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キスを集めるキミと スキを編むボクと

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 僕と日奈稀が出逢ったのは小学二年生のクラス替えで、クラスの誰よりも、女の子よりも小さな男の子だった。
 みんなが校庭に出てサッカーや鬼ごっこをして遊ぶ中、日奈稀はひとりで教室で本を読んでいた。引込み思案なのか誰かから声をかけられても俯くだけで、積極的に誰かと関わろうとはしていなかった。
 そのうちみんなは飽きて声もかけなくなったけど、僕は日奈稀と友だちになりたいと思ったから声をかけ続けた。ちらっと見えた日奈稀が読んでいた本が小学二年生にしては文字が多く大人びて見えたのと、表紙や挿絵から想像するに冒険物ばかりだったからだ。
 僕も冒険物は好きで、例の場所も日奈稀なら連れて行ってもいいかもしれない、そして日奈稀とだったら色んな楽しい事ができるのではないかと思ったのだ。
 なんとか日奈稀を冒険に連れ出す事に成功して、僕たちは友だちであり冒険仲間になったんだ。

 その後も日奈稀は僕以外とは関わろうとはせず、他に友だちと言える人もいなかったけれど、中学に上がった頃だっただろうか誰かが日奈稀の事を「王子さまみたい」って言ったそのひと言で周りの日奈稀を見る目が変わってしまった。

 そうだ、その頃から僕は日奈稀と冒険するのを止めたんだ……。
 何の取り柄もない僕とは違って日奈稀は何でもできるしイケメンで、そんなのモテるに決まってる。
 日奈・・稀という名前の通り生まれたての雛よろしく僕の後をついて回っていたせいで僕の付属品みたいに思われていただけで、本当は違うのだ。

 あの日のお姫さまの面影を残しながらも今では誰の目から見ても恰好いい……みんなの・・・・王子さまなのだ。


 日奈稀が声をかけられればすぐにキスに応じてしまうのは、別に日奈稀が軽いとか遊んでいるというわけではない。キスをするのも今のところ誘われたらで、日奈稀から誘う事はないし同じ人と二回目はない。あくまでもキスを受け入れているのは『スキ』を探す為で、キスした相手がそうでないならそれ以上深い関係になる事はないのだ。

 周りもその辺は理解しているのかしつこく付きまとったり、二度目を求めたりもしなかった。(僕の知る限りでは)
 複数人で押し寄せる事もないし、妙に統率がとれていると思う。
 日奈稀が知ってるかは知らないがファンクラブがあるという話もあるし、もしかしたらその人たちが裏で何かしているのかも?

 まぁそれはいいとして、日奈稀はそれからも僕にいつも纏わりついていて仕方がない時以外は離れようとしない。だからキスは必然的に僕の目の前、もしくは背後で行われる事になって、それが僕は嫌でいやでしょうがなかった。僕はいつも目を瞑ってしまうから実際目にした事はないんだけど――。

 リップ音を聞く度にキスをしているという事実を嫌でも突きつけられているわけで、いっそのこと僕の耳が聞こえなければ――なんて罰当たりな事まで考えたりした。本当に耳の聞こえない人からしたらとんでもない話だけど、それでも僕はそう思わずにはいられなかったんだ。







 そんな音なら僕の世界に『音』なんか、要らない。

 ――――消えてしまえ。



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