らない。
騎士さん達は私を守ろうと動いているから、リリア様を引き止められなかった。
咄嗟に追いかけたけれど、地面に叩きつけられるリリア様を見ていることしか出来なかった。
犯人特定のために、協力をお願いします」
教室の中にそんな声が響き渡ると、一部の人達が嫌そうな顔をしていた。
何もしてないのに持ち物の中身を見られるのは嫌だから、気持ちは分かる。
そんな態度を取ったら怪しまれるだけだから、悪手ではあるけれど。
ちなみに、この所持品検査は私やヴィオラも対象になるらしい。
過去に自ら毒を持って他人を罪人に仕立てようとした人がいるから、仕方のないことだと割り切っている。
それに、殿方に見られてはいけない物は全てダリアが持っているから、そういう心配も要らない。
「では、後ろから順番に調べていきます」
だから私の番が回って来た時、躊躇わずに持っている物を全て出した。
「所持品検査の前に、どうか癒しの力をお使いください。許可は取ってありますので、ベルはすぐに止まります」
「分かりましたわ……」
そう言われて、頷いてから癒しの力を使う私。
直後、数秒間だけベルの音が響いた。
このベルは教室や廊下で魔法などを使うと鳴るようになっていて、すぐに音が止まらなかったら必ず騎士さん達が来るようになっている。
そうなればリリア様に逃げられてしまうと思ったから、今まで我慢していたのよね……。
逃げられるだけならまだ良いけれど、この場で自死をされてしまったら、また私達が後手に回ってしまう。
それも避けたくてこうしたのだけど……。
癒しの力を使ったらいつもの気分に戻った。
「使い終わりました」
「今後はすぐにお使いください。非常時に咎められることはありませんので。
「気を付けますわ」
「では、所持品検査に移らせて頂きます」
注意は受けてしまったけれど、今のところ順調ね。
リリア様は発覚しない自信があるみたいで、平然としている。
「……確認出来ました。次は全ての指をこの中に入れてください」
リリア様の様子を見ながら、言われた通りに手を入れる私。
この液体は毒が触れると一瞬で真っ黒に変色するもの。
もし毒を掴んだ手袋を持っていても、この液体に入れればすぐに分かるらしい。
けれども、今のところ誰も毒の反応が出ていないから分からないのよね。
「念のため、お飲み物の中身を確認しても?」
「ええ、構いませんわ」
私の水筒の中身を一滴だけ入れたら、真っ黒に変化したけれど。
ええ、これは本物ね。
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そんな感じで、数分かけて私の所持品検査は終わった。
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そんな時、リリア様の方では動きがあった。
「この手袋、怪しいので確認しますね」
そんな言葉と共に、どこかに隠されていたらしい手袋が液体に入れられる。
すると、一気に黒く変色していった。
「貴女には本部まで来て頂き……おい! 吐き出せ!」
そのことに焦ったのか、スカートの中に隠していたらしい白い粒を取り出して、そのまま飲み込むリリア様。
男性の騎士さんが触れられない場所だから発覚しなかったみたいだけど、目の前で取り出せば気付かれるというもの。
でも、バシバシと背中を強く叩かれても、毒が吐き出される事はなくて。
すぐに顔色が悪くなっていった。
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でも、リリア様はそこで諦めてくれなくて、今度はナイフを取り出して私を切りつけてきた。
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