19 / 23
一年生
嵐の前に
しおりを挟む
「美味しかったわね」
「ヴェズラさんに聞いてよかった~」
あの後は探索をしたりお土産を買ったりして忙しかった。
途中で買い食いをして写真を撮ってなど、普段はできないことをたくさんしていけたと思う。
明日は英雄の窟へ行くので、早めに帰って疲れを癒そうと思い、今はもう宿に戻っている。
ここは温泉も有名らしく、旅人が疲れをほぐすのにはもってこいらしい。
我らがオシャレ番長はそこへワクワクした様子で行き、リリーは外で庭師さんとしゃべっていて、イケメン共は優雅に本を読んでいた。
各々の時間を心地よく過ごしていると、嵐は突然やってきた。
「たっのも~!」
扉がばしーんと音を立てる。
え、大丈夫? 部屋ぶっ壊れてない?
思わぬ事態に逆に冷静になる。
そこにいるのは外ハネの銀髪、やんちゃに笑う口元。服が泥だらけ、というほどではないが薄汚れている。
「ーーゲイル? 何してるの」
リリーが呆れたようにつぶやく。
王子もフィンさんも似たような表情をしているから、きっと同じことを思っているはずだ。
「いや? もう部屋戻ってるかもしれねぇなって」
「だからって乱暴にドアを開けない」
「へーい」
「リリーもしかしてお母さんだったりする?」
「じゃあリナがお父さんね」
「え」
「私は娘になろっかなー」
「え」
「私はゲイルの幼馴染がいい!」
「え」
「大丈夫リナさっきからえしか言ってないよ」
「誰のせいよ!」
「リナのせい?」
「リリーのせいよ」
あぁもう話が脱線してる。
結局ゲイル何しにきたの? と無理矢理話を戻した。
「俺このまま話進まないのかと思った」
なんかごめん。
で? 庭師さんと別れベットに腰を落ち着けたリリーが話を促した。
「実はよ、先生たちが話してたの聞いちゃったんだよ」
「なになに? 怖い話?」
私はワクワクして身を乗り出した。
「ん~。ある意味怖いって感じだな、あれは」
あ、あんまり怖くなさそうな話題だな。
「今日の夜に嵐が来るかもしれねえんだってよ。今夜肝試しするだろ? だからやめた方がいいのかどうとか」
「あ~そういうことね」
私はこの前の放課後を思い出す。
「えーっと、今日は宿泊学習での夜にする親睦会の内容を決めたいと思います」
実行委員の子が黒板に字を書く。
前に集計をしていたもので上位三組を、さらに絞ってひとつに決めるらしい。
黒板には、
『1・肝試し
2・ドライフラワー作り
3・営火 』
の三つが書かれていた。
肝試しは男子の票が多そうだ。
そして至極真面目で違反も何もできない論議を交わしーー・・・・・・。
営火をし、順番に肝試しに行く。というものになった。
そこまでは良かったのだが肝試しを誰と、何人と行くのか手で揉め、順番は何番にするか揉め、ドライフラワー派からの批判で揉め。
とにかく入り乱れた時間だったのだ。
「何時からだっけ」
「ちょっと待って~・・・・・・十九時から」
「で、嵐はいつ来るって?」
「いや、まだ確証はないらしい」
「なるほど」
山の天気なんて気まぐれだもんな。
「それ、詳しく調べようか?」
ん? この声の主はーー・・・・・・。
「フィンさん?」
赤い目を細く光らせていて、その手には水晶玉が握られていた。
それは一体なんだろう。見たことがない。
私の考えを察したのか「これはね、」と説明をしてくれた。
これは人魚の涙という種類の水晶で、その水晶に知りたいことを聞けば、水晶が光り輝き教えてくれるらしい。この水晶の特性は水の中に入ると空気の泡が持ち主を包んでくれるという。
けれど、邪な気持ちで質問をしたら水晶が濁り二度と使えなくなるのだ。
興味深い。そもそも水晶に種類があるということに驚きだ。
「それじゃ早速やろうか」
フィンさんの目が心なしかキラキラしてる・・・・・。
「Γοργόνα δάκρυα, πες μου τι θέλω」
フィンさんが呪文を紡ぐと共に水晶が輝く。
目に痛い輝き方じゃなくて、逆に目が癒されている感覚だ。
ひとしきり光った後に赤とオレンジが混ざった色が見える。
これは営火っぽい。
笑い声も聞こえる。
すると一気に景色が暗くなった。
小さな白い光が浮かび上がる。
肝試しに行くときに持って行く灯りだ。
ゴオオオと暗闇に吸い込まれるような音がして、思わず肩が震える。
金属を引っ掻くような金切り声みたいなものも聞こえる。
「すごく本格的ね」
「一応あんたも実行委員だったんでしょ? やっぱり魔法でこういうふうにしてるの?」
「いや、俺こんなん知らねぇぞ」
「「ーー・・・・・・え?」」
全員の声が重なった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あけましておめでとうございます。桜井あこです(遅せぇよ)
なんか倦怠期で書くペースが異様に遅くなっておりました。
営火ってキャンプファイヤーのことらしいですよ。
私は自然学習が感染症で行けなくて、夜みんなで学校に集まってキャンプファイヤーをした思い出があります。
肝試しは怖いの無理なので一回も行ったことないです。
「ヴェズラさんに聞いてよかった~」
あの後は探索をしたりお土産を買ったりして忙しかった。
途中で買い食いをして写真を撮ってなど、普段はできないことをたくさんしていけたと思う。
明日は英雄の窟へ行くので、早めに帰って疲れを癒そうと思い、今はもう宿に戻っている。
ここは温泉も有名らしく、旅人が疲れをほぐすのにはもってこいらしい。
我らがオシャレ番長はそこへワクワクした様子で行き、リリーは外で庭師さんとしゃべっていて、イケメン共は優雅に本を読んでいた。
各々の時間を心地よく過ごしていると、嵐は突然やってきた。
「たっのも~!」
扉がばしーんと音を立てる。
え、大丈夫? 部屋ぶっ壊れてない?
思わぬ事態に逆に冷静になる。
そこにいるのは外ハネの銀髪、やんちゃに笑う口元。服が泥だらけ、というほどではないが薄汚れている。
「ーーゲイル? 何してるの」
リリーが呆れたようにつぶやく。
王子もフィンさんも似たような表情をしているから、きっと同じことを思っているはずだ。
「いや? もう部屋戻ってるかもしれねぇなって」
「だからって乱暴にドアを開けない」
「へーい」
「リリーもしかしてお母さんだったりする?」
「じゃあリナがお父さんね」
「え」
「私は娘になろっかなー」
「え」
「私はゲイルの幼馴染がいい!」
「え」
「大丈夫リナさっきからえしか言ってないよ」
「誰のせいよ!」
「リナのせい?」
「リリーのせいよ」
あぁもう話が脱線してる。
結局ゲイル何しにきたの? と無理矢理話を戻した。
「俺このまま話進まないのかと思った」
なんかごめん。
で? 庭師さんと別れベットに腰を落ち着けたリリーが話を促した。
「実はよ、先生たちが話してたの聞いちゃったんだよ」
「なになに? 怖い話?」
私はワクワクして身を乗り出した。
「ん~。ある意味怖いって感じだな、あれは」
あ、あんまり怖くなさそうな話題だな。
「今日の夜に嵐が来るかもしれねえんだってよ。今夜肝試しするだろ? だからやめた方がいいのかどうとか」
「あ~そういうことね」
私はこの前の放課後を思い出す。
「えーっと、今日は宿泊学習での夜にする親睦会の内容を決めたいと思います」
実行委員の子が黒板に字を書く。
前に集計をしていたもので上位三組を、さらに絞ってひとつに決めるらしい。
黒板には、
『1・肝試し
2・ドライフラワー作り
3・営火 』
の三つが書かれていた。
肝試しは男子の票が多そうだ。
そして至極真面目で違反も何もできない論議を交わしーー・・・・・・。
営火をし、順番に肝試しに行く。というものになった。
そこまでは良かったのだが肝試しを誰と、何人と行くのか手で揉め、順番は何番にするか揉め、ドライフラワー派からの批判で揉め。
とにかく入り乱れた時間だったのだ。
「何時からだっけ」
「ちょっと待って~・・・・・・十九時から」
「で、嵐はいつ来るって?」
「いや、まだ確証はないらしい」
「なるほど」
山の天気なんて気まぐれだもんな。
「それ、詳しく調べようか?」
ん? この声の主はーー・・・・・・。
「フィンさん?」
赤い目を細く光らせていて、その手には水晶玉が握られていた。
それは一体なんだろう。見たことがない。
私の考えを察したのか「これはね、」と説明をしてくれた。
これは人魚の涙という種類の水晶で、その水晶に知りたいことを聞けば、水晶が光り輝き教えてくれるらしい。この水晶の特性は水の中に入ると空気の泡が持ち主を包んでくれるという。
けれど、邪な気持ちで質問をしたら水晶が濁り二度と使えなくなるのだ。
興味深い。そもそも水晶に種類があるということに驚きだ。
「それじゃ早速やろうか」
フィンさんの目が心なしかキラキラしてる・・・・・。
「Γοργόνα δάκρυα, πες μου τι θέλω」
フィンさんが呪文を紡ぐと共に水晶が輝く。
目に痛い輝き方じゃなくて、逆に目が癒されている感覚だ。
ひとしきり光った後に赤とオレンジが混ざった色が見える。
これは営火っぽい。
笑い声も聞こえる。
すると一気に景色が暗くなった。
小さな白い光が浮かび上がる。
肝試しに行くときに持って行く灯りだ。
ゴオオオと暗闇に吸い込まれるような音がして、思わず肩が震える。
金属を引っ掻くような金切り声みたいなものも聞こえる。
「すごく本格的ね」
「一応あんたも実行委員だったんでしょ? やっぱり魔法でこういうふうにしてるの?」
「いや、俺こんなん知らねぇぞ」
「「ーー・・・・・・え?」」
全員の声が重なった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あけましておめでとうございます。桜井あこです(遅せぇよ)
なんか倦怠期で書くペースが異様に遅くなっておりました。
営火ってキャンプファイヤーのことらしいですよ。
私は自然学習が感染症で行けなくて、夜みんなで学校に集まってキャンプファイヤーをした思い出があります。
肝試しは怖いの無理なので一回も行ったことないです。
1
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ライバル悪役令嬢に転生したハズがどうしてこうなった!?
だましだまし
ファンタジー
長編サイズだけど文字数的には短編の範囲です。
七歳の誕生日、ロウソクをふうっと吹き消した瞬間私の中に走馬灯が流れた。
え?何これ?私?!
どうやら私、ゲームの中に転生しちゃったっぽい!?
しかも悪役令嬢として出て来た伯爵令嬢じゃないの?
しかし流石伯爵家!使用人にかしずかれ美味しいご馳走に可愛いケーキ…ああ!最高!
ヒロインが出てくるまでまだ時間もあるし令嬢生活を満喫しよう…って毎日過ごしてたら鏡に写るこの巨体はなに!?
悪役とはいえ美少女スチルどこ行った!?
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる