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一年生
束の間
しおりを挟む先生が指パッチンをして出した水の兎に、みんなが歓声を上げる。
「とっても可愛い・・・・・・!」
フランメが目をキラキラさせている。
時折聞こえる叫び声は、それほどまでに肝試しが恐ろしいのだと私たちに植え付けさせ、最初に行っといたほうがよかったかもしれないと営火を囲っている全生徒に思わせた。
帰ってきた子たちは他の子にどれくらい怖かったか教えろだのどんな感じだっただの質問攻めにあっていて少々不憫に見えなくもない。
実行委員の子が班番号を言うたびみんなの顔が青くなる。
私たちの班はまだ呼ばれていない。
どれぐらいの完成度なのか、見てやろうじゃないか。
ーーでも怖いものは怖い。
回ってきたクッキーを頬張った。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
すっかり夜も更け、星々が私の頭の上にある。
幼い頃はずっとこの星を取ろうと必死だった。
こんなに綺麗なものを手に入れられたらどれほどいいのだろうかと幼心にギラギラの野心を燃やしていたことを覚えている。
炎が揺れる先端をぼうっと眺めつつ、幼き記憶に浸った。
「ーーな、リナ」
「ん?」
肩をちょんと遠慮がちに触られた。
「リリー」
「申し訳ないんだけど、私あっちに行ってきてもいい?」
彼女が指差す先は、平民の服を着ているがきらびやかな女子や歩きやすそうだけれど光沢のある服を纏う男子、つまり貴族組。
「あ、実は知り合いがいてーー」
なるほど。
「いいよー」
「ほんとごめん」
「大丈夫、私も星見てたかったし」
一旦じゃあねーと手を振ってリリーを見送った。
「♪~♪~」
花属性のアンナ先生がハープを手に歌を歌う。
とっても心地のいい声で、微睡んだ眠気が襲ってきた。
ぱちぱちと火は燃えるし、ここには耳にいい音しか存在しない。
ゲイルは平民の男子とおちゃらけている。フランメとリンダは美味しそうに串で炙った白いお菓子を食べている。フィンさんはご令嬢たちに囲まれながらにこにこ談笑している。王子はそんなみんなの姿を見て微笑んでいる。リリーはちょうど隠れて見えないけれど知り合いという人と話している。
平和だ。
『次ー三組二はーん』
実行委員の声で、はっと現実に引き戻された。
なんだよ、気持ちよくしてたのに。
リリーも手を振って話していた子と別れ、フィンさんも待って待ってと引き止めるご令嬢を振り払って、とにかく全員集まった。
「それじゃあ行きましょう」
それでは、アダムスを出して。とフィリオリン先生が続ける。
はい。と返事をする。
「「「アダムス・モア」」」
全員の手の上に、柔らかく光る大きな球体が現れた。
これを照明に入り口まで行くらしい。
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土砂降りの雨と雷とともに投稿しております桜井あこです。
最近から暑くてダウンしておりました。
そして気づいたらお気に入り登録が増えておりました!
ありがとうございます皆さま絶対解除しないでくれよな!(急にウザイ)
次回はようやっとの肝試し・・・・・・?
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