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第六話
しおりを挟む一は走りながら、先程ベリーから言われた言葉を思い出していた。
『……今から秋葉原駅に行って!』
『財布が見付かった!』
ベリーはそう言うと、こちらが何か言う前に詳しいことは秋葉原駅に行ったら分かると言い残し、通話はそこで終わった。
──どこにあった?
──やっぱり川沿いじゃなくて、秋葉原を探せば良かったじゃん! と、いろいろ思うことは尽きないけど、まあ、見付かったならヨシとしよう……。
「あ! 金田一!」
秋葉原駅に近付くと、一に向かって手を降る姿が見える。──マガジンだ!
「えっ、誰……」
マガジンに走り寄ろうとした一の足がゆっくりになる。
なぜなら、マガジンの隣に知らない女の子が立っていたからだ。
──マガジンの知り合いか?
身長はマガジンより頭一つ小さめで、顔はパッチリとした目が印象的なかわいい系。歳は一達と同じくらいだろうか。
「金田一! おまえ、いつの間に彼女が出来たんだよ」
「え? え? (彼女? もしかして、この女の子が俺の彼女ってこと?)」
「てか、財布探してくれてたんだって? ヒメちゃんから聞いたよ」
「ヒメちゃん?」
「おまえの家出たら、扉のところに立ってたからビビったけど、おまえが代わりに観光役頼んでくれたんだろ? おかげで土産も買えたし、助かったよ。あ、後で金返すから」
ますます意味が分からない。この女の子は誰なんだ? そう思い、一が話し出そうとするが、それをハスキーな声が遮る。女の子にしては低めな声の出どころは、一の彼女とされている女の子からだった。
「えっと……「ね! そんなことより、マガジンくんの財布受け取りに行かない?」」
「そうだった! 金田一、財布どこにあったんだよ」
「え?「あそこのセガだよね?」……うん?」
女の子はすぐそこにあるセガを指差しながら一に同意を求めるように聞いてくるが、気のせいだろうか? こちらが何かを言おうとする前に、話を遮ってくる気が……。
「一、さっき連絡くれたでしょ? すぐそこのセガに届いてるって」
「え、そうな……「行こ! マガジン君、一」」
……気のせいじゃないかも知れない。
***
新宿駅 十六時三十五分。
マガジンの乗る予定の電車の発車時間までになんとかホームに着けた。
一がホッと一息ついていると、マガジンが話し出した。
「金田一、本当にありがとうな!」
「いや、俺は本当に何もしてないよ」
「いーや! おまえが諦めずに探してくれたから財布が無事に戻って来たんだよ。本当に感謝してる、ありがとうな」
「……うん」
財布は本当にセガに届いていた。
新宿駅に向かう電車の中で、「一がSNSで、セガを出てすぐの道に落ちていた財布を、セガの店員さんに預けたと言う投稿を見付けて、アカウント主さんに確認を取ったらマガジンくんの財布だったんだよね?」と、ヒメちゃんさん? が教えてくれた。
俺は全くそんなことをした記憶がないので、ベリーが言っていた詳しいことは行ったら分かるとはこのことだったのかも? ということは、ヒメちゃんさんはもしかして何でも屋ベリーの関係者か、ベリー本人なのだろうか?
「金田一は知ってるんだけど」
「この財布、高校の卒業祝いに、じいちゃんからもらったやつでさ」
考え事をしている一を放置して、マガジンはヒメちゃんに財布のことを話していた。
「財布って、人からもらった物を使うほうが良いってじいちゃんが言ってて、結構イイヤツ買ってくれてさ。 実は金よりこの財布落としたほうが結構ショックだったから、無事に帰ってきてマジで嬉しいよ」
「本当に良かったね」
「一、本当にいいヤツだからさ、よろしくね」
「……はい」
そして、ホームにマガジンが乗る予定の電車が入ってきて、マガジンは笑顔で帰って行った。
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