英雄じゃなくて声優です!

榛名

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最終回 英雄じゃなくて声優です

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あの上映から、幾ばくかの時が流れ・・・

「すやすやすや・・・」
「マユミ、そろそろ起きなさい」
「あ・・・おはようナーデ、今部屋に行くね・・・」
「何を寝ぼけているの、しっかりなさい」
「へ・・・」

マユミは眠たい目をこすりながら周囲を見回す。
城の自室・・・にしてはずいぶんと狭く、ベッドも折り畳み式の簡易寝台だ。
すぐ隣にはミーアが、にこにことマユミに微笑みかけてくる。

「マユミ、おはよう」
「あ・・・おはようミーアちゃん」

ようやく目が覚めてきたマユミは、そこが馬車の中であることを思い出した。
先程からカタカタと揺れる感覚は馬車の車輪の物だ。
窓の外に流れていくのは、どこか見覚えのある風景。
マユミ達を乗せた馬車は今、侯爵領グリューエンへ向かっていた。

「はい、じっとしてて・・・」

いつものようにエレスナーデはマユミの顔に化粧を施す。
マユミもそろそろ自分で出来るようになりたいところだが、なかなかやらせてもらえずにいた。
その理由は・・・

「そんな事で国民の支持率が下がったら大変でしょう?」
「や、いくらなんでもそんな・・・」
「国民の支持を集めるのが今のあなたの役目なの、化粧一つも手は抜けないわ」
「それはわかるけど・・・」

その理屈はわかるが、何か釈然としない。
まるで自分がどうしようもなく不器用なのではないかという気になってくるマユミだった。

馬車がカタカタと揺れる中でもエレスナーデの手元が狂うことなく、美少女マユミが完成する。
・・・実の所、馬車の揺れはだいぶ小さい。
皇帝陛下専用の特注品の馬車である事に加えて、街道の整備によるものだ。


ミズキの発案による魔族達を使った街道整備は順調に成果を上げていた。
しっかりと舗装された街道は物資の流通を加速させ、様々な経済効果を生み出していた。
馬車での移動時の快適性が上がったのは、おまけのようなものだ。

帝都ヴァレスを中心に南方、西方の街道の整備が完了。
次は北方への街道だったが・・・冬の積雪により通行が困難になる問題に一石が投じられる。


帝都の北門・・・北方への街道の玄関口に、魔族達が集まっていた。
彼らを乗せた馬車とは別に、工事用の資材等を乗せた馬車が数台続く。
今まさに街道の建設へと旅立つ所だ。
・・・そんな彼らの元に、黒髪の少女が駆け寄っていく・・・ミズキだ。
どうやら彼女に気付いたようで馬車の一団は城門の中程で停止した。

「ミズキ様!」
「ミズキ様だ!」

・・・歓声と共に魔族達がミズキを出迎える。
人間に混ざって暮らすようになったとはいえ、彼らにとっては彼女は今でも魔王なのだ。

「これはミズキ様、ひょっとして我らの見送りに・・・」
「んなわけないでしょ!アンタ達がちゃんと仕事出来るか不安になって確認しに来たのよ」
「確認・・・融雪装置ですか?」
「ん、アレが今回の街道整備のキモなんだから、ミスは許さないわよ」

融雪装置・・・路面の上に等間隔に設置した鉄パイプのような物に火の魔術で熱を通す・・・
凍り付いた積雪を接地面から溶かすことで、除雪を容易に行えるようにする装置だ。
直接火の魔術で雪を解かすには膨大な魔力が必要だが、この装置ならそこまでの魔力を必要としない。
ミズキの生まれ育った北国の一部で使われている道路技術の簡易版とも言うべき代物だった。

「いくら俺達でも、あんな単純な構造を間違えるわけないですって」
「・・・それを間違えそうだから念を押しに来てるのよ、ちゃんと着火点作るのも忘れないでよ」
「・・・ちゃっか・・・てん?って何だっけ?」
「ちゃっかちゃっか音が鳴るってことじゃないか」
「きっとそれだ、お前頭良いな」
「・・・」

盛り上がる魔族達と対照的にミズキの表情に影が落ちる。
無言のまま、ミズキのその手がわなわなと震え・・・

「やっぱりわかってないじゃないの!この無能!馬鹿!役立たず!」

小さな少女に叱られるままに項垂れる大柄な魔族達。
城門を護る兵士達が遠慮気味に声を掛けるまで、彼女のお説教は続いたのであった。


マユミ達を乗せた馬車がグリューエンにたどり着く。
かつて暮らした街並みが今も変わらずに彼女達を迎え入れた。

「この街に来るのも久しぶりだね、なんか懐かしいな・・・みんな元気にしてるかな」
「きっとすぐに会えるわよ」

魔王との闘いが終わったので、スケジュールは緩めに組むことが出来た。
この街には一週間程の滞在が予定されている、『女神の酒樽亭』に足を運ぶ時間もありそうだ。
顔馴染みの人達を思い浮かべ思いを馳せるマユミだったが・・・

「お、マユミちゃんだ、マユミちゃんが来たぞ!」
「マユミちゃーん!」

・・・通りの方に人だかりが出来ていた。
マユミの良く知る常連客達だ。
彼らはマユミが今日到着する事を知ってそこで待ち構えていたのだ。

「みんな・・・」

思わず馬車の窓を開けてマユミは彼らに手を振った。

「おかえり、マユミちゃん」
「ずっと待ってたぜマユミちゃん」

マナーが良いというか、彼らはマユミの乗った馬車が通る道をしっかり空けていた。
おかげで減速することなく馬車は彼らを横切っていく・・・
通り過ぎていく彼らにマユミは最大限の声でそれを伝える。

「ただいま」と・・・

やがて馬車は侯爵の屋敷へと到着した。
主たる侯爵が帝都に移ってずいぶん経つが、手入れの行き届いたその姿はあの頃のままだ。

「・・・帰って来たね」
「ええ、入りましょうマユミ、ミーアちゃん」
「うん」

そう言ってエレスナーデが扉に手を掛けようとしたその時。
ガチャリ・・・と内側から扉が開く。
彼女達の到着した気配を感じたのだろうか・・・あの執事の姿が脳裏をよぎる。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

落ち着いた・・・高い声がマユミ達を出迎えた。

「え・・・」
「あれ・・・」

彼女達を迎えたのはあの老執事ではなく、小さな少女・・・おそらくミーアと同じくらいだろうか。
メイド服を着ていることから察するに、新しく雇われたメイドなのだろう。
機械人形を思わせる正確な所作で、その少女はお辞儀をする。

「そしてようこそマユミ陛下、ミーア様、ご滞在中は我が家と思ってお寛ぎくださいませ」
「ええと・・・あなたは?それにジーブスはどこに?」

見知らぬ少女に軽く驚きつつも、エレスナーデが彼女に問いかける。
するとその少女は・・・

「あひゃっ・・・ふぁじめまして、この屋敷ではただかせでいただいておりまふっ・・・」

先程とはうって変わって棒のようにまっすぐになり、たどたどしく言葉を口にする。

「なまっ、名前は、くりすてんと、申しますっ!どうぞおみしりおきくだひゃい」

・・・ガッチガチに緊張しているのはあきらかだった。

「大丈夫?・・・ええと、クリステンちゃん?」
「は、ひゃい、だいじょうぶですおかまいなく」

三人を出迎えた時の完璧さはどこへやら・・・とても大丈夫そうには見えない。
なんだか見ているこっちが不安になってくる。

「・・・やはりクリスティンにはまだ荷が重すぎましたか」
「ジーブス!」

そんな彼女を見かねたのか、老執事ジーブスが姿を現した。

「彼女はメイド見習いのクリスティン、良い経験になると思い任せてみたのですが、申し訳ありません」
「申し訳ありません!」

執事に倣ってクリスティンが頭を下げる。

「そう、新しくメイドを雇ったのね」
「はい、お嬢様がお気に召しませんのでしたら解雇しますが・・・」

解雇・・・その言葉にクリスティンがピクッと反応する。
さすがにこんなことで解雇は・・・と思ったマユミだが、以前のエレスナーデを思い出す。
侯爵家に近づく女性を信じられず、屋敷から全てのメイドを追い出したエレスナーデ・・・
だが今は・・・

「いいわ、しばらく私に付けなさい」
「ナーデ・・・」

どうやらこの少女が解雇される事はないようだ・・・マユミはホッと胸を撫で下ろした。
老執事の方は・・・どこかにやりとしているような・・・まるで計算通りといった表情を浮かべていた。

「かしこまりました、ではそのように・・・」
「あ、ありがとうございます!」
「クリス、喜ぶのは早いわ、この私は厳しくてよ」
「は、はい!精一杯がんばります!」

喜ぶクリスティンにエレスナーデが冷ややかに釘をさす。
だがマユミはもう気付いていた、彼女がさりげなく愛称で呼び始めた事を・・・

「じゃあ私もクリスちゃんって呼ばせてもらおうかな、よろしくね」
「クリス、よろしく・・・」
「は、はい!あの有名なマユミーアのお二人のお世話が出来るなんて、光栄です!」
「あ・・・そっか・・・」

どうやら彼女の緊張の原因は、マユミ達二人にあったようだ。
無駄と思いつつもマユミは誤解を解こうと試みる。

「あのね、クリスちゃん・・・私達はもう英雄じゃなくて・・・」
「知ってます!声優ですよね!あの日のアニメ見てました!」
「え・・・」
「本当に?」
「はい、私、あのアニメに感動して・・・お二人が前にこちらで暮らしてたって聞いて・・・」

それでこの屋敷のメイドに応募したらしい。
それは若いメイド見習いを入れようと思っていたジーブスにとっても渡りに船だったようだ。

「クリスはえらい」

そう言ってミーアがクリスティンの頭を撫でる・・・アニメを褒められたミーアは妙に上機嫌だった。
もちろん嬉しい気持ちはマユミも同じだ。

(あの時のアニメが、こんな影響をもたらすなんて・・・)

マユミ達の想像以上に、あのアニメの反響は大きかったのだ。
あのアニメはその場にいた人々を全員魅了した・・・特にラスト15秒はファンの間で伝説となりつつある。
もちろん再演を望む声も大きい。
しかし、あの15秒レベルの上映をもう一度となると難しいものがあった。
エレスナーデの魔術もパンプルの絵も、あの一回だから出来た無茶だ。
そう何度もやれるものではない・・・しかし・・・



「「パンプルさん、私達を弟子にしてください!」」
「な、なんだって!」

美少女をこよなく愛する画家パンプルの元に、幼い少女達が押しかけていた。
多くの少女を描いてきたが、こんな事はこれまでになかった・・・さすがのパンプルも驚きを隠せない。

「「私達もアニメを作りたいんです、お願いします」」

・・・そう、彼女達もまた、あの日のアニメを見ていたのだ。
投影機の近くの客席にいたこの少女達は、パンプルこそがアニメを生み出した存在だと思ったらしい。
あのアニメを自分たちも作りたい・・・そう思ってパンプルに弟子入りを志願したのだ。

「言っておくけどボクは・・・くぅぅ・・・そんな目で見ないでくれ・・・」

子犬のような目でパンプルを見つめる少女達・・・彼女に断る事など出来ようはずもなかった。

「わかった、弟子にでもなんでもするから、そんな顔をしないでおくれ!」
「「やったー!」」

その言葉に少女達が満面の笑みを浮かべる・・・

(ああ・・・ここは天国なのかい?)

好みの少女達に囲まれ至福の時を過ごすパンプルだったが・・・

「・・・うまくいったね」
「本当にちょろいんだねあの人・・・」

少女達が顔を見合わせ何事か言っている。

「はやくアニメ作りの秘密を暴こうね」
「うん、がんばって『私達だけで』作れるようになろう」

・・・現実の少女達は思ったよりもしたたかだったようだ。



「みんなー久しぶりー!」
「私達、ここに帰って来たよ!」

広場に作られた特設ステージの上で、マユミ達二人が声を上げる。
彼女達が再びこの地にやって来たのは、この公演が目的だったのだ。

「あの子達も立派になったもんだねぇ・・・」

マユミと最初に出会った時の事を思い出しながら、リタが呟く。
世間知らずの貴族のお嬢ちゃん・・・それが今や・・・
広場をマユミ達のファンの大歓声が包み込んでいた。

リタと常連客の何人かは招待席にいた。
事前にマユミが何枚か『女神の酒樽亭』に招待券を送っていたのだ。
そのうちの一枚はリタで確定したが、残りを巡って常連客達は争った。
普段はその怪力で乱闘騒ぎなど起こさせないリタだったが、あの時の客は違った。

(物語で聞いたゾンビってのは、あんなのかもね・・・)

凄まじい執念で何度でも立ち上がってくる客達・・・今でも思い出すとぞっとする。
今彼女の周りにいる常連客がその勝者だった、包帯だらけで誰が誰やらであるが・・・
だが彼らはケガを感じさせない様子で元気にマユミ達を応援していた。

「マユミちゃーん!」
「ミーアちゃんもがんばれー!」


(やっぱり、もの足りない・・・)

声援に包まれながら、ミーアはもの足りなさ感じていた。
アニメに声を当てる・・・その体験は彼女にも変化をもたらしていたのだ。
あの日、彼女は自分が本当に求めていた物を知った。
それは舞台の上に立つことではなく、観客の声援を受ける事でもない・・・
自らを物語の一部に・・・この場にいるミーアとは別の何かとして一つの世界を作り出す。
それがマユミの言う声優というものなのだとしたら・・・きっとそれこそが・・・

(また・・・アニメで演じたい・・・)

その思いが今の彼女の中に膨らんでいった。
またアニメが出来る日は来るのだろうか・・・それが難しいのはわかっている。
でもマユミなら・・・マユミならきっと・・・なぜなら彼女は・・・


「みんな、今日は私達の為に集まってくれてありがとう、最後まで楽しんでもらえたかな?」

予定していた出し物が終わり、マユミが締めのトークに入る。
この公演ももうすぐ終幕だ。

「面白かったよー!」
「かわいかったー!」
「「マユミーア!マユミーア!」」

ファン達によってマユミーアコールが沸き起こる。
魔王との闘いが終わっても彼らにとって彼女達は英雄マユミーアなのだろう。

「うわー相変わらずマユミーアコールがすごいねー」
「うん、私達は永遠の英雄マユミーアだから」

ミーアのその声に観客が沸き上がる。
さらなるマユミーアコールがとどまらない。

「・・・でもごめんね、私達に英雄の力はもう残ってないんだ」
「マユミ・・・」

・・・本当は、最初からそんなものはなかった。
マユミの胸がちくりと痛む。

「だからね、私達はもう英雄なんかじゃないの!もう英雄も魔王もないの」

マユミの悲痛な声に会場が静まり返る・・・
冗談だと茶化す者はいなかった、皆、真剣な表情でマユミの言葉を待っていた。
それはミーアも同じだ、マユミが何を思い、これから何をしようとしているのか。
それが何であれ隣で寄り添っていくと決めたのだ、だから一言一句聞き逃すつもりはない。

「でも私はもっと皆に伝えたい、例え英雄じゃなくても、皆に伝えれることがいっぱいある!
 伝えたいものがいっぱいある!物語を、アニメを、感動を、この声が枯れるまで皆に伝え続けたい!」

そう、それこそがマユミが何よりも願ってきたことだ・・・
公演で疲弊しているはずの声帯も彼女の思いに応え、力強く声を出し続けた。
だから今彼女は宣言する、この願い・・・この想いこそがきっと、彼女にとっての・・・

「だから私は・・・」

そこまで言いかけてマユミは隣を見る、視線が交わる。
マユミはすぐに理解できた、ミーアも同じ思いを抱いていると・・・
今の二人に言葉は必要ない・・・ミーアは何も言わずただ頷く。

そしてマユミは・・・軽く息を吸い込んで呼吸を整え、その言葉を口にした。


「私達は・・・英雄じゃなくて声優です!」



   英雄じゃなくて声優です!・・・完
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