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「大丈夫?」

 話し終えてぼうっとしていると、机の上に置いていた僕の手を、目の前の人物が優しく握ってくれた。

「大丈夫だよ。ありがとう――あきらちゃん」

 キホさんが亡くなってから、三年が経った。
 今、僕の目の前には、郵便局で一緒に働いていた鳴神あきらちゃんが座って居る。

「途中で私の名前出てきて、ビックリしたよ」
「はは。一応ね、出さないと」


 村を出たあと、僕はなんとなく海が見たかったと言う理由で、海沿いの町に引っ越した。
 もう誰とも深く関わらない。
 そう決めて、一人静かに暮らしていた。

 あきらちゃんに出会うまでは――。

 あきらちゃんとは、この町に来て半年ほど経った頃、海岸を散歩していたときにたまたま出会った。
 僕が仕事を辞めてすぐ、あきらちゃんも家の都合で仕事を辞め、地元この町に帰ってきたそうだ。
 当時は『なんで今まで出会わなかったんだろうね』と、二人で笑いあったっけ。

 あきらちゃんは再会してから、ニ回も付き合っていた彼女に、浮気相手と自殺され、さらに自殺した原因は僕の存在だったことで、人と深く関わらないように距離を取ろうとする僕に、何も聞かずに寄り添い続けてくれた。
 今こうしてちゃんと生きていられるのも、あきらちゃんのおかげかもしれない。

 だから、彼女に聞いてほしかった。


「いきなり重い話してごめんね」
「ううん」

 あきらちゃんが気まずそうな顔になる。

「実は……前の村に居たときに郵便局のおばさんとかが噂してるの聞いちゃって。なんとなく知ってた」
「あ、そっ……か」

 よくよく考えたら、彼女のことは○○さんや刑事さんも知っていたし。キホさんのことは、村で起きたことなのだから。知らないほうが変だよな。
 そう考えると、あきらちゃんは知っていて僕と一緒に居てくれたんだなあ。
 ――こんな疫病神って言われた僕と。
 心がじんわり温かくなる。嬉しい。

「で、でも! 君の口から直接聞けて良かったよ」

 歯切れが悪く返事したのを、僕が悲しんでいると捉えたらしいあきらちゃんが、焦ったように話す。

「あと! 私は浮気なんかしないから、心配しないでね!」
「……うん」

 僕たちは一年前から付き合っている。
 
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