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第二章〜勇者と魔王

メイド長と王の妃

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太陽の光とご飯の炊ける良い香りで目が覚める。
見慣れた俺の部屋。いつもと違うのは台所から朝食を準備する音がすることだ。

「あ!センパイおはようございます!ゆっくり眠れましたか?」

「ああ…んん…そうだな…」

テーブルの上には豆腐の味噌汁、目玉焼き、ブロッコリー、ウインナー、炊き立てのご飯。
湯呑みから漂う緑茶の香りで少しづつ目が覚めていく。

「どうしたんだ急に?」

「へへ…何となくです。私だってやればできるんですよ~。ささっ、どうぞどうぞ~」

手を合わせて…いただきます

「…うまい」

「へへ~。がんばりましたからね~」

シンプルだが美味い。朝食ってやっぱりシンプルが良いよな。
それに誰かに朝食を用意してもらったのなんていつぶりだろうか。
自分のために作ってくれた料理を食べれるのって最高だな。

その時俺はある人のことを思い出した。

「今日空いてるか?もしよかったら昼飯外で食べないか?」

「それってデートのお誘いですか~?いきましょ!いきまし!」

そして2人電車に揺られお馴染みのオタク街へ。
メインの通りから外れオフィスビルが立ち並ぶエリアへ向かう。
さらに小さな路地を通りとあるビルを目指す。

そのビルの一階。目立たない立地に小さな飲食店がある。今日の目的はここだ。

その店の扉を開けると





出迎えてくれたのはメイドさんだった
所謂メイド喫茶だ



「いらっしゃいませ。ようこそいらっしゃいました。こちらのお席へどうぞ」

美しい動作でゆっくりとお辞儀をし出迎えてくれるメイドさん。
ロングスカートで黒を基調としたクラシックなメイド服だ。

ここでは客は『ご主人様』ではない。あくまで『お客様』だ。
ただしその丁寧で美しい接客は心地よい空間をもたらしてくれる。

「へ~。センパイがメイド喫茶ですか?意外ですね~。でもこの空間私も好きです」

小さな店の中には所狭しとフィギュアやプラモデル、ポスターが配置されている。何でもこれらは全てここにくる客が置いていった物らしい。
ここに来る客は皆オタク街で手に入れた戦利品を手に、客同士が語り合う場なのだ。
そしてメイドさんも一緒にその戦利品を見て楽しそうに語らいあっている。

「あらイチさん。お久しぶりですね。とうとう我が弟子にも彼女ができましたか。私も歳を取るはずですね」

「職場の後輩です。それにメイド長はずっとお若いですよ。20代にしか見えません」

「ふふっお世辞が上手くなりましたね」

メイド長と呼ばれるこの人はここの店長兼料理長の完璧超人だ。
正直この人が何歳かなんて全くわからないし聞く気も無い。
結構怖いんだぞこの人。

「弟子?」

「ああ。俺は学生の頃ここで調理のバイトをしていたんだ。俺の料理はばあちゃんとメイド長から教わったんだ。料理の腕に関してはいまだにメイド長には敵わないよ」

「褒めても何も出ませんよっ。メニューはいつものでいいかしら?彼女さんは?」

だから彼女じゃないって。

「わ~いい匂いですね!美味しそう!」

俺はメイド長特製オムライス、泉はハンバーグステーキだ。

「ん~口の中に肉汁が溢れて幸せです~」

本当に美味しそうに食うやつだな。

俺もオムライスを口に運ぶ。昔と変わらない美味しさだ。
ふわふわとした卵にトマトの酸味と旨味の効いたチキンライスが相性抜群だ。

就職してから何となく足が遠のいていたがこれからもたまに食べに来よう。

「ところでイチさん。あなたこのあと何かご予定ありますか?」

急に真剣な眼差しで俺に声おかけてくるメイド長。

「まぁ特に予定はないですけど。俺に何か用ですか店長?」

「もうあなたはここの従業員ではないのですから、店長なんてよそよそしい呼び方はやめてください。今後私のことはレナと呼んでください。レナお姉ちゃんでもいいですよ♪」

「わかりましたレナさん」

相変わらずこの人は本気か冗談かよくわからないことををよく言う。でも姉がいたらこんな人だったらいいなと素直に思う。
頼り甲斐があり、綺麗でそして優しい。俺だけじゃなくてお客さん、従業員みんなから慕われている。

「あ、あの…私もついていっていいですか?」

「ええ、もちろん」

何でも俺たちが店を訪れることが女の勘とやらでわかっていたらしく、今日は早仕舞いすると決めていたらしい。
女の勘ってそんなピンポイントで効くものなのか?

店を閉めたあと俺たちは電車に乗りある場所に向かう。
ここは…



俺が何度か訪れたことのある怪しい老婆のいる質屋だ。

「おや。いらっしゃい。今日はまた珍しいお客を連れてきたねぇ」

「お久しぶりです女王。お元気そうで何よりです」




へ?女王?王妃?クイーン?この質屋の婆さんが?
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