ネット何でも屋『ベリー』

はし

文字の大きさ
7 / 8

第七話

しおりを挟む
 
「ありがとうございました。えっと、あなたがベリー?」

 マガジンが乗った電車が走り去った後、はじめは気になっていたことをヒメに尋ねた。

「違う。来て」

 ヒメは一からの質問に素っ気なく返すと、返事も待たずに歩き出した。
 一は慌てて後を追い掛ける。
 ──なんだかさっきまでと雰囲気が違うような……?
 ──さっきまでは俺が話そうとしたら、すぐ被せてくる勢いだったのに、今はなんか、話しかけるなオーラがすごいし……。
 先を歩くヒメの背中を見失わないように付いて行きながらも、一の頭の中は疑問だらけだった。
 ──もしかしてマガジンが居たときの態度は営業用で、こっちが素とか?
 ヒメに直接聞く勇気はないが、気になって仕方がなく、歩きながら一の一人脳内会議は続いた。

 ***

 ヒメの後を付いて電車に乗り、向かった先は渋谷だった。

 駅を出てからもヒメの後を付いて行く。歩いてスクランブル交差点を渡り、センター街を進み、途中井の頭通りに入り、そこからさらにビルとビルの間にある細い道を歩くこと五分。
 ビルが立ち並ぶ間に、一軒の二階建てアパートが現れた。
 ヒメはそのアパートの前で立ち止まり、こちらを無言で見上げてくる。

「……えっと?」
「ここにベリーがいる」

 そう言うとヒメは、二階に通じる階段を上って行った。
 一も後に続いて階段を上りながら、(渋谷って人住めたんだな……)と謎に感動していた。
 二階に着くと、ヒメは奥の角部屋の前──ニ〇三号室。に行き、扉を数回ノックした。が、中からは何も聞こえない。 
 一が本当にここにベリーが居るのか?と疑い始めた時、勝手知ったる他人の家とばかりにヒメが扉を開けて、中に入って行った。

(鍵開いてたのかよ! 不用心だな……)

 一連の流れを見ていた一は、いろいろ思いながらも後に続いて部屋に入ろうとしたが、足を踏み入れる前に立ち止まることになった。
 なぜなら、ヒメが玄関に立っていた男に抱き締められているからだ。 

(誰!?) 

 男はヒメを真正面から抱き締めているせいか、一からは顔と手くらいしか分からないが、襟足眺めの金髪、左耳に光るシルバーの二連ピアス──どう見てもチャラ男だ……! 
 いきなりの展開に、一がどうしたらよいか分からずにいると、チャラ男(仮)が口を開いた。

「ヒメ~! おかえり~」 
「……RICKYリッキー、離して」 
「またまた~、嬉しいくせにぃ~」

 どうやらチャラ男は、RICKYと言うようだ。
(会話からして二人は恋人同士なのかな?) 

「あ! おまえ!」

 二人の絡みに入れず、後ろに立って話を聞いていた一に気付いたRICKYは、ヒメを抱き締めたまま一を指で差してきた。

「えっ! はいっ?!」

 RICKYの声は先程までヒメと話していた甘い感じではなく、どこか怒っているように聞こえ、一は無意識に背筋を伸ばした。

「おまえのダチのマガジンつったっけ? 今度から財布にチェーン付けて、腰に着けとけって言っといて」
 「はい?」──なんでここでマガジン?
「そいつが財布を落とさなきゃ、今日本当はデートだったのによ~。しかも何で、知らねーヤツが俺のヒメとデートしてんだよ。マジムカつく」
「いや、男同士だから。デートじゃないよ」
「いや、俺らも男同士だけど、デートって言うじゃん」

(なるほど。ヒメさんとのデートを邪魔されたから、RICKYさんはマガジンに怒ってたのか……ん? 男同士?) 

「……あのー、すみません」
「なーにー?」
「えっと、男同士って?」
「ヒメは男だよ? おまえ、気付いてなかったの?」
「えー!」

 ──た、確かに。声が女の子にしては低めだなとは思ったけど……。
 一が思い当たる節に気付いている間にも、RICKYは爆弾を投下していく。

「ヒメは女の子の格好すんのが好きなんだよな? なんだっけ? 女装男子? んで、俺の彼女ね」
「えー!(やっぱりー!)」
「ま、夜は俺が女だけどね! なんつって!」
「えっ」

 そんなことまで言ってもいいのかと驚く一と、なぜか自慢気に話すRICKYの間に挟まれたヒメが呆れたように口を開いた。

「良いから、早く中入ろ」

 そう言うとヒメは抱き付いているRICKYをくっ付けたまま、靴を脱いで、部屋に上がって行く。
 一も慌てて後を付いていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

処理中です...