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第二章 ボーダーラインを超えていけ
23 罪と罰
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時は少々遡り、警備隊の詰め所からブレイブ達が帰った夜のこと──
「あんのクソガキィ! ここを出たら絶対にぶっ殺してやる!」
国民から最凶最悪と称されるギャング、ヴァルチャーの新入りで、彼らのリーダー格の男が怒りをぶちまける。
「ゴメス、お前さっきからずっとそればっかりだな……。それよりも、ここからどうやって出るかを考えねえと、あのガキに仕返しすることもできねえぞ」
「クソッ! 確かにな……」
ゴメスは苦々しい顔で、自分を閉じ込める牢屋を睨みつける。すると──
カツン、カツン、カツン。
硬い物質が床を叩くような音が、真夜中の牢屋に響く。
彼が音のする方へ目を向けると、金属製の杖をつく者が階段を下りてくる。
「ベイズさん! 助けに来てくれたんですかい!?」
ゴメスはヴァルチャーの幹部、ベイズの来訪を喜ぶ。
「しっ。少し静かにしろ。誰かに気づかれたら面倒くせえからな」
「……!」
慌てて彼は口をつぐむ。
「す、すんません……」
「クヒヒッ、まあいい。にしてもお前ら、まずは俺に言うことがあるんじゃねえか?」
ベイズの言葉に、ゴメスと仲間達は一気に青ざめる。
「お、俺達が勝手に、冒険者狩りをやったことっすよね……? わ、悪かったとは思ってますが、俺達だって金がないと生きていけませんよ。それに、ヴァルチャーには迷惑をかけていませんし……」
「お前らの言い分は分かった。で、お前達が冒険者狩りの犯人だと、冒険者ギルドにバレているのは気づいていたか?」
「……え?」
「クヒヒッ、気づいてねえか。そりゃあ残念だな」
ベイズはそう言うと、小さく首を振る。
その様子に、ゴメスの背中から汗が流れる。
「最後の質問だが、お前ら、誰かにヴァルチャーのことを喋ったか?」
仲間達は全力で手を横に振るが、ゴメスは一気に表情が明るくなり、まくし立てる。
「それが、俺達を捕まえたブレイブとか言う冒険者のクソガキが、わざわざここに来やがったんで、思いっきりビビらせてやりましたよ! ヴァルチャーに手を出したら終わりだ! 冒険者狩りにはCランクよりも強い幹部のベイズさんがいるから、お前達なんてイチコロだってね!」
「バ、バカ野郎! そんなことを言ったら……!」
ゴメスに対して、冷や汗をかいた仲間の一人が叫ぶ。
「そうかそうか。喋っちまったか。さっきお前ら、誰にも組織のことを喋ってないと手を横に振っていたよな? ……とんでもねえ嘘つきがいたもんだ」
心底がっかりした様子でベイズはため息をつく。
ゴメスの仲間達の表情は真っ青になり、冷や汗が止まる気配がない。
それに対してゴメスの表情は明るいままだ。
「ベイズさん! 俺は嘘をついていませんぜ! 正直なのが俺のいいところなんですよ!」
「……ほう? こりゃあとんでもねえ奴がいたもんだ」
ベイズはそう呟くと、全身を覆ったマントの中に手を伸ばす。
そして、懐から鍵の束を取り出した。
「さ、さすがベイズさん! 助けてくれるんですね!?」
「クヒヒッ」
ベイズは鍵で牢屋を開ける。そして、彼自身が中に入った。
「え? ベイズさんが入っちゃあ意味ないですぜ?」
ゴメスは不思議そうな顔でベイズを見る。
「バ、バカ野郎……。俺達は終わりだ……」
「はぁ?」
ゴメスが後ろを振り返ると、仲間達の表情は真っ青になっており、体がガタガタと震えていた。
「なんだ、嘘のことなら謝れば許してくれるさ! なあベイズさん!」
ゴメスは再びベイズの方に振り向くと、金属製の杖が彼の顔に迫っていた。
バギッ!
杖の一撃をまともに受けて、ゴメスの体が吹き飛び牢屋の柵にぶつかる。
「ぐはっ……! な、なんで……!?」
口から血を吹き出しながら、ゴメスは驚愕の表情でベイズに叫ぶ。
「クヒヒヒヒッ! 俺はなぁ、人を騙そうとする詐欺師は大嫌いなんだ。残念だが、そんなやつはこの世から消えた方がいい。分かるだろう?」
「で、でも俺は、嘘をついてな──」
ゴメスが言葉を言い終わる前に、次の一撃が彼を襲った。
ゴギィ!
ゴメスの首の骨が折れ、顔が真後ろを向く。
「ひぃ!?」
彼の仲間達は恐怖で叫び声を上げて後ずさる。
「お前は……そうだな、存在そのものが残念だ。そんなやつはこの世界に必要ない」
ベイズは地面に倒れたゴメスを一瞥して言う。
「ベ、ベイズさん! 俺達、金はもう要りませんから! それに、これからは一生懸命働きますから、助けてください!」
ゴメスの仲間達は土下座すると、ベイズに懇願する。
「一度でも嘘をついたお前らの言葉なんて、信じる奴がこの世界にいると思うか? ……この、どうしようもねえ詐欺師どもめ!」
いきなり激昂したベイズはそう叫ぶと、手にした杖で牢屋の柵を殴った。
ガギン!
牢屋の柵はくの字に折れ曲がる。
「どっちにしろ、ボスの命令でお前らは全員死刑なんだ。俺はこんなことしたくなかったんだが、残念だよ」
ベイズはそう言うと、ギラリと光る杖を振りかぶった。
◆
警備隊の詰め所を出て、ベイズが真夜中の町中を見回すが人一人いない。
ただ、地面に伏した警備兵の亡骸を除いてではあるが。
「ブレイブだったか。残念だが、次はそいつだな……」
そう言うとベイズは、カツン、カツン、カツンと音を立てながら、夜の暗闇に姿を消した。
「あんのクソガキィ! ここを出たら絶対にぶっ殺してやる!」
国民から最凶最悪と称されるギャング、ヴァルチャーの新入りで、彼らのリーダー格の男が怒りをぶちまける。
「ゴメス、お前さっきからずっとそればっかりだな……。それよりも、ここからどうやって出るかを考えねえと、あのガキに仕返しすることもできねえぞ」
「クソッ! 確かにな……」
ゴメスは苦々しい顔で、自分を閉じ込める牢屋を睨みつける。すると──
カツン、カツン、カツン。
硬い物質が床を叩くような音が、真夜中の牢屋に響く。
彼が音のする方へ目を向けると、金属製の杖をつく者が階段を下りてくる。
「ベイズさん! 助けに来てくれたんですかい!?」
ゴメスはヴァルチャーの幹部、ベイズの来訪を喜ぶ。
「しっ。少し静かにしろ。誰かに気づかれたら面倒くせえからな」
「……!」
慌てて彼は口をつぐむ。
「す、すんません……」
「クヒヒッ、まあいい。にしてもお前ら、まずは俺に言うことがあるんじゃねえか?」
ベイズの言葉に、ゴメスと仲間達は一気に青ざめる。
「お、俺達が勝手に、冒険者狩りをやったことっすよね……? わ、悪かったとは思ってますが、俺達だって金がないと生きていけませんよ。それに、ヴァルチャーには迷惑をかけていませんし……」
「お前らの言い分は分かった。で、お前達が冒険者狩りの犯人だと、冒険者ギルドにバレているのは気づいていたか?」
「……え?」
「クヒヒッ、気づいてねえか。そりゃあ残念だな」
ベイズはそう言うと、小さく首を振る。
その様子に、ゴメスの背中から汗が流れる。
「最後の質問だが、お前ら、誰かにヴァルチャーのことを喋ったか?」
仲間達は全力で手を横に振るが、ゴメスは一気に表情が明るくなり、まくし立てる。
「それが、俺達を捕まえたブレイブとか言う冒険者のクソガキが、わざわざここに来やがったんで、思いっきりビビらせてやりましたよ! ヴァルチャーに手を出したら終わりだ! 冒険者狩りにはCランクよりも強い幹部のベイズさんがいるから、お前達なんてイチコロだってね!」
「バ、バカ野郎! そんなことを言ったら……!」
ゴメスに対して、冷や汗をかいた仲間の一人が叫ぶ。
「そうかそうか。喋っちまったか。さっきお前ら、誰にも組織のことを喋ってないと手を横に振っていたよな? ……とんでもねえ嘘つきがいたもんだ」
心底がっかりした様子でベイズはため息をつく。
ゴメスの仲間達の表情は真っ青になり、冷や汗が止まる気配がない。
それに対してゴメスの表情は明るいままだ。
「ベイズさん! 俺は嘘をついていませんぜ! 正直なのが俺のいいところなんですよ!」
「……ほう? こりゃあとんでもねえ奴がいたもんだ」
ベイズはそう呟くと、全身を覆ったマントの中に手を伸ばす。
そして、懐から鍵の束を取り出した。
「さ、さすがベイズさん! 助けてくれるんですね!?」
「クヒヒッ」
ベイズは鍵で牢屋を開ける。そして、彼自身が中に入った。
「え? ベイズさんが入っちゃあ意味ないですぜ?」
ゴメスは不思議そうな顔でベイズを見る。
「バ、バカ野郎……。俺達は終わりだ……」
「はぁ?」
ゴメスが後ろを振り返ると、仲間達の表情は真っ青になっており、体がガタガタと震えていた。
「なんだ、嘘のことなら謝れば許してくれるさ! なあベイズさん!」
ゴメスは再びベイズの方に振り向くと、金属製の杖が彼の顔に迫っていた。
バギッ!
杖の一撃をまともに受けて、ゴメスの体が吹き飛び牢屋の柵にぶつかる。
「ぐはっ……! な、なんで……!?」
口から血を吹き出しながら、ゴメスは驚愕の表情でベイズに叫ぶ。
「クヒヒヒヒッ! 俺はなぁ、人を騙そうとする詐欺師は大嫌いなんだ。残念だが、そんなやつはこの世から消えた方がいい。分かるだろう?」
「で、でも俺は、嘘をついてな──」
ゴメスが言葉を言い終わる前に、次の一撃が彼を襲った。
ゴギィ!
ゴメスの首の骨が折れ、顔が真後ろを向く。
「ひぃ!?」
彼の仲間達は恐怖で叫び声を上げて後ずさる。
「お前は……そうだな、存在そのものが残念だ。そんなやつはこの世界に必要ない」
ベイズは地面に倒れたゴメスを一瞥して言う。
「ベ、ベイズさん! 俺達、金はもう要りませんから! それに、これからは一生懸命働きますから、助けてください!」
ゴメスの仲間達は土下座すると、ベイズに懇願する。
「一度でも嘘をついたお前らの言葉なんて、信じる奴がこの世界にいると思うか? ……この、どうしようもねえ詐欺師どもめ!」
いきなり激昂したベイズはそう叫ぶと、手にした杖で牢屋の柵を殴った。
ガギン!
牢屋の柵はくの字に折れ曲がる。
「どっちにしろ、ボスの命令でお前らは全員死刑なんだ。俺はこんなことしたくなかったんだが、残念だよ」
ベイズはそう言うと、ギラリと光る杖を振りかぶった。
◆
警備隊の詰め所を出て、ベイズが真夜中の町中を見回すが人一人いない。
ただ、地面に伏した警備兵の亡骸を除いてではあるが。
「ブレイブだったか。残念だが、次はそいつだな……」
そう言うとベイズは、カツン、カツン、カツンと音を立てながら、夜の暗闇に姿を消した。
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