28 / 31
第二章 ボーダーラインを超えていけ
28 ダンジョン中層の攻略③ 罠
しおりを挟む
〔今日はダンジョン中層の攻略を目指す。このまま一気に第十階層まで行くぞ〕
「よし、分かった!」
ブレイブはシズルの言葉をパーティーメンバーに伝える。
ブレイブ達は順調に階層を下り、第九階層に到着した。全員のレベルは9にまで到達している。
するとバッツがブレイブに話しかける。
「なあ兄ちゃん。少しだけ、鉱石を取りにいっちゃダメかな? すぐ戻ってくるからさ」
「ん? どうしたんだ?」
「今度鍛冶屋の親方に、鍛冶を教えてもらうことになってさ! 鉱石を持って帰れば、それを使って練習できるだろ? だから──」
「お兄ちゃん、勝手なことをしちゃダメだよ。ダンジョンは危ないところなんだから、ブレイブお兄ちゃんの言うことを聞かないと」
メグはいつもよりも強い調子で言う。バッツを心配してのことらしい。
しかしブレイブは気楽だ。
「すぐ終わるなら問題ないから、みんなで一緒に行こう!」
「さすがブレイブ兄ちゃん! 話が分かるなぁ!」
「ブレイブお兄ちゃんは甘いんだから……」
バッツはとても嬉しそうだが、メグは少し不満げな表情をしている。
ブレイブ達は前回鉱石を採掘した鉱床に向かった。
ついにそのフロアが見えてきた。
「ここまで来れば安全だ! オレ、先に行ってるわ!」
そう言って、バッツが走り出してしまった。鉱床を見て我慢できなくなったらしい。
「ちょっと、お兄ちゃん!?」
メグは焦って呼び戻そうとする。しかし、バッツはまるで聞いていない。
「まあ大丈夫だろ。なあ、ケイナ?」
「そうですね。この辺りには罠もないはずですし。……え? 《サーチ》に反応? フロアの手前に巨大な罠があります!」
「な、なに!? バッツ! それ以上行くな!」
ブレイブはバッツに大声で叫ぶ。
バッツはこちらを振り返り、耳に手を当てて聞こえないというジェスチャーをする。
そして、次の瞬間──
ズドドドドドーーーーーーーーーン!
ダンジョンに轟音が鳴り響き、ブレイブ達の前方が真っ白な煙に覆われる。
その煙が晴れると、バッツの姿がない。
そして、彼がいた場所には巨大な穴が空いていた。
落とし穴だ。
「……お、お兄ちゃん? お兄ちゃん!?」
メグの顔は一瞬凍りついた表情になり、みるみるうちに恐怖の色に染まる。
そして、兄がいたはずの場所へ走り出した。
「メ、メグ!?」
ブレイブはメグを止めようとする。
しかし──
「なんだ、どいつもこいつも落ちてねえじゃねえか。誰だ? 全員落ちるっつった嘘つきは?」
「す、すんません! でかい落とし穴にしたんで、絶対落ちると思ったんですが……」
後ろから聞こえる声に、ブレイブとケイナが振り返る。
バギィ!
「ぐはっ……!?」
目に入ったのは、トカゲのような目をした男が金属製の杖で部下らしき男を殴ったところだった。
「俺は約束を守らねえ嘘つきが嫌いなんだ。お前みたいなやつがいると世界が悪くなる一方だ。本当はやりたくないが、お前には死んでもらう。分かってくれるだろう?」
「たたた、助けてください……!」
部下らしき男はトカゲの目の男に懇願する。
しかし、少しも顔色を変えることなく、トカゲの目の男は杖を振り上げた。
「おい、待てぇ!」
ブレイブの声に、男はピタッと動きを止める。
「お前がベイズか?」
「んん? 俺の名前を知ってるってことは、お前がブレイブか?」
「ああ、そうだ」
ブレイブの返事に、ベイズはニヤリと笑みを浮かべると、杖を持った腕を振り下ろした。
ボギィ!
「ぐふっ……」
助けを懇願した部下らしき男は、ベイズの一撃をまともにくらい地面に倒れた。
「お前!? 待てと言っただろ!」
ブレイブはベイズの行動に激昂する。
「残念だが、お前の指示は聞かねえよ。俺はボスの指示でここに来て、ボスの指示で冒険者狩りをやってんだ。それにこの詐欺師ヤローを殺すのは世界のためだからな」
そう言うベイズの顔には笑みが貼り付いたままだ。
「何言ってんだこいつ? 自分で殴ったくせに世界のためだとか言いやがって。ふざけんな!」
ブレイブの怒りはさらに増し、ベイズの方に一歩踏み出した。
〔おいブレイブ、すこし落ち着け。バッツのことを忘れたのか?〕
「……あ! バ、バッツは無事なのか!?」
〔知らん。まずはそれを確認しに行くべきだろう〕
「そうだな! シズル、ありがとう!」
ブレイブはそう言うと、再び振り向いてバッツが姿を消した方へと走り出した。
それに続き、ケイナもベイズ達の気配に注意しながらバッツの後を追った。
「メグ! バッツは!?」
しゃがんで下を見ているメグにブレイブは声をかけた。
「この大きい穴に落ちてしまったみたいです……。どうしましょう……?」
メグは絶望した表情で、目に涙を浮かべてブレイブに聞く。
「シズル。落とし穴って落ちるとどうなるんだ?」
〔落下の衝撃でかなりのダメージをくらうが、死にはしないはずだ。そして下の階層に強制的に下ろされる〕
「なら、きっとまだ無事か……」
カツン、カツン、カツン──
「おいおい、話の途中でいなくなるとはとんでもねえ奴だ。俺のことを許さないんじゃねえのかよ?」
ベイズが追いついてきて、ブレイブを挑発するように話しかける。
〔ブレイブ、人間相手の戦闘で注意することは覚えているな?〕
「ああ。人間の場合、まずは言葉で相手を惑わそうとするんだったな。気をつける。そんで、俺はこれからどうすべきか考えたぞ」
〔ほう。どうする?〕
「落ちる!」
〔……は?〕
シズルの呆気に取られたような声がする。
その声に構うことなく、ブレイブはメグを抱きかかえる。
「え?」
そしてケイナに向かって言う。
「ケイナ! 飛び下りるぞ!」
「……!? は、はい!」
ケイナの返事を合図に、二人は落とし穴に自ら飛び込んだ。
「よし、分かった!」
ブレイブはシズルの言葉をパーティーメンバーに伝える。
ブレイブ達は順調に階層を下り、第九階層に到着した。全員のレベルは9にまで到達している。
するとバッツがブレイブに話しかける。
「なあ兄ちゃん。少しだけ、鉱石を取りにいっちゃダメかな? すぐ戻ってくるからさ」
「ん? どうしたんだ?」
「今度鍛冶屋の親方に、鍛冶を教えてもらうことになってさ! 鉱石を持って帰れば、それを使って練習できるだろ? だから──」
「お兄ちゃん、勝手なことをしちゃダメだよ。ダンジョンは危ないところなんだから、ブレイブお兄ちゃんの言うことを聞かないと」
メグはいつもよりも強い調子で言う。バッツを心配してのことらしい。
しかしブレイブは気楽だ。
「すぐ終わるなら問題ないから、みんなで一緒に行こう!」
「さすがブレイブ兄ちゃん! 話が分かるなぁ!」
「ブレイブお兄ちゃんは甘いんだから……」
バッツはとても嬉しそうだが、メグは少し不満げな表情をしている。
ブレイブ達は前回鉱石を採掘した鉱床に向かった。
ついにそのフロアが見えてきた。
「ここまで来れば安全だ! オレ、先に行ってるわ!」
そう言って、バッツが走り出してしまった。鉱床を見て我慢できなくなったらしい。
「ちょっと、お兄ちゃん!?」
メグは焦って呼び戻そうとする。しかし、バッツはまるで聞いていない。
「まあ大丈夫だろ。なあ、ケイナ?」
「そうですね。この辺りには罠もないはずですし。……え? 《サーチ》に反応? フロアの手前に巨大な罠があります!」
「な、なに!? バッツ! それ以上行くな!」
ブレイブはバッツに大声で叫ぶ。
バッツはこちらを振り返り、耳に手を当てて聞こえないというジェスチャーをする。
そして、次の瞬間──
ズドドドドドーーーーーーーーーン!
ダンジョンに轟音が鳴り響き、ブレイブ達の前方が真っ白な煙に覆われる。
その煙が晴れると、バッツの姿がない。
そして、彼がいた場所には巨大な穴が空いていた。
落とし穴だ。
「……お、お兄ちゃん? お兄ちゃん!?」
メグの顔は一瞬凍りついた表情になり、みるみるうちに恐怖の色に染まる。
そして、兄がいたはずの場所へ走り出した。
「メ、メグ!?」
ブレイブはメグを止めようとする。
しかし──
「なんだ、どいつもこいつも落ちてねえじゃねえか。誰だ? 全員落ちるっつった嘘つきは?」
「す、すんません! でかい落とし穴にしたんで、絶対落ちると思ったんですが……」
後ろから聞こえる声に、ブレイブとケイナが振り返る。
バギィ!
「ぐはっ……!?」
目に入ったのは、トカゲのような目をした男が金属製の杖で部下らしき男を殴ったところだった。
「俺は約束を守らねえ嘘つきが嫌いなんだ。お前みたいなやつがいると世界が悪くなる一方だ。本当はやりたくないが、お前には死んでもらう。分かってくれるだろう?」
「たたた、助けてください……!」
部下らしき男はトカゲの目の男に懇願する。
しかし、少しも顔色を変えることなく、トカゲの目の男は杖を振り上げた。
「おい、待てぇ!」
ブレイブの声に、男はピタッと動きを止める。
「お前がベイズか?」
「んん? 俺の名前を知ってるってことは、お前がブレイブか?」
「ああ、そうだ」
ブレイブの返事に、ベイズはニヤリと笑みを浮かべると、杖を持った腕を振り下ろした。
ボギィ!
「ぐふっ……」
助けを懇願した部下らしき男は、ベイズの一撃をまともにくらい地面に倒れた。
「お前!? 待てと言っただろ!」
ブレイブはベイズの行動に激昂する。
「残念だが、お前の指示は聞かねえよ。俺はボスの指示でここに来て、ボスの指示で冒険者狩りをやってんだ。それにこの詐欺師ヤローを殺すのは世界のためだからな」
そう言うベイズの顔には笑みが貼り付いたままだ。
「何言ってんだこいつ? 自分で殴ったくせに世界のためだとか言いやがって。ふざけんな!」
ブレイブの怒りはさらに増し、ベイズの方に一歩踏み出した。
〔おいブレイブ、すこし落ち着け。バッツのことを忘れたのか?〕
「……あ! バ、バッツは無事なのか!?」
〔知らん。まずはそれを確認しに行くべきだろう〕
「そうだな! シズル、ありがとう!」
ブレイブはそう言うと、再び振り向いてバッツが姿を消した方へと走り出した。
それに続き、ケイナもベイズ達の気配に注意しながらバッツの後を追った。
「メグ! バッツは!?」
しゃがんで下を見ているメグにブレイブは声をかけた。
「この大きい穴に落ちてしまったみたいです……。どうしましょう……?」
メグは絶望した表情で、目に涙を浮かべてブレイブに聞く。
「シズル。落とし穴って落ちるとどうなるんだ?」
〔落下の衝撃でかなりのダメージをくらうが、死にはしないはずだ。そして下の階層に強制的に下ろされる〕
「なら、きっとまだ無事か……」
カツン、カツン、カツン──
「おいおい、話の途中でいなくなるとはとんでもねえ奴だ。俺のことを許さないんじゃねえのかよ?」
ベイズが追いついてきて、ブレイブを挑発するように話しかける。
〔ブレイブ、人間相手の戦闘で注意することは覚えているな?〕
「ああ。人間の場合、まずは言葉で相手を惑わそうとするんだったな。気をつける。そんで、俺はこれからどうすべきか考えたぞ」
〔ほう。どうする?〕
「落ちる!」
〔……は?〕
シズルの呆気に取られたような声がする。
その声に構うことなく、ブレイブはメグを抱きかかえる。
「え?」
そしてケイナに向かって言う。
「ケイナ! 飛び下りるぞ!」
「……!? は、はい!」
ケイナの返事を合図に、二人は落とし穴に自ら飛び込んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる