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第72話 狼狽のミズキです
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『異世界ではロリ婚は合法です!』原作者、水樹ダイアナこと魔王ミズキは呆然としていた。
今彼女の前にあるのは、自らの作品を元にしたとしか思えない絵画達。
これが現実世界であれば、主人公が差し替えられていなければ・・・
その高いクオリティに彼女は狂喜乱舞したであろう。
だがここは異世界、彼女の『原作』を知る者のいないこの世界で・・・
まるで自らの功績とばかりにこれらの絵画を飾る英雄マユミ・・・
(何が英雄よ・・・とんだ盗作野郎だわ・・・)
こんな事が出来るのは自分と同じく異世界の存在、思い当たるのはマユミだけだ。
絵画には原作終盤のシーンまであった、この事から原作をそれなりに読み込んだ人物なのも伺える。
彼女は自分の読者層をよく理解していた。
女性ファンなどほとんどいないという事も含めて・・・
よくよく考えれば、ひきこもり、ニート、オタク・・・
この手のチート転生者にはろくな人間がいない。
美少女の皮を被ったロリコンのキモオタ・・・それが英雄マユミの正体だ。
なにしろ自分ですら転生でロリ美少女の姿になっているのだ、間違いない。
(何がマユミよ、キモオタの分際で・・・)
何としてでもこの手でマユミを打倒せねばならない。
ミズキがそう誓いを立てた、その時・・・
「ミズキちゃん、こんな所にいたんだ」
「!」
件のマユミがそこにいた、護衛もつけずたった一人で・・・
心配そうにミズキに話しかけるマユミ。
(騙されないわよ!こいつはキモオタ・・・こいつはキモオタ・・・)
だがミズキの中でマユミはキモオタへと変換されていく。
マユミの美少女然とした見た目は、だらしなくキャラTシャツを伸ばした萌豚に脳内変換される。
「なかなか来ないから心配して探しに来たんだけど・・・この絵を見てたんだね」
「・・・はい」
相手をキモオタだと思い込めば身体は自然と一定の距離を保つ。
今ならやれるだろうか・・・不意を突いて全力のイビルレイを放てば・・・
そんな事を考えながらミズキは油断なくタイミングを計る。
そんなミズキの殺気に全く気付いていないのか、マユミは無防備な態勢のまま言葉を続ける。
「たしかにこの絵はすごいよね・・・私、絵とかわからないけど迫力とかそういうのを感じるよ」
「ん、これはマユミ様が描いたのではないのですか?」
「まさか、私にこんな絵が描けるわけないよ」
「・・・」
マユミが嘘をついているようには見えなかった、ならばいったい誰がこの絵を・・・
問い詰めたいが、自分がこの物語を知っている事がバレてしまうのはよくない。
・・・ならば別の切り口から攻めるまで、ミズキは別の質問を投げる。
「でもこれはマユミ様の活躍を描いたものですよね?まるでその場で見ているみたいです」
「うぅ・・・やっぱりそう思うよね・・・」
そう言ってマユミはため息をつく・・・意外な反応だ。
もっと得意げに語りだすのかと思ったが、真逆の反応にミズキは困惑する。
「実はこれ本当は私じゃなくて別の男の人が主人公の物語だったんだけど・・・」
(やっぱり・・・)
マユミのその言葉にミズキは己の予想通りだと確信する。
しかしマユミはなぜここで本当の事を話す気になったのか・・・
「絵描きの人がね、男は描きたくないってなぜか主人公が私になっちゃって・・・」
「へ・・・」
「それでこの出来でしょ?みんな私がやったみたく思っちゃうよね・・・」
「ちょ、ちょっと待って!」
絵師の都合であって、盗作で売名行為をしたわけではないとか・・・
そんな事はもうどうでもよくなった。
この話とマユミの態度が物語っているものは・・・
(それじゃまるで・・・)
マユミが実は英雄ではないかのような・・・
たしかにマユミは英雄と名乗っただけで『力』を見せていない。
「マユミ様って、実は・・・英雄じゃない?」
「あ、大丈夫だよ、私が異世界から来た英雄っていうのは本当だから・・・」
「え」
ミズキを不安にさせまいとそう言ったものの、自信のなさは隠しきれていない。
マユミが戦えるような『力』は未だに目覚めていないのだ。
「魔王に対抗出来るのは私だけ・・・だもんね・・・
もし魔王がまた来ても、ミズキちゃんには手出しさせないから安心して」
その瞳には、確かな意志の力を感じられた。
・・・しかし、それがまたミズキを困惑させる。
マユミは英雄なのか、英雄じゃないのか・・・ミズキの中ではっきりしない。
(わ、わけがわからないわ・・・)
どうもマユミに係わるとミズキは混乱してばかりだ、それはある意味で『天敵』なのかもしれない。
先程まで隙あらばマユミを殺そうと思っていた事など、もうすっかり忘れてしまっていた。
「・・・マユミ、遅い」
マユミ達がなかなか来ないので、ミーアもやってきたようだ。
心なしか不機嫌そうに二人を見ている。
「ごめんミーアちゃん、じゃあ行こっか」
「ん・・・」
・・・ミーアに謝りつつミズキの手を引くマユミ。
マユミに手を引かれるまま、ミズキは進む・・・未だに混乱しているようだ。
マユミは客席の最前列までミズキを連れていき、そこに座らせた。
「じゃあ始めるから、ミズキちゃんはここで見ててね」
いったいこれから何が始まるのか・・・
未だに理解していないミズキだったが、言われた通りにちょこんと席に座る。
「さぁ、今日はミズキちゃんの為に全力で演じるよ」
「マユミ、余計な力が入り過ぎてる・・・落ち着いて」
「あぅ」
そして二人がステージに降り立つ・・・
その時、ミズキの、この世界の運命が大きく変わることになろうとは・・・
当の本人さえ思ってもみなかったのである。
今彼女の前にあるのは、自らの作品を元にしたとしか思えない絵画達。
これが現実世界であれば、主人公が差し替えられていなければ・・・
その高いクオリティに彼女は狂喜乱舞したであろう。
だがここは異世界、彼女の『原作』を知る者のいないこの世界で・・・
まるで自らの功績とばかりにこれらの絵画を飾る英雄マユミ・・・
(何が英雄よ・・・とんだ盗作野郎だわ・・・)
こんな事が出来るのは自分と同じく異世界の存在、思い当たるのはマユミだけだ。
絵画には原作終盤のシーンまであった、この事から原作をそれなりに読み込んだ人物なのも伺える。
彼女は自分の読者層をよく理解していた。
女性ファンなどほとんどいないという事も含めて・・・
よくよく考えれば、ひきこもり、ニート、オタク・・・
この手のチート転生者にはろくな人間がいない。
美少女の皮を被ったロリコンのキモオタ・・・それが英雄マユミの正体だ。
なにしろ自分ですら転生でロリ美少女の姿になっているのだ、間違いない。
(何がマユミよ、キモオタの分際で・・・)
何としてでもこの手でマユミを打倒せねばならない。
ミズキがそう誓いを立てた、その時・・・
「ミズキちゃん、こんな所にいたんだ」
「!」
件のマユミがそこにいた、護衛もつけずたった一人で・・・
心配そうにミズキに話しかけるマユミ。
(騙されないわよ!こいつはキモオタ・・・こいつはキモオタ・・・)
だがミズキの中でマユミはキモオタへと変換されていく。
マユミの美少女然とした見た目は、だらしなくキャラTシャツを伸ばした萌豚に脳内変換される。
「なかなか来ないから心配して探しに来たんだけど・・・この絵を見てたんだね」
「・・・はい」
相手をキモオタだと思い込めば身体は自然と一定の距離を保つ。
今ならやれるだろうか・・・不意を突いて全力のイビルレイを放てば・・・
そんな事を考えながらミズキは油断なくタイミングを計る。
そんなミズキの殺気に全く気付いていないのか、マユミは無防備な態勢のまま言葉を続ける。
「たしかにこの絵はすごいよね・・・私、絵とかわからないけど迫力とかそういうのを感じるよ」
「ん、これはマユミ様が描いたのではないのですか?」
「まさか、私にこんな絵が描けるわけないよ」
「・・・」
マユミが嘘をついているようには見えなかった、ならばいったい誰がこの絵を・・・
問い詰めたいが、自分がこの物語を知っている事がバレてしまうのはよくない。
・・・ならば別の切り口から攻めるまで、ミズキは別の質問を投げる。
「でもこれはマユミ様の活躍を描いたものですよね?まるでその場で見ているみたいです」
「うぅ・・・やっぱりそう思うよね・・・」
そう言ってマユミはため息をつく・・・意外な反応だ。
もっと得意げに語りだすのかと思ったが、真逆の反応にミズキは困惑する。
「実はこれ本当は私じゃなくて別の男の人が主人公の物語だったんだけど・・・」
(やっぱり・・・)
マユミのその言葉にミズキは己の予想通りだと確信する。
しかしマユミはなぜここで本当の事を話す気になったのか・・・
「絵描きの人がね、男は描きたくないってなぜか主人公が私になっちゃって・・・」
「へ・・・」
「それでこの出来でしょ?みんな私がやったみたく思っちゃうよね・・・」
「ちょ、ちょっと待って!」
絵師の都合であって、盗作で売名行為をしたわけではないとか・・・
そんな事はもうどうでもよくなった。
この話とマユミの態度が物語っているものは・・・
(それじゃまるで・・・)
マユミが実は英雄ではないかのような・・・
たしかにマユミは英雄と名乗っただけで『力』を見せていない。
「マユミ様って、実は・・・英雄じゃない?」
「あ、大丈夫だよ、私が異世界から来た英雄っていうのは本当だから・・・」
「え」
ミズキを不安にさせまいとそう言ったものの、自信のなさは隠しきれていない。
マユミが戦えるような『力』は未だに目覚めていないのだ。
「魔王に対抗出来るのは私だけ・・・だもんね・・・
もし魔王がまた来ても、ミズキちゃんには手出しさせないから安心して」
その瞳には、確かな意志の力を感じられた。
・・・しかし、それがまたミズキを困惑させる。
マユミは英雄なのか、英雄じゃないのか・・・ミズキの中ではっきりしない。
(わ、わけがわからないわ・・・)
どうもマユミに係わるとミズキは混乱してばかりだ、それはある意味で『天敵』なのかもしれない。
先程まで隙あらばマユミを殺そうと思っていた事など、もうすっかり忘れてしまっていた。
「・・・マユミ、遅い」
マユミ達がなかなか来ないので、ミーアもやってきたようだ。
心なしか不機嫌そうに二人を見ている。
「ごめんミーアちゃん、じゃあ行こっか」
「ん・・・」
・・・ミーアに謝りつつミズキの手を引くマユミ。
マユミに手を引かれるまま、ミズキは進む・・・未だに混乱しているようだ。
マユミは客席の最前列までミズキを連れていき、そこに座らせた。
「じゃあ始めるから、ミズキちゃんはここで見ててね」
いったいこれから何が始まるのか・・・
未だに理解していないミズキだったが、言われた通りにちょこんと席に座る。
「さぁ、今日はミズキちゃんの為に全力で演じるよ」
「マユミ、余計な力が入り過ぎてる・・・落ち着いて」
「あぅ」
そして二人がステージに降り立つ・・・
その時、ミズキの、この世界の運命が大きく変わることになろうとは・・・
当の本人さえ思ってもみなかったのである。
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