リナ・セレネーレの物語

桜井あこ

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一年生

新入生歓迎会

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さて、次はどうすればーー。

「すいませーん! みんないるよね? ちょっと来てー!」
「ん?」

誰だろう。寮の部屋が分からないのかな。
ドアを開けると、そこには最初に出会ったエレナ先輩がいた。

「今から寮生の挨拶を始めるから、みんなついてきてくれる? まだ荷物運んでないとかなら待つよ」
「あ、えーっと・・・」

みんなの方を振り返ると、みんなは大丈夫と言うようにして首を横に振った。

「大丈夫です」
「そう? じゃあ行こっか。寮の歓談部屋に集合」

エレナ先輩の後ろを歩き、私たちは進んでいった。

○○○○○○○○○○

「エレナー! その子たちで全員?」
「うん、これで新入生全員一。そっちは?」
「こっちも揃った」
「了解。じゃ、始めますか」

私たちは他の新入生の子たちと歓談部屋の中心に座らされた。
今からなにをするんだろう。
するとエレナ先輩が、手をパンパンッと叩いた。
瞬く間にキレイな緑のハトが現れ私たちの周りを飛び回る。

「それでは、新入生歓迎会を始めまーす!」

エレナ先輩の声に合わせて、他の先輩たちが拍手をした。

「ようこそフリーデンへ! ここは、“平和と努力”を信条とする二番目に古い寮です。私はフリーデンの寮長を務める、エレナ・ハーレ・ロクサーネ。よろしくねー♪」

そういえば別れるときに寮長がどうのこうの言ってたな。

「はじめまして、副寮長を務めています。エレノア・アビゲイル・モーレンソンです。みんなの寮生活が充実するように頑張ります。分からないことがあったら聞いてね」

ウェーブがかった金髪のキレイな先輩。
この人がエレノア先輩。エレナ先輩を引っ張ってた。
(どんな覚え方だよ)
副長なんてあるんだ。じゃあこの二人は六年生なのかな。

「本日は先輩たちの自己紹介や、新入生の紹介もしてもらいます。寮の説明なんかが終わったら、みんなでお菓子とか食べながらビンゴゲーム! 当たったらプレゼントがランダムでもらえるよー★」
「最初は先の自己紹介から! じゃあ~・・・・・・二年生の子から、どうぞ」
「えー私たちからですかー?」

ブーブー言っているが、先輩のひとりが前の方へ来る。

「ジェシカ・デサン・カンターラーです。特技はダンスです」
「おおスゴい特技~。では次の子!」
「ミレイ・ジューン・ヒューズです。特技はピアノです。みんなよろしくね」
「いいねぇ~、次の子!」
「オリバー・テフラ・バロンです。特技は剣技です」
「彼は将来騎士団に入りたいんだってさ~」

エレナ先輩たちがちょくちょく口を挟みつつ、他の上級生の紹介を終えた。

「次は新入生!」

ビシッとエレノア先輩が指差す場所には・・・・・・私。

「えぇ! 私!?」
「絶対そうでしょほら早く!」

リリーちゃんと小声で話し、私は緊張しながら前に出る。
顔を上げたら、ワクワクした顔の先輩たち。
ひぃいぃいいいぃい無理ー!
産まれたての子鹿のようにガタガタと震える。

「あのー・・・」

いきなり声がした。声の主はリリーちゃんだ。
ん? なーにとエレナ先輩が尋ねる。

「私ひとりで自己紹介は緊張するので、二人一組でやってもいいですか?」
「もちろんいいわよ~」

じゃあ、とおもむろに立って私の隣まで来た。

「私はリリー・メアリー・ラズベリーです。よろしくお願いします」

リリーちゃんがお辞儀をする。一瞬呆気にとられたけど、私もしなきゃ。

「リナ・ベル・セレネーレです。よろしくお願いします」

彼女にならい、私もお辞儀をした。

「はーい! 最初は仲良しコンビのリリーちゃんリナちゃんがやってくれました~! この二人は寮の部屋も一緒らしいよ~」
「へぇそうなの?」
「入ってすぐ友達ができるなんてすごいな!」

みんなの空気は穏やかだ。

「ありがと、リリーちゃん」

コソッと話すと、彼女はパチンとウインクをした。

「じゃあ次の二人~」

新入生の子は知り合いではなくてもひとりですることのない安心感からか、ホッとしたように息をついていた。

○○○○○○○○○○

「では私、副寮長のエレノアがこの寮の説明をします」

エレノア先輩が指を鳴らすと黒板が音を立てながら現れる。

「どの家も基本的な構造は同じ。寮に入るときには後で配る寮証をかざさなくてはならないし、失くしたらもう二度と寮に入室できません。管理気をつけてね」

再発行とかできないんだ。絶対しっかり管理しよう。失くしたくない。

「そして、家のものを壊さない! これ大事よ。四つの寮に意志があって、寮が嫌がることをしたら寮証を持っていても入れてくれません」

寮に意志なんてあるんだ。ちょっと信じられない。

「朝にあいさつをしたら言葉じゃないかもだけど必ず返事をくれるの。他の寮に入る機会があったらその家名を言って、『おじゃまします。フリーデン寮の者です』って挨拶をしてください。家にだってプライドがあるんだから」

確かに。意志があるならプライドもある。

「そして寮にお願いして部屋の大きさを変えることもできる。祝い事とか、パーティーとかがあったりしたらそれ用に部屋を変えてくれるのよ。たまに寮がイタズラしてくることもあるけど、それは寮に信頼されてるってことだから。寮に信じてもらえたら寮の秘密について教えてもらうことができるかも・・・・・・」

え。寮の秘密?なにそれめちゃくちゃ気になるんですけど。

「まぁ、寮についての説明はこんな感じ。今から寮証配りまーす」

○○○○○○○○○○

そして自己紹介も寮の説明も無事終わり。

「それでは、ピンゴゲームをはじめます!」

木の机には美味しそうな料理が並べられて、私のお腹が早く入れると催促してきた。

「みんな好きな料理を食べてね」

木のお皿とフォークを手に、私たちは早速自分たちが食べたい料理をお皿にのせた。
私は大好物の大豚のクーラオロウをズプリと突き刺す。
大豚と言うのは、その名の通りでっかい豚だ。
普段は温厚で危害を加えることはないらしいが、攻撃をしたら相手の身が朽ちるまで突進したり噛みついたりするらしい。
それを考えるとちょっと怖い。

「リリーちゃんはなに取ったの?」
「私は踊り鳥の酢漬け。美味しいよ」
「そうなんだ」

踊り鳥は自分が楽しいときも悲しいときも、とにかく踊る鳥だ。
攻撃するときは気息奄奄きそくえんえんの踊りをするらしい。その踊りを見たものは体調を必ず崩すとか。
でも踊り鳥ってなんだかダジャレみたいで、少しクスッとくる。

「次の番号七~! ビンゴまたはリーチの人いる?」

リーチの人は三人いるけど、ビンゴと言っている人はまだいない。

「リリーちゃんどう?」
「私あと一個でリーチなんだけどなぁ~」
「私あと四個だよ」
「神様味方して」

神に頼るリリーちゃん。手を祈りの形にしていた。
私はさっき神に祈って人落ちてきたからな。もうしない。

「次は九!」
「あー違うー」
「私ビンゴだ!」

リリーちゃんがうめき、フランメちゃんが嬉しそうに手を上げる。

「おっフランメちゃん最初のビンゴだね~、どの包みにする?」

エレナ先輩の手には青と白のストライプの包みか赤色の包みか黄色と緑が水玉模様になっている包みか。
魔法で何個もふよふよ浮かせている。

「ん~じゃあ、コレ!」

彼女は紫色の包みを手に取った。

「オッケーそれね。部屋に帰ったら開けるんだよ?」
「分かりました!」

彼女は満足げな顔で元の位置に戻った。

「えー次の番号は~六!」
「私リーチだ」

リリーちゃんが立つ。
もうひとりビンゴが出たようで、その子はオレンジと赤の包みを選んだ。

「次は一四+二!」
「やったビンゴ」

リリーちゃんが小さくつぶやき、緑と赤の包みををもらった。
私はリーチになるまで残り三つ。
プレゼント、もらえるかな。

「次は三!」
「俺リーチだ!」

先輩が嬉しそうに立つ。

「さーあどんどんプレゼントはなくなっていきますよ。・・・二十ー!」

今度は私の紙にある数字で、私はその数字を指で潰す。
あと二個でリーチだ。

「おっいないか~。次は1!」
「イエーイ私ビンゴ!」

エレノア先輩がガッツポーズをする。みんなお茶目で楽しい。

「エレノアどれにする?」
「えーじゃあ黄緑!」

黄緑の包みを手にしたエレノア先輩は、めちゃくちゃ笑顔だった。

「残りプレゼントは十二個!さて次は~七十ニ!」

よし、またひとつ減った。

「今度もおりませんね。八!」

立ち上がる者はおらず、当たった人はいないようだ。

「あれ、ホントにいないぞ? 二十四!」

今回もビンゴの人はいない。私もまだひとつ残っている。

「え~十八!」

これでリーチだ。

「リナちゃんリーチか。よかった人いた」

あと少しでビンゴだ。ここまで来たら私もプレゼントが欲しい。

「次は五十五!」
「あ、僕ビンゴだ」

金髪の男の先輩が立った。

「オリバー、よかったね当たって」
「そうかも」

オリバー先輩は水色の包みを手にする。

「では~四十ー!」
「「「ビンゴ!」」」

三人の声が重なる。
声の主は私と、リンダちゃんとゲイルくん。

「すごーい三人一気に! しかも新入生」
「なんていう奇跡。プレゼントはどれにする~?」
「えっとじゃあ・・・・・・赤いやつで」
「私は水玉模様ので」
「俺は白色!」

私が赤い包みを、リンダちゃんが水玉模様の包みを、ゲイルくんが白色の包みを選んだ。

「あと八個だよ。みんな頑張れ~」 

最初は緊張していたけれど、上手くやれそうな気がした。
こうして楽しい新入生歓迎会は終わり、私たちは寮の部屋へと帰った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新入生歓迎会! こんなんあったら楽しそうだな~と思って書きました。
みんなエンジョイしてて可愛いですね。
次回から金髪男子フィンが登場しますよ、お楽しみに。
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