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第三章
対峙
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白馬は、目の前に広がる凄惨な現場に理解が追いつかず暫くその場に立ち尽くしていた。
喧騒が聞こえ漏れていた扉の前で、入場のタイミングを白椿に確認しようとも連絡がつかず途方に暮れていると中の気配が一変する不穏な空気を感じとったのがついさっきの話。
シューという聞き慣れた音は、真白を誘拐しようとしていた奴等の末路と同じ時の音だった。
雪乃に気取られない様に扉を押し開けてみても内側から施錠され、入れなくなっていた事からも中で非常事態が起きている事を察した白馬は万が一、林檎の国の目玉イベントである“朱の大会”でイレギュラーな事が起きた場合は秘密裏に大会ごと消すと明言していた白椿の言葉を思い出していた。
多分、きっと、そうだ。
確信めいたものを持ちながら瞬時に今後の事を計算する。
まずは雪乃の身柄だ。これだけは死守しないと復興どころか財源も底を尽きてしまう。
中の状態は絶望的だろうと予測した上で、金になる物は別の場所へ移さないといけない。
「引き返そう、雪乃。ここは危ない」
「嫌よ!私、白馬くんと離れたくない!!」
白馬の腕に縋りながら懇願しても、白馬は険しい表情のまま微動だにしなかった。
それでも雪乃は諦めない。
何としても真白に白馬との関係を見せつけたい気持ちだけが雪乃を饒舌に突き動かしていた。
「それに真白達が中に居るんでしょう!?」
白馬の横をすり抜け扉に手をかける。
「とにかく中を確認しなくちゃ!助けが必要かも知れないわ!!」
勿論、そんな気はない。
早く、早く、あの子が絶望する顔が見たい。それだけだった。
しかし扉が施錠されている事を知り、ガチャガチャと音をたてて無理矢理開けようと躍起になっている雪乃の後ろでパチンと乾いた指の鳴る音がした。
「……え?」
それを聞いた途端に急激な眠気に襲われた雪乃は、膝から崩れ落ちそのまま床に倒れた。
冷たい床の感触と混濁する意識の中で、必死に抗おうとしても意味はなく静かに深い眠りについていく。
「……連れて行け。追って指示を出す」
離れた場所に控えていた付人に命じるなり、白馬は扉に右手を添えると緊急解除用のシステムが作動して白馬の指紋を読み取った扉からロックが解除される音がした。
こうして、扉を押し開いた先に広がる光景に唖然とする冒頭へと戻るのである。
◇
「何だ、これ……」
“朱の大会”が滞りなく進められているのであれば、先に王李の競売からスタートされている筈だった。
しかしステージ上のカウンターには何故か“姫椿”と名前があり競売金額も購入者が誰一人居ないにも関わらず動き続けている。
会場には大多数の顧客達が降り重なる様にして倒れている中で、緑色をした魔法陣の中にいる姫椿と真白、その近くで応戦している白椿と大鎌を振るっている王李が見えた。
見知った人達のみが生存している事に安堵している自分に驚きつつも、どうしてこうなった?という根本的な部分が解せない。
何故、“姫椿”が競売にかけられているのか?
王李が持っている武器は何だ?
緑色の魔法陣?
大多数が息を引き取る惨劇の中で生き残っていると言うことは、全員が魔力持ちと言う現実を前にして白椿から聞かされていない情報がある事にこの時ばかりは若干の怒りを覚えた。
そして、白馬の元に駆け寄る黒い影を視界に捉えた時に唐突だが全てを理解した。
「……お前達、“天狼”なのか?」
「あたり」
信じられないと言わんばかりの呟きに答えたのは綺羅だった。
「あの時、俺を逃した事を後悔するんだね。お前達“暗夜”は今日をもって解散だ」
「……三下が」
「いやいや、もうちょっと強いから、今」
そう言う発言が弱く見えるんだと言いたくなったのをグッと堪え、素早く視線を走らせて白椿の方を見た。
向こうは向こうで此方に気づく様子はなく、見た感じ一方的に押されている。
引き際が難しいなと毒づきながら、白馬は改めて綺羅を見た。
「いいだろう。相手してやる」
「それは、どーも!」
白馬の気が自分に向いた事に幾らか安堵した綺羅は、頼みますよと願いを込めて自分の胸元に触れると“使役”されている赤い鎖が反応し、身体が勝手に体術の構えに入った。
戦闘訓練もろくに受けてない自分がどうやって戦うのか一抹の不安があったものの、よりによって苦手な体術ときた。
これ、絶対痛いやつじゃん!!と非難がましく姫椿に目配せしても、真白との会話に夢中で気づいてもらえない。
白馬が武器を出したらどうする?と自分でゾッとする疑問を思い浮かべてしまった時、強制的に身体が動き出した。
パシン、パシンと乾いた音を響かせながら綺羅が繰り出す打拳術も足技も軽やかに受け流される。
「へぇ」
白馬の感嘆の声を聞き、何とか渡り合えているんだと気を立て直して幾度となく衝突しては、お互いにすれすれの所を交わしてまた距離を取る。
白馬は額に流れた汗を拭うことなく、乱れた呼吸をゆっくりと整えた。
相手がこれ程まで強かったとは知り得なかった。
むしろ自分の方が有利だと思っていたのに、幾度となく足元を絡め取られる様に挑発されたり掬すくわれたりしてしまう。
視線を上げれば、平然と構えている綺羅がいた。
疲れの色さえ見せず隙があれば真白の方を見ていて正直、疎うとましかった。
白馬の視線に気づいた綺羅は、構えるが攻撃に転じたりはしない。
ひたすら受けの体制に回り、此方ばかりが体力の消耗が激しいと言うことに気づいた時には、やられたと思った。
本当、油断も隙もない。
「あれ?息が上がってる?」
「まさか。……なぁ、何故、戻ってきた」
白馬は、常々不思議だった事を綺羅に尋ねた。
お前なんか戻ってこなければ少なくともこんな事態にはならなかったのに。
お前が、計画を頓挫させたと苦々しく思いながら睨みつけると、白馬の表情に満足したのか満面の笑みを返された。
「やられたら、やり返す性分でね」
「は?」
「あっちの二人と似た様な理由だよ」
綺羅が見た方向に視線を向けると、尻餅をついた白椿の背後に立った王李が手にしていた巨大な大鎌の刃を首元に向けている所だった。
「目的があるんだ。君にもあるでしょう?」
金色の瞳が此方の思惑を全て見透かしてくるみたいで、白馬は目を逸らした。
◇
自分の身体が、こんなに重く感じたのはいつぶりだろう。
へたり込む姿勢で床に手をついたのも屈辱以外の何物でも無いのに、いつまでも整わない乱れた呼吸が苦しくてそこまで気にはならなかった。
俯いた首元に静かに当てがわれた鋭い刃先も冷たくて気持ちよさそうに見える。
少し動けば自害する危険もあるのに、ついに私はイカれてしまったのかもしれないと白椿は自暴自棄になった。
「はぁぁ、もう、上手くいかないなぁー」
さっきの毒霧で全部を巻き添えにして一気に仕留めた筈だった。
勿論、綾瀬だけは即効性の解毒薬で助ける算段をつけていたのに予期せぬ力が邪魔をしてきた。
魔法だ。
規格外すぎる力は、不正行為と同じだろう。
魔法なんて未知の力を振り翳されては、その力を持っていない者など赤子に等しい。
あぁ、嫌だ。
昔の苦い記憶が迫り上がって苛々が止まらない。
稀有な魔女の血を受け継ぐ家系ならではの、あのふざけた儀式で魔女としての能力を発現させた姫椿と何も発現しなかった自分。
分け隔てなく育てられた双子の姉妹に初めて甲乙つけられた瞬間は忘れもしない。
「ねぇ、どうして?」
何処から?初めから?私達は何もかも同じだった。
違う所なんてない。どちらかを出し抜いて綾瀬に会った事もない位、完全に一緒だった。
私とあの子の何が違うのか、どんなに時間が経っても解らない。
「ねぇ、どうしてあの子なの?」
胸元を飾る赤い南京錠を首から外して手のひらに乗せたものを綾瀬に見えるようにする。
「答えてくれなきゃ、渡さない」
見上げた先に、此方を見下す王李が見えた。
「それと。いい加減、綾瀬の姿に戻って?その姿、好きじゃないわ」
「……そこだよ」
「え?」
「お前、本当に覚えてないんだな」
スカした笑い方に顔をムッとさせる白椿から王李は大鎌を下ろした。
「都合の悪い事は速攻忘れるのはお前の長所なんだろう。昔、お前等の給仕係として側仕えしていた奴の事なんて、いちいち覚えてるのは姫椿だけだ」
「…………は?」
男の子を側仕えにしていた記憶はない。
けど、待って……何か、何か引っ掛かる。
喉に小骨が刺さった時に似ている不快感に顔を顰めていると、鼻で笑う王李の姿が眩い光と共に一変した。
身綺麗とは言えない継ぎはぎだらけの着物を纏い、目元を隠す様に前髪を伸ばした薄気味悪い赤髪の女の子。
身体に似合わない大鎌を両手に抱えた王李は、ハッキリと思い出した顔をしている白椿に微笑んだ。
「思い出しましたか?白椿お嬢様」
「う、そ」
信じられない。あの時の、アイツが!?どうして!?
「うちも昔ながらの腐った家系でね。厄除けの為に幼少期は女の子として育てられてたんだ。そしたら今度は婚約者を見極めろとか無理難題をふっかけられて仕方なく給仕してた時期があったんだよ」
幼名を王李として名乗っていた綾瀬は、唇まで蒼白になってきた白椿に微笑んだまま小首を傾げた。
「白椿お嬢さまには格別に可愛がって頂きましたよね?覚えてますか?」
「あ……、あ……」
「意味もなく長時間外に立たされたり、ご飯抜かれたり、虫や動物の死骸を無理矢理食べさせられたり、綺麗にしてあげるとか言って汚い水を掛けられたり、子供じみたクソみたいな悪事を沢山体験させて頂きました。不手際がある度に……というか殆ど難癖つけられてただけですけど、爪を剥がされたりとか。今でも覚えていますよ。お嬢様の決め台詞。事あるごとに、私のお父様は偉いのよ?言うこと聞かないと言いつけてやるんだから!って……ね?」
暫く頭を抱えて震えていた白椿が、そのまま床に突っ伏して恥ずかしげも無く泣き喚く。
「騙してたのね!?私をっ!!!」
「はぁ?ってか、騙すとか言えた口か?お前が姫椿を“傀儡”にしてた事知ってるんだからな!!」
王李として給仕する様になってから、白椿と姫椿の関係の歪さにすぐに気がついた。
利発的な白椿は、周囲には仲睦まじい双子の姉妹を演じ分け大人の目がない場所では姫椿を虐げていたのだ。
それが昔から常習化されていたせいもあり、心を閉ざした姫椿は何をするにも姉を立てる健気な妹として白椿に従順だった。
残酷な無邪気に晒され続けている姫椿を守る為に、その対象を自分へと向けさせる事に成功したものの、ずっと守る事は叶わなかった。
「ありがとう、王李。私は、大丈夫だから」
唐突に打ち切られた給仕係は、姫椿との別れを意味していた。
帰って両親に訴えても、俄には信じてもらえず絶望したのを覚えている。
それから数年の月日が経ってから双子の成人の儀にて再会した時、白椿は王李の事を覚えてすらいなかった。
ただ、姫椿だけは違った。
驚いた様に目を見開き、小さく微笑んで誰にもわからない様に手を振ってくれた。
自分の嫁に相応しいと認められた姫椿を今度こそ、生涯を賭して護れると思っていたのに。
「お前だけは絶対に許さない」
再び今の姿に戻ると手にしていた大鎌を赤から錆色に変える。
婚約を辞退させようと姫椿を唆かしていた事も。
姫椿に危害を加えると言葉巧みに俺を呼び出し数年間、監禁した事も。
そこで行われていた所業については思い出したくもない。
この女さえ、いなければ。
大鎌を脇に構えて、薙ぎ払う体制に入った。
「……ふふっ。綾瀬ったら、私を突き放そうとでっち上げた嘘が上手ね?そう、嘘よ!虚言!!私は騙されない、信じないわ。それに、そんな事して……いいの?」
ゆっくりと泣き崩れた体勢から上半身を上げた白椿の口元が意味深に微笑んでいるのを見て、急に悪寒と耳鳴りが酷くなった。
その言葉の先を聞く事を拒む様に頭の中に響く音に顔を顰めていると、嘲るような笑顔を携えた白椿の唇がゆっくりと動く。
「牡丹が悲しむわ。牡丹の事、忘れちゃった?」
大鎌を両手から取り零し、カランカランと乾いた音だけが床に反響する中で白椿の声だけがねっとりと耳に届いた。
「私と綾瀬、あなたの子供よ」
真白は、何かが割れる音を確かに聞いた気がした。
それは身に覚えのある音で、絶対に駄目な音だと警鐘が鳴る。
音の出所を探す為に顔を上げると異変に気づいた姫椿と目が合ったと思ったら、どうやら自分の後ろを注視している様だった。
嫌な胸騒ぎが責め立ててくる中、真白も姫椿が見ているものを振り返ろうとした時に姫椿の呟きが遅れて届いた。
「まずい」
その言葉が予言みたいに真白達の下に描かれていた魔法陣が一瞬で消え、ほのかな光に包まれていた緑色の空間が無くなってゆく光景の先で、武器を落として打ちひしがれている王李の姿を捉えた。
そこへゆっくりと近づいていくのは……学園長だろうか?
真白の瞳には、黒い靄に身を包まれて既に姿すら確認出来ないものに見えた。
背筋をゾワっとさせる寒気を感じて、アレに王李を近づけてはいないと本能的に悟る。
「行かなくちゃ」
それまで防げていた毒霧が、ふさっと静かに降り注ぐ中、熱に浮かされた様に真白は立ち上がった。
ズキズキ脈打つ頭痛が何かを思い出そうとしているのに、それが思い出したくないものである事だけは知っていた。
フワフワしてきた意識の中、目の前に見える二つの光だけが眩しい位に自分を呼んでいるのだ。
思い出せ、と暗に訴えてくる光を指差した。
「ねぇ、あの光ってるのって何だか分かる?」
「光ってるの?」
おうむ返しにしながら真白が指差す方を見て、姫椿は息を呑んだ。
「あれは……南京錠と黎明の鍵だよ」
答えながら何故、真白には光って見えているのかを考える。
だって、今のところアレらは真白には関係ないものなのに……
「約束を、果たさないと」
「え?約束?ちょっ、真白!?って、嘘っ!?待っ……!!!!?」
フラフラ進み出した真白を引き止めたかったものの、突然、真横から姫椿に体当たりする形で突っ込んできた白馬を受け止めきれず物凄い音を立てながら共倒れになる姫椿。
「……悪い」
「うぅぅ。はくばぁぁぁぁ」
下敷きになったまま恨めしい声を上げる姫椿の手を取り起き上がるのを手伝いながらも白馬が見ているのは綺羅だけだった。
白馬を吹っ飛ばした後、白椿と王李がいる方向へ進む途中ふらついた真白を片手で抱き止める事に成功している姿を見ながら、まだそんな余裕があるのかと歯噛みする。
「あいつにかけた術、解けよ」
「は?解くわけないじゃん!何?負けそうなの?」
「違う。実力でやりたいだけだ」
「実力もなにも……使役を解いたら馬に戻っちゃうんだけど?文句なら、そもそもの原因を作ったおたくの我儘クソ女に言いなさいよ!」
「……役立たず」
「はぁぁぁあ!?!?」
思いもよらない所で白馬の黒い部分を目撃した姫椿は、額に青筋を浮かべながら言葉にならない怒りを声に出した。
(絶対、許さない。絶対、絶対、逃さないんだから!)
ぎゅうぅっと、ありったけの力を込めて白馬の手を握っても軽々しく引っ張り上げられてしまい、鬱陶しそうに手を離されて綺羅の方へ行ってしまった。
「くっそー!……でもまぁ、上々かな」
意味深な事を呟きながら、手のひらをそっと開いて形成したものを確認する。
まだ透明を維持したままの未完成な“施錠”と次に使う“黎明の鍵”の手触りを確かに感じつつ消えない様にと念を込める。
これが具現化するのは、綾瀬が目的を達した後だ。
すっかり忘れていた毒霧の効果を食道から迫り上がってきた血液の味で思い出しながら、今だに動こうとしない王李を見た。
二人の会話は聞こえてこないものの、白椿が優勢であろう事は明白だった。
(何してんのよ)
綺羅を“使役”する力をギリギリ保てている自分が助太刀に行く事はできない。
下手すれば意識が飛んでしまいそうになる自分を鼓舞して、最後の瞬間まで意識を保つ事に集中する。
今できる事を全力で。
さっきそんな話を真白にしたのを思い出しながら、王李の方へと向かって行った真白の背中に全てを託すのだった。
◇
一歩前へ進む度に脈打つ様に頭痛がする中、早く、早くと王李の元へと急かす気持ちだけが自分を動かしている。
約束を果たさないとと口走った言葉の意味が何なのか……思い出そうとすると激しい痛みが頭に走って思考の邪魔をした。
多分、思い出したくない事を思い出さないといけない。
漠然とした絶望感に包まれながら、それでも目先にいる王李を放ってはおけなかった。
足がもつれて倒れそうになった所を、力強く脇から支えてくれたのは綺羅だった。
ゼーゼーと肩で呼吸して全力疾走した時みたいに苦しそうにも関わらず、目が合うと力が抜けた様な柔らかい表情を向けてくれる。
「セーーフ」
ありがとうと言おうとして、でももう綺羅が自分ではなく白馬の動向を見つめたまま滴り落ちる汗を拭うのを見て、真白は口を噤んだ。
何だろう。今、すごく置いてかれた気持ちがする。
「明日、筋肉痛だなー」
綺羅の何気ない言葉に意表を突かれた。
「あ、明日?」
「うん。だって俺、こんなに動く事あんまりないからって……ちょっと。笑ってるけど他人事じゃないからね?真白もだよ、絶対」
「え?私も?」
「頑張ってる人は全員、明日筋肉痛でーす」
「なにそれ」
ふふっと笑う真白を見て、綺羅はもう一度気合を入れ直す。
「さて。お互い、頑張ろ?」
軽く拳を真白の方に突き出すと、真白も軽く拳を合わせた。
「うん、頑張る」
置いてかれたと思ってた気持ちは、ちょっとだけ違った。
綺羅は、共にあろうとしてくれる。並ぶことを許してくれる人だ。
守ろうするんじゃなくて、近くで支えてくれる頼もしい存在。
不思議と気持ちが軽くなっている事に気づいた真白は、あんなに苦しかった頭痛もなんとかなるんじゃないかとさえ思えてきた。
「……今、できる事を全力で」
魔法についてザックリ教えてもらっている時の姫椿の言葉を口に出す。
そうだ。思い出す、出さないじゃない。
今、できる事があるなら……私はどうしたいのかを考えよう。
深く、深く、深呼吸をしながら真白はそっと瞳を閉じた。
喧騒が聞こえ漏れていた扉の前で、入場のタイミングを白椿に確認しようとも連絡がつかず途方に暮れていると中の気配が一変する不穏な空気を感じとったのがついさっきの話。
シューという聞き慣れた音は、真白を誘拐しようとしていた奴等の末路と同じ時の音だった。
雪乃に気取られない様に扉を押し開けてみても内側から施錠され、入れなくなっていた事からも中で非常事態が起きている事を察した白馬は万が一、林檎の国の目玉イベントである“朱の大会”でイレギュラーな事が起きた場合は秘密裏に大会ごと消すと明言していた白椿の言葉を思い出していた。
多分、きっと、そうだ。
確信めいたものを持ちながら瞬時に今後の事を計算する。
まずは雪乃の身柄だ。これだけは死守しないと復興どころか財源も底を尽きてしまう。
中の状態は絶望的だろうと予測した上で、金になる物は別の場所へ移さないといけない。
「引き返そう、雪乃。ここは危ない」
「嫌よ!私、白馬くんと離れたくない!!」
白馬の腕に縋りながら懇願しても、白馬は険しい表情のまま微動だにしなかった。
それでも雪乃は諦めない。
何としても真白に白馬との関係を見せつけたい気持ちだけが雪乃を饒舌に突き動かしていた。
「それに真白達が中に居るんでしょう!?」
白馬の横をすり抜け扉に手をかける。
「とにかく中を確認しなくちゃ!助けが必要かも知れないわ!!」
勿論、そんな気はない。
早く、早く、あの子が絶望する顔が見たい。それだけだった。
しかし扉が施錠されている事を知り、ガチャガチャと音をたてて無理矢理開けようと躍起になっている雪乃の後ろでパチンと乾いた指の鳴る音がした。
「……え?」
それを聞いた途端に急激な眠気に襲われた雪乃は、膝から崩れ落ちそのまま床に倒れた。
冷たい床の感触と混濁する意識の中で、必死に抗おうとしても意味はなく静かに深い眠りについていく。
「……連れて行け。追って指示を出す」
離れた場所に控えていた付人に命じるなり、白馬は扉に右手を添えると緊急解除用のシステムが作動して白馬の指紋を読み取った扉からロックが解除される音がした。
こうして、扉を押し開いた先に広がる光景に唖然とする冒頭へと戻るのである。
◇
「何だ、これ……」
“朱の大会”が滞りなく進められているのであれば、先に王李の競売からスタートされている筈だった。
しかしステージ上のカウンターには何故か“姫椿”と名前があり競売金額も購入者が誰一人居ないにも関わらず動き続けている。
会場には大多数の顧客達が降り重なる様にして倒れている中で、緑色をした魔法陣の中にいる姫椿と真白、その近くで応戦している白椿と大鎌を振るっている王李が見えた。
見知った人達のみが生存している事に安堵している自分に驚きつつも、どうしてこうなった?という根本的な部分が解せない。
何故、“姫椿”が競売にかけられているのか?
王李が持っている武器は何だ?
緑色の魔法陣?
大多数が息を引き取る惨劇の中で生き残っていると言うことは、全員が魔力持ちと言う現実を前にして白椿から聞かされていない情報がある事にこの時ばかりは若干の怒りを覚えた。
そして、白馬の元に駆け寄る黒い影を視界に捉えた時に唐突だが全てを理解した。
「……お前達、“天狼”なのか?」
「あたり」
信じられないと言わんばかりの呟きに答えたのは綺羅だった。
「あの時、俺を逃した事を後悔するんだね。お前達“暗夜”は今日をもって解散だ」
「……三下が」
「いやいや、もうちょっと強いから、今」
そう言う発言が弱く見えるんだと言いたくなったのをグッと堪え、素早く視線を走らせて白椿の方を見た。
向こうは向こうで此方に気づく様子はなく、見た感じ一方的に押されている。
引き際が難しいなと毒づきながら、白馬は改めて綺羅を見た。
「いいだろう。相手してやる」
「それは、どーも!」
白馬の気が自分に向いた事に幾らか安堵した綺羅は、頼みますよと願いを込めて自分の胸元に触れると“使役”されている赤い鎖が反応し、身体が勝手に体術の構えに入った。
戦闘訓練もろくに受けてない自分がどうやって戦うのか一抹の不安があったものの、よりによって苦手な体術ときた。
これ、絶対痛いやつじゃん!!と非難がましく姫椿に目配せしても、真白との会話に夢中で気づいてもらえない。
白馬が武器を出したらどうする?と自分でゾッとする疑問を思い浮かべてしまった時、強制的に身体が動き出した。
パシン、パシンと乾いた音を響かせながら綺羅が繰り出す打拳術も足技も軽やかに受け流される。
「へぇ」
白馬の感嘆の声を聞き、何とか渡り合えているんだと気を立て直して幾度となく衝突しては、お互いにすれすれの所を交わしてまた距離を取る。
白馬は額に流れた汗を拭うことなく、乱れた呼吸をゆっくりと整えた。
相手がこれ程まで強かったとは知り得なかった。
むしろ自分の方が有利だと思っていたのに、幾度となく足元を絡め取られる様に挑発されたり掬すくわれたりしてしまう。
視線を上げれば、平然と構えている綺羅がいた。
疲れの色さえ見せず隙があれば真白の方を見ていて正直、疎うとましかった。
白馬の視線に気づいた綺羅は、構えるが攻撃に転じたりはしない。
ひたすら受けの体制に回り、此方ばかりが体力の消耗が激しいと言うことに気づいた時には、やられたと思った。
本当、油断も隙もない。
「あれ?息が上がってる?」
「まさか。……なぁ、何故、戻ってきた」
白馬は、常々不思議だった事を綺羅に尋ねた。
お前なんか戻ってこなければ少なくともこんな事態にはならなかったのに。
お前が、計画を頓挫させたと苦々しく思いながら睨みつけると、白馬の表情に満足したのか満面の笑みを返された。
「やられたら、やり返す性分でね」
「は?」
「あっちの二人と似た様な理由だよ」
綺羅が見た方向に視線を向けると、尻餅をついた白椿の背後に立った王李が手にしていた巨大な大鎌の刃を首元に向けている所だった。
「目的があるんだ。君にもあるでしょう?」
金色の瞳が此方の思惑を全て見透かしてくるみたいで、白馬は目を逸らした。
◇
自分の身体が、こんなに重く感じたのはいつぶりだろう。
へたり込む姿勢で床に手をついたのも屈辱以外の何物でも無いのに、いつまでも整わない乱れた呼吸が苦しくてそこまで気にはならなかった。
俯いた首元に静かに当てがわれた鋭い刃先も冷たくて気持ちよさそうに見える。
少し動けば自害する危険もあるのに、ついに私はイカれてしまったのかもしれないと白椿は自暴自棄になった。
「はぁぁ、もう、上手くいかないなぁー」
さっきの毒霧で全部を巻き添えにして一気に仕留めた筈だった。
勿論、綾瀬だけは即効性の解毒薬で助ける算段をつけていたのに予期せぬ力が邪魔をしてきた。
魔法だ。
規格外すぎる力は、不正行為と同じだろう。
魔法なんて未知の力を振り翳されては、その力を持っていない者など赤子に等しい。
あぁ、嫌だ。
昔の苦い記憶が迫り上がって苛々が止まらない。
稀有な魔女の血を受け継ぐ家系ならではの、あのふざけた儀式で魔女としての能力を発現させた姫椿と何も発現しなかった自分。
分け隔てなく育てられた双子の姉妹に初めて甲乙つけられた瞬間は忘れもしない。
「ねぇ、どうして?」
何処から?初めから?私達は何もかも同じだった。
違う所なんてない。どちらかを出し抜いて綾瀬に会った事もない位、完全に一緒だった。
私とあの子の何が違うのか、どんなに時間が経っても解らない。
「ねぇ、どうしてあの子なの?」
胸元を飾る赤い南京錠を首から外して手のひらに乗せたものを綾瀬に見えるようにする。
「答えてくれなきゃ、渡さない」
見上げた先に、此方を見下す王李が見えた。
「それと。いい加減、綾瀬の姿に戻って?その姿、好きじゃないわ」
「……そこだよ」
「え?」
「お前、本当に覚えてないんだな」
スカした笑い方に顔をムッとさせる白椿から王李は大鎌を下ろした。
「都合の悪い事は速攻忘れるのはお前の長所なんだろう。昔、お前等の給仕係として側仕えしていた奴の事なんて、いちいち覚えてるのは姫椿だけだ」
「…………は?」
男の子を側仕えにしていた記憶はない。
けど、待って……何か、何か引っ掛かる。
喉に小骨が刺さった時に似ている不快感に顔を顰めていると、鼻で笑う王李の姿が眩い光と共に一変した。
身綺麗とは言えない継ぎはぎだらけの着物を纏い、目元を隠す様に前髪を伸ばした薄気味悪い赤髪の女の子。
身体に似合わない大鎌を両手に抱えた王李は、ハッキリと思い出した顔をしている白椿に微笑んだ。
「思い出しましたか?白椿お嬢様」
「う、そ」
信じられない。あの時の、アイツが!?どうして!?
「うちも昔ながらの腐った家系でね。厄除けの為に幼少期は女の子として育てられてたんだ。そしたら今度は婚約者を見極めろとか無理難題をふっかけられて仕方なく給仕してた時期があったんだよ」
幼名を王李として名乗っていた綾瀬は、唇まで蒼白になってきた白椿に微笑んだまま小首を傾げた。
「白椿お嬢さまには格別に可愛がって頂きましたよね?覚えてますか?」
「あ……、あ……」
「意味もなく長時間外に立たされたり、ご飯抜かれたり、虫や動物の死骸を無理矢理食べさせられたり、綺麗にしてあげるとか言って汚い水を掛けられたり、子供じみたクソみたいな悪事を沢山体験させて頂きました。不手際がある度に……というか殆ど難癖つけられてただけですけど、爪を剥がされたりとか。今でも覚えていますよ。お嬢様の決め台詞。事あるごとに、私のお父様は偉いのよ?言うこと聞かないと言いつけてやるんだから!って……ね?」
暫く頭を抱えて震えていた白椿が、そのまま床に突っ伏して恥ずかしげも無く泣き喚く。
「騙してたのね!?私をっ!!!」
「はぁ?ってか、騙すとか言えた口か?お前が姫椿を“傀儡”にしてた事知ってるんだからな!!」
王李として給仕する様になってから、白椿と姫椿の関係の歪さにすぐに気がついた。
利発的な白椿は、周囲には仲睦まじい双子の姉妹を演じ分け大人の目がない場所では姫椿を虐げていたのだ。
それが昔から常習化されていたせいもあり、心を閉ざした姫椿は何をするにも姉を立てる健気な妹として白椿に従順だった。
残酷な無邪気に晒され続けている姫椿を守る為に、その対象を自分へと向けさせる事に成功したものの、ずっと守る事は叶わなかった。
「ありがとう、王李。私は、大丈夫だから」
唐突に打ち切られた給仕係は、姫椿との別れを意味していた。
帰って両親に訴えても、俄には信じてもらえず絶望したのを覚えている。
それから数年の月日が経ってから双子の成人の儀にて再会した時、白椿は王李の事を覚えてすらいなかった。
ただ、姫椿だけは違った。
驚いた様に目を見開き、小さく微笑んで誰にもわからない様に手を振ってくれた。
自分の嫁に相応しいと認められた姫椿を今度こそ、生涯を賭して護れると思っていたのに。
「お前だけは絶対に許さない」
再び今の姿に戻ると手にしていた大鎌を赤から錆色に変える。
婚約を辞退させようと姫椿を唆かしていた事も。
姫椿に危害を加えると言葉巧みに俺を呼び出し数年間、監禁した事も。
そこで行われていた所業については思い出したくもない。
この女さえ、いなければ。
大鎌を脇に構えて、薙ぎ払う体制に入った。
「……ふふっ。綾瀬ったら、私を突き放そうとでっち上げた嘘が上手ね?そう、嘘よ!虚言!!私は騙されない、信じないわ。それに、そんな事して……いいの?」
ゆっくりと泣き崩れた体勢から上半身を上げた白椿の口元が意味深に微笑んでいるのを見て、急に悪寒と耳鳴りが酷くなった。
その言葉の先を聞く事を拒む様に頭の中に響く音に顔を顰めていると、嘲るような笑顔を携えた白椿の唇がゆっくりと動く。
「牡丹が悲しむわ。牡丹の事、忘れちゃった?」
大鎌を両手から取り零し、カランカランと乾いた音だけが床に反響する中で白椿の声だけがねっとりと耳に届いた。
「私と綾瀬、あなたの子供よ」
真白は、何かが割れる音を確かに聞いた気がした。
それは身に覚えのある音で、絶対に駄目な音だと警鐘が鳴る。
音の出所を探す為に顔を上げると異変に気づいた姫椿と目が合ったと思ったら、どうやら自分の後ろを注視している様だった。
嫌な胸騒ぎが責め立ててくる中、真白も姫椿が見ているものを振り返ろうとした時に姫椿の呟きが遅れて届いた。
「まずい」
その言葉が予言みたいに真白達の下に描かれていた魔法陣が一瞬で消え、ほのかな光に包まれていた緑色の空間が無くなってゆく光景の先で、武器を落として打ちひしがれている王李の姿を捉えた。
そこへゆっくりと近づいていくのは……学園長だろうか?
真白の瞳には、黒い靄に身を包まれて既に姿すら確認出来ないものに見えた。
背筋をゾワっとさせる寒気を感じて、アレに王李を近づけてはいないと本能的に悟る。
「行かなくちゃ」
それまで防げていた毒霧が、ふさっと静かに降り注ぐ中、熱に浮かされた様に真白は立ち上がった。
ズキズキ脈打つ頭痛が何かを思い出そうとしているのに、それが思い出したくないものである事だけは知っていた。
フワフワしてきた意識の中、目の前に見える二つの光だけが眩しい位に自分を呼んでいるのだ。
思い出せ、と暗に訴えてくる光を指差した。
「ねぇ、あの光ってるのって何だか分かる?」
「光ってるの?」
おうむ返しにしながら真白が指差す方を見て、姫椿は息を呑んだ。
「あれは……南京錠と黎明の鍵だよ」
答えながら何故、真白には光って見えているのかを考える。
だって、今のところアレらは真白には関係ないものなのに……
「約束を、果たさないと」
「え?約束?ちょっ、真白!?って、嘘っ!?待っ……!!!!?」
フラフラ進み出した真白を引き止めたかったものの、突然、真横から姫椿に体当たりする形で突っ込んできた白馬を受け止めきれず物凄い音を立てながら共倒れになる姫椿。
「……悪い」
「うぅぅ。はくばぁぁぁぁ」
下敷きになったまま恨めしい声を上げる姫椿の手を取り起き上がるのを手伝いながらも白馬が見ているのは綺羅だけだった。
白馬を吹っ飛ばした後、白椿と王李がいる方向へ進む途中ふらついた真白を片手で抱き止める事に成功している姿を見ながら、まだそんな余裕があるのかと歯噛みする。
「あいつにかけた術、解けよ」
「は?解くわけないじゃん!何?負けそうなの?」
「違う。実力でやりたいだけだ」
「実力もなにも……使役を解いたら馬に戻っちゃうんだけど?文句なら、そもそもの原因を作ったおたくの我儘クソ女に言いなさいよ!」
「……役立たず」
「はぁぁぁあ!?!?」
思いもよらない所で白馬の黒い部分を目撃した姫椿は、額に青筋を浮かべながら言葉にならない怒りを声に出した。
(絶対、許さない。絶対、絶対、逃さないんだから!)
ぎゅうぅっと、ありったけの力を込めて白馬の手を握っても軽々しく引っ張り上げられてしまい、鬱陶しそうに手を離されて綺羅の方へ行ってしまった。
「くっそー!……でもまぁ、上々かな」
意味深な事を呟きながら、手のひらをそっと開いて形成したものを確認する。
まだ透明を維持したままの未完成な“施錠”と次に使う“黎明の鍵”の手触りを確かに感じつつ消えない様にと念を込める。
これが具現化するのは、綾瀬が目的を達した後だ。
すっかり忘れていた毒霧の効果を食道から迫り上がってきた血液の味で思い出しながら、今だに動こうとしない王李を見た。
二人の会話は聞こえてこないものの、白椿が優勢であろう事は明白だった。
(何してんのよ)
綺羅を“使役”する力をギリギリ保てている自分が助太刀に行く事はできない。
下手すれば意識が飛んでしまいそうになる自分を鼓舞して、最後の瞬間まで意識を保つ事に集中する。
今できる事を全力で。
さっきそんな話を真白にしたのを思い出しながら、王李の方へと向かって行った真白の背中に全てを託すのだった。
◇
一歩前へ進む度に脈打つ様に頭痛がする中、早く、早くと王李の元へと急かす気持ちだけが自分を動かしている。
約束を果たさないとと口走った言葉の意味が何なのか……思い出そうとすると激しい痛みが頭に走って思考の邪魔をした。
多分、思い出したくない事を思い出さないといけない。
漠然とした絶望感に包まれながら、それでも目先にいる王李を放ってはおけなかった。
足がもつれて倒れそうになった所を、力強く脇から支えてくれたのは綺羅だった。
ゼーゼーと肩で呼吸して全力疾走した時みたいに苦しそうにも関わらず、目が合うと力が抜けた様な柔らかい表情を向けてくれる。
「セーーフ」
ありがとうと言おうとして、でももう綺羅が自分ではなく白馬の動向を見つめたまま滴り落ちる汗を拭うのを見て、真白は口を噤んだ。
何だろう。今、すごく置いてかれた気持ちがする。
「明日、筋肉痛だなー」
綺羅の何気ない言葉に意表を突かれた。
「あ、明日?」
「うん。だって俺、こんなに動く事あんまりないからって……ちょっと。笑ってるけど他人事じゃないからね?真白もだよ、絶対」
「え?私も?」
「頑張ってる人は全員、明日筋肉痛でーす」
「なにそれ」
ふふっと笑う真白を見て、綺羅はもう一度気合を入れ直す。
「さて。お互い、頑張ろ?」
軽く拳を真白の方に突き出すと、真白も軽く拳を合わせた。
「うん、頑張る」
置いてかれたと思ってた気持ちは、ちょっとだけ違った。
綺羅は、共にあろうとしてくれる。並ぶことを許してくれる人だ。
守ろうするんじゃなくて、近くで支えてくれる頼もしい存在。
不思議と気持ちが軽くなっている事に気づいた真白は、あんなに苦しかった頭痛もなんとかなるんじゃないかとさえ思えてきた。
「……今、できる事を全力で」
魔法についてザックリ教えてもらっている時の姫椿の言葉を口に出す。
そうだ。思い出す、出さないじゃない。
今、できる事があるなら……私はどうしたいのかを考えよう。
深く、深く、深呼吸をしながら真白はそっと瞳を閉じた。
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