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終章
顕示
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「…………………え?」
懐かしい書物の香りが鼻を掠めたのに違和感を感じて顔を上げると外に通じる扉を開いた筈だったのに、目の前には懐かしい見慣れた風景が広がっていた。
木漏れ日が降り注ぐ図書室は相変わらず閑散としていて人の気配が全くないのに、直感で彼女だけはこの場所にいると思った。
「白馬っ!!」
予想してた通りに聞こえた声は、もう一度聞きたいと焦がれていたもの。
嘘だろう?と訝しむ隙も与えない速さで勢いよくドシっと抱きついてきた真白に驚きのあまり手が出せずにいると、これが夢じゃないと更に力を込められ抱きしめられた。
「私が、しつこいの知ってるでしょ?」
知ってる。知ってるよ。
一向に顔を上げようとしない真白の頭に結ばれている朱色のリボンを見つめながら、それでもと口を動かす。
「俺は、人身売買の稼業に手を染めてる。林檎の国の生徒全員を売る為に学園へ来た」
吐露する言葉を受ける真白からは、相槌もなにもないのは当たり前だ。
でも今は、ただ聞いて欲しい。
言えなかった言葉、全部を。
「朱の大会だって真白が思っていた様な物じゃない。怖かっただろ?お前達を見世物にして売り飛ばす為の競売会。俺は全部知ってて、お前の傍にいたんだ」
図書室に吹き込む風が悪戯に白いレースのカーテンを揺らす。
静まり返った室内で小さく刻む時計の音を聞きながら、白馬は目を伏せた。
「………真白、俺はね?凶悪犯なんだよ。だから一緒にはいられない」
抱きついたままの真白を離そうと腕に手を回す気配を察知したのか、ぐいぐいと頭を押し付けられた。
それはまるで小さい子供が駄々をこねる姿と酷似していて、愛おしく思う。
離れたくないと願ってしまいそうになるが、例え心が引き裂かれそうになっても離れないといけない。
「真白」
強く呼び掛けると、ぴたりと動きが止まった。
胸元から顔を離して此方を見上げる翠色の瞳は涙に濡れている。
悲しませる原因が自分だと思うと堪らなくなって目尻から溢れ落ちそうになった涙を指で拭っても何度も溢れてきた。
「嫌だよっ……」
搾り出された言葉に、白馬はどう答えていいのか分からなくなって真白を抱き締めた。
その髪に、耳に、口づけを落としながら呟く。
「ごめん、ごめんね」
謝罪に意味はない。
謝って済む事でもないのに、今は陳腐な言葉しか出てこない。
お願いだ、もう泣かないで。
胸が苦しくなる位の泣き声を聞きながら、真白が落ち着くまで小さな子供をあやす様に抱き締め続けた。
「……もしも、私が凶悪犯だったらって話したの覚えてる?白馬ね、俺も凶悪犯になるよって答えてた」
白馬の腕の中で唐突に話し始めた真白の声を聞きながら、いつかの図書室でのやりとりを思い返していた。
「白馬が凶悪犯なら、私も凶悪犯になる」
「え?」
「やっぱり一緒にいたいから……だから、ごめんね?」
はっきりと決意した強い声音と同時に腕の中から離れていく真白を見つめていると、泣き腫らした顔で微笑まれた。
その笑顔は、何だかんだで私達一緒にいるのねと笑った時と同じに見える。
パチン
真白が両手を叩いた瞬間、景気が一変して図書室だった場所から、白椿がレイアウトをしたあの悪趣味な学園長室に転移した。
部屋には綾瀬と姫椿、レージが出入り口を塞ぐ様に立ち、白馬と真白の前には此方に背を向け前を見据えたまま綺羅が立っている。
顔見知りばかりなのに悪趣味な部屋に立ち込める空気は張り詰めて重い。
不審に思って綺羅が対峙している方を見ると悪趣味な部屋にも我関せず、“天狼”の主カフマが学長席に鎮座していた。
ガタイの良いカフマがそこに居るだけで周囲に威圧感を与えている。
肩幅が広く、胸板も厚いボディービルダーに近い体格に加え、程よく日に焼けた小麦色の肌と堀の深い顔立ち。
灰色の髪は短く刈り上げ、インテリ眼鏡の奥の瞳は片方だけおでこから頬にかけ随分昔に負った刀傷が生々しく走っている。
一見ヤクザにしか見えない男こそ、曲者揃いの“天狼”を率いる主人なのだ。
「…………で?」
突然現れた真白と白馬に一瞥をくれただけでこの場にいる事を許容し、綺羅との会話を続行した。
「綺羅。お前は自らを検体として“天狼”に差し出し力を求めた結果、お前が救いたかった娘は救われた。真白は“天狼”預かりではなく、綾瀬の娘として扱われる事となる。これで一件落着かと思いきや、お前にはまだ望むものがあるという。改めて問おう……では、この国を救うに値する証拠は何処だ?」
娘?なんの事だろうと真白が背後にいる綾瀬を振り返ると、あからさまに目を逸らされた。
怪訝な顔をしていると綾瀬の隣に立っていた姫椿に微笑まれる。口元が小さく動いて“大丈夫だよ”と読み取る事ができた。
「自分達だけ助かれば満足なのか?」
カフマの低い声に再び前を見ると、射抜くような鋭い視線が綺羅、真白、そして白馬に向けられた。
「顕示しろ」
答え方を間違えたら死ぬ、そんな不穏な空気を正面から受け止め続けていた綺羅は小さく息を吐いた。
そして後ろに真白と白馬が現れた事を確認すると綺羅は白馬に向き直る。
「頼む。俺は……未来を繋ぎたい」
あぁ、そうか。
腑に落ちる感覚に胸に手を当て、綺羅の真摯な言葉に白馬は微笑んでみせた。
真白が凶悪犯になると言い出したから一体何事かと思ったが、ここへ来てようやくその魂胆を理解した。
真白は、俺をこの学園に縛りつけようとしている。
自由のない林檎の国に拘束し続ける事を選んだ自分を凶悪だと言っていたのだ。
「確かに、凶悪犯だな」
真白にしか聞こえない呟きに顔を上げると、白馬が笑っていた。
その笑顔は今まで見たことのない清々しさがある笑い方で、褒められてる訳でもないのに何故か嬉しくなる。
白馬の微笑を肯定と受け取った綺羅は、再びカフマと向き合った。
そして……
「研究所ではなく学園の運営を担える人物を紹介します。彼は、生徒達の卒業後の譲渡先パイプを多数所持してる人物です。彼が赴任してからの卒業生らの行方を調べました。人材派遣先として、人員が行き届いてない農村への復興支援を目的とした出向や、各方面で林檎の国で得た知識を生かした経済復興を軸とした長期雇用契約を多数の国と締結しています」
無言のままカフマの視線が白馬に向けられた。
「“暗夜”取締補佐、白馬です」
緩めたネクタイを締め直して立ち上がる。
“天狼”の主人に向けて、一礼をする白馬に注がれた視線は値踏みするかのように鋭くて濃いものだったが物怖じせずに綺羅の隣に立ちカフマと対峙した。
「噂はかねがね聞いている」
「光栄です、“天狼”の主」
「人身売買を稼業としてる奴が殺し屋に買われたなんざ、皮肉だな。お前に出来るのか」
「できます」
「なら、お前の命が潰えるその時まで“天狼”の為に仕えろ。よって、この国の運営を任せる」
「ありがとうございます」
「やーやーやー、よかった!よかった!!有耶無耶な部分があるのは嫌だからね、上手くいってよかった」
一件落着だね!?といきなり拍手してカフマの元に駆け寄ったのはレージだった。
緊張の糸が解けた様に空気も柔らかいものになる。
「僕だけじゃ心許ないから学園の運営を任せられるなんて頼もしいよ。いやー、これで研究に専念できる!新しい研究所も手に入った!!やりたい事たくさんあるよ!!」
カフマは、瞳を輝かせるレージに冷ややかな視線を向けたまま、緊張から解放されて座り込む綺羅を心配している真白を見た。
それから後方で安堵している綾瀬と姫椿に声をかける。
「全快したら帰ってこい」
カフマは立ち上がった。
「以上だ。白馬よ、この気色悪い悪趣味な部屋をいの一番に変えろ」
あ、カフマでもやっぱり居づらかったんだと誰もが思った瞬間だった。
懐かしい書物の香りが鼻を掠めたのに違和感を感じて顔を上げると外に通じる扉を開いた筈だったのに、目の前には懐かしい見慣れた風景が広がっていた。
木漏れ日が降り注ぐ図書室は相変わらず閑散としていて人の気配が全くないのに、直感で彼女だけはこの場所にいると思った。
「白馬っ!!」
予想してた通りに聞こえた声は、もう一度聞きたいと焦がれていたもの。
嘘だろう?と訝しむ隙も与えない速さで勢いよくドシっと抱きついてきた真白に驚きのあまり手が出せずにいると、これが夢じゃないと更に力を込められ抱きしめられた。
「私が、しつこいの知ってるでしょ?」
知ってる。知ってるよ。
一向に顔を上げようとしない真白の頭に結ばれている朱色のリボンを見つめながら、それでもと口を動かす。
「俺は、人身売買の稼業に手を染めてる。林檎の国の生徒全員を売る為に学園へ来た」
吐露する言葉を受ける真白からは、相槌もなにもないのは当たり前だ。
でも今は、ただ聞いて欲しい。
言えなかった言葉、全部を。
「朱の大会だって真白が思っていた様な物じゃない。怖かっただろ?お前達を見世物にして売り飛ばす為の競売会。俺は全部知ってて、お前の傍にいたんだ」
図書室に吹き込む風が悪戯に白いレースのカーテンを揺らす。
静まり返った室内で小さく刻む時計の音を聞きながら、白馬は目を伏せた。
「………真白、俺はね?凶悪犯なんだよ。だから一緒にはいられない」
抱きついたままの真白を離そうと腕に手を回す気配を察知したのか、ぐいぐいと頭を押し付けられた。
それはまるで小さい子供が駄々をこねる姿と酷似していて、愛おしく思う。
離れたくないと願ってしまいそうになるが、例え心が引き裂かれそうになっても離れないといけない。
「真白」
強く呼び掛けると、ぴたりと動きが止まった。
胸元から顔を離して此方を見上げる翠色の瞳は涙に濡れている。
悲しませる原因が自分だと思うと堪らなくなって目尻から溢れ落ちそうになった涙を指で拭っても何度も溢れてきた。
「嫌だよっ……」
搾り出された言葉に、白馬はどう答えていいのか分からなくなって真白を抱き締めた。
その髪に、耳に、口づけを落としながら呟く。
「ごめん、ごめんね」
謝罪に意味はない。
謝って済む事でもないのに、今は陳腐な言葉しか出てこない。
お願いだ、もう泣かないで。
胸が苦しくなる位の泣き声を聞きながら、真白が落ち着くまで小さな子供をあやす様に抱き締め続けた。
「……もしも、私が凶悪犯だったらって話したの覚えてる?白馬ね、俺も凶悪犯になるよって答えてた」
白馬の腕の中で唐突に話し始めた真白の声を聞きながら、いつかの図書室でのやりとりを思い返していた。
「白馬が凶悪犯なら、私も凶悪犯になる」
「え?」
「やっぱり一緒にいたいから……だから、ごめんね?」
はっきりと決意した強い声音と同時に腕の中から離れていく真白を見つめていると、泣き腫らした顔で微笑まれた。
その笑顔は、何だかんだで私達一緒にいるのねと笑った時と同じに見える。
パチン
真白が両手を叩いた瞬間、景気が一変して図書室だった場所から、白椿がレイアウトをしたあの悪趣味な学園長室に転移した。
部屋には綾瀬と姫椿、レージが出入り口を塞ぐ様に立ち、白馬と真白の前には此方に背を向け前を見据えたまま綺羅が立っている。
顔見知りばかりなのに悪趣味な部屋に立ち込める空気は張り詰めて重い。
不審に思って綺羅が対峙している方を見ると悪趣味な部屋にも我関せず、“天狼”の主カフマが学長席に鎮座していた。
ガタイの良いカフマがそこに居るだけで周囲に威圧感を与えている。
肩幅が広く、胸板も厚いボディービルダーに近い体格に加え、程よく日に焼けた小麦色の肌と堀の深い顔立ち。
灰色の髪は短く刈り上げ、インテリ眼鏡の奥の瞳は片方だけおでこから頬にかけ随分昔に負った刀傷が生々しく走っている。
一見ヤクザにしか見えない男こそ、曲者揃いの“天狼”を率いる主人なのだ。
「…………で?」
突然現れた真白と白馬に一瞥をくれただけでこの場にいる事を許容し、綺羅との会話を続行した。
「綺羅。お前は自らを検体として“天狼”に差し出し力を求めた結果、お前が救いたかった娘は救われた。真白は“天狼”預かりではなく、綾瀬の娘として扱われる事となる。これで一件落着かと思いきや、お前にはまだ望むものがあるという。改めて問おう……では、この国を救うに値する証拠は何処だ?」
娘?なんの事だろうと真白が背後にいる綾瀬を振り返ると、あからさまに目を逸らされた。
怪訝な顔をしていると綾瀬の隣に立っていた姫椿に微笑まれる。口元が小さく動いて“大丈夫だよ”と読み取る事ができた。
「自分達だけ助かれば満足なのか?」
カフマの低い声に再び前を見ると、射抜くような鋭い視線が綺羅、真白、そして白馬に向けられた。
「顕示しろ」
答え方を間違えたら死ぬ、そんな不穏な空気を正面から受け止め続けていた綺羅は小さく息を吐いた。
そして後ろに真白と白馬が現れた事を確認すると綺羅は白馬に向き直る。
「頼む。俺は……未来を繋ぎたい」
あぁ、そうか。
腑に落ちる感覚に胸に手を当て、綺羅の真摯な言葉に白馬は微笑んでみせた。
真白が凶悪犯になると言い出したから一体何事かと思ったが、ここへ来てようやくその魂胆を理解した。
真白は、俺をこの学園に縛りつけようとしている。
自由のない林檎の国に拘束し続ける事を選んだ自分を凶悪だと言っていたのだ。
「確かに、凶悪犯だな」
真白にしか聞こえない呟きに顔を上げると、白馬が笑っていた。
その笑顔は今まで見たことのない清々しさがある笑い方で、褒められてる訳でもないのに何故か嬉しくなる。
白馬の微笑を肯定と受け取った綺羅は、再びカフマと向き合った。
そして……
「研究所ではなく学園の運営を担える人物を紹介します。彼は、生徒達の卒業後の譲渡先パイプを多数所持してる人物です。彼が赴任してからの卒業生らの行方を調べました。人材派遣先として、人員が行き届いてない農村への復興支援を目的とした出向や、各方面で林檎の国で得た知識を生かした経済復興を軸とした長期雇用契約を多数の国と締結しています」
無言のままカフマの視線が白馬に向けられた。
「“暗夜”取締補佐、白馬です」
緩めたネクタイを締め直して立ち上がる。
“天狼”の主人に向けて、一礼をする白馬に注がれた視線は値踏みするかのように鋭くて濃いものだったが物怖じせずに綺羅の隣に立ちカフマと対峙した。
「噂はかねがね聞いている」
「光栄です、“天狼”の主」
「人身売買を稼業としてる奴が殺し屋に買われたなんざ、皮肉だな。お前に出来るのか」
「できます」
「なら、お前の命が潰えるその時まで“天狼”の為に仕えろ。よって、この国の運営を任せる」
「ありがとうございます」
「やーやーやー、よかった!よかった!!有耶無耶な部分があるのは嫌だからね、上手くいってよかった」
一件落着だね!?といきなり拍手してカフマの元に駆け寄ったのはレージだった。
緊張の糸が解けた様に空気も柔らかいものになる。
「僕だけじゃ心許ないから学園の運営を任せられるなんて頼もしいよ。いやー、これで研究に専念できる!新しい研究所も手に入った!!やりたい事たくさんあるよ!!」
カフマは、瞳を輝かせるレージに冷ややかな視線を向けたまま、緊張から解放されて座り込む綺羅を心配している真白を見た。
それから後方で安堵している綾瀬と姫椿に声をかける。
「全快したら帰ってこい」
カフマは立ち上がった。
「以上だ。白馬よ、この気色悪い悪趣味な部屋をいの一番に変えろ」
あ、カフマでもやっぱり居づらかったんだと誰もが思った瞬間だった。
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