花に酔う

ハリネズミ

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甘い夢を見て S

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またあの夢だ。

中学の時高熱を出して数日寝込んでしまった事があるが、その辺の記憶が曖昧でよく覚えていない。
あの日未来が家に来て…本を―――。

思い出そうとするといつもズキズキと頭が痛んで思い出す事ができない。
未来に訊いてみても本を借りてそのまま帰ったって言うだけだ。
絶対にあの日何かがあったと思うのに、未来の返事にほっとしている自分もいて。
僕はあの日の事を思い出したくない……?

両親は首にひどい怪我を負って、その怪我のせいで高熱が続いて記憶が混濁してしまったのだろうと言う。首の怪我は酷い跡になっているので決して見ないようにと言われ処置は全て両親がやってくれた。
今も残る傷跡が怖くて三年経っても自分で確認する事はできなかった。

両親の説明と未来の話と矛盾する点はひとつもない。
ただ僕の勘が何かおかしいって思うだけ。

あれから毎日のように夢に見るのは多分あの日の事だと思うから、思い出さなきゃって思うのに―――本当の事を知るのが怖くて現状を受け入れてしまっていた。


夢に見るのは誰かの温もり。
僕の事を求める甘い声。
夢の中で必死に手を伸ばすのに捕まえる事はできない。
あの人は誰?
何で僕の事をあんなに切ない声で呼ぶの?

目が覚めるといつも頬には涙の跡がいくつも残る。
夢の中のあの人は真っ黒なクレヨンでぐるぐると顔を塗りつぶしたみたいになっていて、誰なのか分からない。

僕が好きなのは―――……なのに、あの人は誰…?
あの人は……じゃないのに、どうしてこんなに心が痛いの?
切なくて苦しくて…泣きたくなる―――。


*****
今日は未来の友人から呼び出されていた。
確か高杉たかすぎくん。未来の友だちでβだ。
一人で来てって事だったけど何の用かな?
未来も一緒だったらよかったのに。
何となく未来に内緒でっていうのが引っかかって、未来にメールで知らせておく事にした。
名前くらいしか知らないヤツより未来の事は信じられるし、未来が大切だから。こうする事は僕にとっていたって普通の事だった。



待ち合わせ場所へ行くと、そこには女の子が一人いるだけだった。

「あれ…?高杉くんは…?」

「ごめんなさい。私が呼んでもらったの。私、御厨くんの事が好きなの」

上目遣いでそう言うこの子は多分Ωだろう。
上気した頬に潤んだ瞳。
――ヒートを起こしかけている…?

僕はαだというのにΩのフェロモンが分からない。
だから目の前でヒートを起こされても何も感じない。
つられてラットを起こすなんて事はないんだ。
これまでだってこういう事は何度もあった。
だけど僕にはキミたちの武器は通用しないんだ。
こういう手を使ってまでもαを捕まえようとするΩを軽蔑する。
僕はどんなに手に入れようと思っても好きな相手にこんな手だけは使いたくないし、できない。


僕は少しだけ眉を顰め、そのまま立ち去ろうとした。
だけどそこに未来が来てしまった。
いくらβでもΩのヒート中のフェロモンにあてらてしまうかもしれない。
二人を今すぐ離さなくては―――。

未来がΩにしまう…!
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