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飼い主じゃなくて
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部屋を出ると霧島は本当に隣りの部屋で、鍵を開けて俺を部屋に招き入れた。
すると黒い塊が俺の胸めがけて跳んできた。
突然のことでびっくりしたがなんとか受け止めることができた。
「にゃ~」
「え? 猫?」
「源三郎ーただいまー! 俺の大好きな源二郎さんだよ! 嬉しいねー!」
俺ごと源三郎(猫)を抱きしめながら言った。
「源三郎って――この猫の事なの?」
「そうですよー。写真も見せたじゃないですかー」
俺の言葉に少しすねたように口をとがらせて言った。
写真……見てなかった……。
だって弟だと思ってたし、見たくなかったんだ。
「なん……で、源三郎……?」
「先輩からお名前いただきました! 源二郎さんの息子で源三郎です!」
「息子……って。息子っていうならお前と俺のって……あ……! ちがっ」
慌てて取り消したがそれを霧島は許さなかった。
とても嬉しそうに。
「確かにそうですね! 先輩の弟さんの事もありますし。源二郎と琉斗……うーん。源斗……源斗にしましょう! 今日からお前は源斗だぞー!」
「にゃーん」
「そうかそうか嬉しいか源斗ー!」
「お前……俺の事本当に好き……なのな」
「はいっ! 俺入社して仕事する機会もろくに与えてもらえず俺の存在意義って何だろう? って毎日思ってました。みなさん俺の仕事を奪うし飲みに行こうとか付き合いたいとかそういう事ばっかりで。俺は仕事をしたくて会社に入ったんです。先輩だけだったんですよ。俺を使えるように同じ事でもわからなければ何度も何度も丁寧に教えてくださって、ミスってもいいからって自力で好きなようにさせてくださって、さりげなくフォローもしてくださった。本当の意味で俺の事を見てくれたのは先輩だけでした」
「それ……は、俺がうちにひっぱったから――」
「前の部署だって新人たちの山から俺を部長がひっぱったと聞きました。だけど実際は俺はお飾りの人形のような扱いで……。俺は顔がいいだけの人形でしょうか?」
「ち……違うぞ! お前は誰よりも努力してた! 分からないなら分からないなりに分からない事をそのままにせずちゃんと確認をとろうとしていたし、お前はいつも一生懸命仕事してた! 顔とかスタイルとか関係ない! お前が今とちがう顔だったとしても俺は……! 俺はお前を尊敬するし……好きだよ」
「先輩……っ!」
俺の唇に湿った暖かくて柔らかいものが触れた。
霧島が俺の唇を舐めたのだ。
本当まるで犬だな。
「先輩……! 大好きです! 飼い主として俺の事最後まで飼ってください!」
「…………」
返事ができないでいると霧島は眉根を寄せた。
「ダメ……ですか……?」
「というか俺ってお前の飼い主なの? 俺は飼い主より恋人がいいんだけど?」
あの日の俺が霧島を拾った時のように不適に笑って見せると、霧島の瞳は膜を張って光り熱がこもっているのが分かった。
「先輩! 俺恋人は無理だって諦めてて……だから飼い主って……! 嬉しいです! 恋人になってください!」
俺は小さく笑ってこくんと頷いた。
そうして俺は飼い主から恋人になった。
-終-
すると黒い塊が俺の胸めがけて跳んできた。
突然のことでびっくりしたがなんとか受け止めることができた。
「にゃ~」
「え? 猫?」
「源三郎ーただいまー! 俺の大好きな源二郎さんだよ! 嬉しいねー!」
俺ごと源三郎(猫)を抱きしめながら言った。
「源三郎って――この猫の事なの?」
「そうですよー。写真も見せたじゃないですかー」
俺の言葉に少しすねたように口をとがらせて言った。
写真……見てなかった……。
だって弟だと思ってたし、見たくなかったんだ。
「なん……で、源三郎……?」
「先輩からお名前いただきました! 源二郎さんの息子で源三郎です!」
「息子……って。息子っていうならお前と俺のって……あ……! ちがっ」
慌てて取り消したがそれを霧島は許さなかった。
とても嬉しそうに。
「確かにそうですね! 先輩の弟さんの事もありますし。源二郎と琉斗……うーん。源斗……源斗にしましょう! 今日からお前は源斗だぞー!」
「にゃーん」
「そうかそうか嬉しいか源斗ー!」
「お前……俺の事本当に好き……なのな」
「はいっ! 俺入社して仕事する機会もろくに与えてもらえず俺の存在意義って何だろう? って毎日思ってました。みなさん俺の仕事を奪うし飲みに行こうとか付き合いたいとかそういう事ばっかりで。俺は仕事をしたくて会社に入ったんです。先輩だけだったんですよ。俺を使えるように同じ事でもわからなければ何度も何度も丁寧に教えてくださって、ミスってもいいからって自力で好きなようにさせてくださって、さりげなくフォローもしてくださった。本当の意味で俺の事を見てくれたのは先輩だけでした」
「それ……は、俺がうちにひっぱったから――」
「前の部署だって新人たちの山から俺を部長がひっぱったと聞きました。だけど実際は俺はお飾りの人形のような扱いで……。俺は顔がいいだけの人形でしょうか?」
「ち……違うぞ! お前は誰よりも努力してた! 分からないなら分からないなりに分からない事をそのままにせずちゃんと確認をとろうとしていたし、お前はいつも一生懸命仕事してた! 顔とかスタイルとか関係ない! お前が今とちがう顔だったとしても俺は……! 俺はお前を尊敬するし……好きだよ」
「先輩……っ!」
俺の唇に湿った暖かくて柔らかいものが触れた。
霧島が俺の唇を舐めたのだ。
本当まるで犬だな。
「先輩……! 大好きです! 飼い主として俺の事最後まで飼ってください!」
「…………」
返事ができないでいると霧島は眉根を寄せた。
「ダメ……ですか……?」
「というか俺ってお前の飼い主なの? 俺は飼い主より恋人がいいんだけど?」
あの日の俺が霧島を拾った時のように不適に笑って見せると、霧島の瞳は膜を張って光り熱がこもっているのが分かった。
「先輩! 俺恋人は無理だって諦めてて……だから飼い主って……! 嬉しいです! 恋人になってください!」
俺は小さく笑ってこくんと頷いた。
そうして俺は飼い主から恋人になった。
-終-
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