申し訳ございません。あいにく先約がございまして。

ハリネズミ

文字の大きさ
21 / 22
三木志朗の受難

(5)

しおりを挟む
諦めたはずの二度目の恋。
俺は未練がましく気が付けば志摩を目で追っていた。

このままでは仕事にならない。
気持ちを切り替える為に、休憩と称して屋上に上りたばこをくゆらせる。

情けないな…。
俺はもっと物分かりのいい性格だと思っていた。
日下の時は辛く悲しかったけどそれはいずれ時間が解決してくれる類の物だ。
しかし、今のこの気持は少し違っていた。いくら時間が経過したとしてもこの痛みは癒える気がしない。

出来上がった関係を壊すべきじゃないなんて恰好つけた事思ってたくせに志摩の事を諦める事が出来ないでいる。
「あの日俺たちキスしましたよね」って言ってしまいたくなる。
志摩をあの男から奪って、あの男より愛して、あの男より大事にして、あの男より…。

あぁ、もう末期だ。

吐き出す煙と一緒に志摩への気持ちも出て行ってしまえばいいのに。

空に消えていく煙を見ながらそう思った。




*****
「三木」
振り返ると志摩が立っていた。
「し…志摩さんも休憩、ですか?」
口角を上げ不自然にならないような笑顔を作る。

志摩はそれを見て眉間に皺を寄せた。

あぁ、この人にはバレちゃうんだったか。
今度は隠す事なく溜め息をつく。

「悩みでもあるのか?私でよければ相談にのるぞ?」
無表情のはずなのに少し心配そうに見える。
そう見えるのは俺の願望か。

「いえ…。ちょっと疲れただけですよ」
無理に笑う事はしないが口では嘘をつく。
認めなければ灰色で疑わしくあっても真実にはならないから。

「先日私は、お前は気持ちを隠すのがうまい、と言ったな。私以外気づいていない、とも」
「はい…」
「それは、私もそうだからだ。私は気持ちを隠すのがお前よりもうまい」
「?」

何を言いたいのか戸惑っていると、
志摩の綺麗な顔が近づいてきて、あ!と思った時には唇が俺の唇に触れていた。
「え」

突然の事に硬直する俺。
無表情のはずの志摩は頬を薄っすらと朱に染めはにかむように笑った。

どきどきどきどきどき。
心臓が煩くて何も聞こえない。

志摩の唇が「す・き・だ」と動く。
ぶわりと顔が真っ赤になるのが分かった。

「あ…あの……あの……!」
「三木は、私の事…どう思ってる?」
「いや、だって…静流くん…は?」

一瞬ぽかんとした顔をする志摩。
志摩のその反応に俺の方がぽかんとなる。

「しずは、静流は弟だけど…?私との付き合いに弟の許可が……?」
「お…とう、と…?」
「年は離れているが血の繋がった弟だ。あ…私を送ってくれた時に何か失礼な事でも?あいつはちょっとイタズラ好きで困る」
「あ、いえ。何も」
弟…。
じゃあこの恋は終わらせなくていいのか。
「あは…」

滲んできた涙を誤魔化すように声を上げて笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

【完結】逆転シンデレラ〜かわいい「姫」は、俺(王子)を甘やかしたいスパダリだった〜

粗々木くうね
BL
「本当はずっと、お姫様になりたかったんだ……」 周りから「王子様」と持て囃され、知らず知らずのうちにその役割を演じてきた大学二年生の王子 光希(おうじ みつき)。 しかし彼の本当の願いは、誰かを愛す“王子”ではなく、誰かに愛される“お姫様”になることだった。 そんな光希の前に現れたのは、学科のアイドルで「姫」と呼ばれる、かわいらしい同級生・姫川 楓(ひめかわ かえで)。 彼が光希に告げたのは、予想もしない言葉だった──。 「僕に……愛されてみない?」 “姫”の顔をした“王子様”に、心も身体も解きほぐされていく──。 “王子”が“お姫様”になる、逆転シンデレラストーリー。 【登場人物】 姫川 楓(ひめかわ かえで) ・ポジション…攻め ・3月3日生まれ 19歳 ・大学で建築を学ぶ2回生 ・身長170cm ・髪型:ミディアムショートにやわらかミルクティーブラウンカラー。ゆるいパーマをかけている ・目元:たれ目 ・下に2人妹がいる。長男。 ・人懐っこくて愛嬌がある。一見不真面目に見えるが、勉学に対して真面目に取り組んでいて要領もよく優秀。 ・可愛いものが好き。女友達が多いが男友達ともうまくやってる。 ・おしゃれが大好き。ネイルもカラフル。 ・王子とセットで「建築学科の姫」と呼ばれている ・かわいい見た目でペニスが大きい 王子 光希(おうじ みつき) ・ポジション…受け ・5月5日生まれ 20歳 ・大学で建築を学ぶ2回生 ・身長178cm ・髪型:センターパートのラフショート。ダークトーンのアッシュグレー ・目元:切れ長 ・空気が読める。一軍男子。学業もスポーツも割とよくできる。 ・上に姉と兄がいる。末っ子。 ・姫川とセットで「建築学科の王子」と呼ばれている ・「かっこいい・頼れる王子」像を求められるので、自然と演じて生きてきた。本当は甘えたいし愛されたい。家族には甘えられる。

嫌いなアイツと一緒に○○しないと出れない部屋に閉じ込められたのだが?!

海野(サブ)
BL
騎士の【ライアン】は指名手配されていた男が作り出した魔術にで作り出した○○しないと出れない部屋に自分が嫌っている【シリウス】と一緒に閉じ込められた。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...