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魔導書
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白い顎髭の店主のお爺さんが差し出した一冊の魔導書。その黒の装丁には見たことも無い文字が書かれている。
「この魔導書は、最強と名高い魔女、リースが書いたものでな。おそらく、相当強い魔法か加護を得ることができるはずじゃ。だが、ワシがこの本を手にしてから30年、誰一人として適合者はおらんかった。このままじゃと、宝の持ち腐れじゃ。だから、この店に来た者にはこれを試してもらってるんじゃ。だから、お主もどうじゃろうか?」
「でもお高いんでしょ?」
「希少なものじゃが、売れ残りじゃからな……。3,000円でどうじゃ?もちろん、適合しなかったら返品してくれて構わん」
「まあ、それならいいかな」
支払いをして、店主から魔導書を受け取り、店の隅に置いてあった木の椅子に腰かけた。そして、魔導書を開く。
……。
当然だが、中の文字も表紙のそれと同じ言語のようだった。
「あの、この文字、全く読めないんですけど……」
「ああ、そんなことは気にせんでいい。別に書かれていることの意味を理解しなくても大丈夫じゃ。文字の形をしっかりと目に焼き付けるようにして読み進めるのじゃ」
僕は言われた通りに読み進めた。そして、最後の文字を読み終えた瞬間。
魔導書が強い光を放ち、僕はそれに飲み込まれた。
♢
気が付くと、そこは一面真っ白の世界だった。
そして、そこに佇む一人の女性。雪のように真っ白なロングヘア。黒のローブに身を包んだ長身の女性だ。
よく見ると女性の体は透けていて、立体映像のようだった。
唖然としている僕に、切り長の目で視線を送り、薄い唇の口角を少しだけあげて言葉を発した。
「私の魔導書を手にした者よ、はじめまして。私は魔女のリースだ。まあ、キミの前に映っている私はホログラムで、音声も録音したものなので、質問をされても答えられないが、ご容赦頂きたい。
「さて、前置きはこのくらいにして本題に入ろう。キミは私が魔導書に設定しておいた条件に当てはまる人物だった
「その条件とは、特別な力を得てもそれを悪用しない、清き心を持つ人物であることだ。
「その条件を満たしたキミは、成長促進の加護を得た。努力を惜しまなければ、他の人とは桁違いの速度で成長することができるだろう。
「この加護が、キミの生活に役立つことを祈ってるよ。それでは、ご機嫌よう」
♢
端的な説明を残して魔女リースの姿が消えたかと思うと、僕は店に戻っていた。手にしていた魔導書に視線を移すと、それはぱらぱらと崩れていき、真っ黒な灰の山になってしまった。
「おめでとう。どうやらお主は適合者だったようじゃな」
お爺さんがゆっくりと拍手している。
「すごいじゃん!リースの魔導書が適合するなんて!それでそれで、何か変化はない?」
リコさん目を輝かせて詰め寄ってくる。
「さっき魔女リースが現れて、加護の説明をしてくれました」
成長促進の加護だったとリコさんに話すと、いいなーと羨ましがられた。
♢
その後、武具屋に行った。武具屋には、剣や弓、防具など、多種の武器が置いてあった。使いやすさや値段などを考慮した結果、手元に残っていた2,000円で短剣を買うことにした。
一通り町を見て回ったところで、リコさんと分かれ、帰途についたのだが、途中で雲行きが悪くなり、夕立に降られてしまった。
ダッシュでティナの家に帰った時。ちょうどティナも帰ってきて、家の前で鉢合わせた。ティナも僕も、雨でずぶ濡れになっていた。
「この魔導書は、最強と名高い魔女、リースが書いたものでな。おそらく、相当強い魔法か加護を得ることができるはずじゃ。だが、ワシがこの本を手にしてから30年、誰一人として適合者はおらんかった。このままじゃと、宝の持ち腐れじゃ。だから、この店に来た者にはこれを試してもらってるんじゃ。だから、お主もどうじゃろうか?」
「でもお高いんでしょ?」
「希少なものじゃが、売れ残りじゃからな……。3,000円でどうじゃ?もちろん、適合しなかったら返品してくれて構わん」
「まあ、それならいいかな」
支払いをして、店主から魔導書を受け取り、店の隅に置いてあった木の椅子に腰かけた。そして、魔導書を開く。
……。
当然だが、中の文字も表紙のそれと同じ言語のようだった。
「あの、この文字、全く読めないんですけど……」
「ああ、そんなことは気にせんでいい。別に書かれていることの意味を理解しなくても大丈夫じゃ。文字の形をしっかりと目に焼き付けるようにして読み進めるのじゃ」
僕は言われた通りに読み進めた。そして、最後の文字を読み終えた瞬間。
魔導書が強い光を放ち、僕はそれに飲み込まれた。
♢
気が付くと、そこは一面真っ白の世界だった。
そして、そこに佇む一人の女性。雪のように真っ白なロングヘア。黒のローブに身を包んだ長身の女性だ。
よく見ると女性の体は透けていて、立体映像のようだった。
唖然としている僕に、切り長の目で視線を送り、薄い唇の口角を少しだけあげて言葉を発した。
「私の魔導書を手にした者よ、はじめまして。私は魔女のリースだ。まあ、キミの前に映っている私はホログラムで、音声も録音したものなので、質問をされても答えられないが、ご容赦頂きたい。
「さて、前置きはこのくらいにして本題に入ろう。キミは私が魔導書に設定しておいた条件に当てはまる人物だった
「その条件とは、特別な力を得てもそれを悪用しない、清き心を持つ人物であることだ。
「その条件を満たしたキミは、成長促進の加護を得た。努力を惜しまなければ、他の人とは桁違いの速度で成長することができるだろう。
「この加護が、キミの生活に役立つことを祈ってるよ。それでは、ご機嫌よう」
♢
端的な説明を残して魔女リースの姿が消えたかと思うと、僕は店に戻っていた。手にしていた魔導書に視線を移すと、それはぱらぱらと崩れていき、真っ黒な灰の山になってしまった。
「おめでとう。どうやらお主は適合者だったようじゃな」
お爺さんがゆっくりと拍手している。
「すごいじゃん!リースの魔導書が適合するなんて!それでそれで、何か変化はない?」
リコさん目を輝かせて詰め寄ってくる。
「さっき魔女リースが現れて、加護の説明をしてくれました」
成長促進の加護だったとリコさんに話すと、いいなーと羨ましがられた。
♢
その後、武具屋に行った。武具屋には、剣や弓、防具など、多種の武器が置いてあった。使いやすさや値段などを考慮した結果、手元に残っていた2,000円で短剣を買うことにした。
一通り町を見て回ったところで、リコさんと分かれ、帰途についたのだが、途中で雲行きが悪くなり、夕立に降られてしまった。
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