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後半戦

フリーキック

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「おい慶介ーとっとと進めよー」

「え、俺センターバックだよ?フォワード前行ってよ!」

「しゃーねえなぁ、めんどぉ」



変だな、相手にやる気が見られない…そもそも全然楽しそうじゃないし、まるでうちの太郎や大輔とは違うな。

まさか、舐めてるのか?こんな大事な試合で対戦相手を舐めるって…それが強豪なのか?

「ディフェンス下がれ下がれ!」

「まず、一人!!!!」

「やべ、あっさり抜けられた!」

真があんなにあっさり突破された?!

「守備ざっこw」

「うおおおおっ!」

「ちっ、クソつまんな!」

「蒼、ナイスカバー!」
「誠、前パス!」

「おっけっええええ!」

誠の得意なフライパス…狙った先は、

「堂又ああああああっ!」

「っしゃあ!さあ、どうやっ、!」

「取った!」

相手ディフェンダー誰だ?なんだあの子…一瞬で堂又から奪った!?

「こんなあっさりと、、、まじかよ」

「慶介サイドサイド、サイドに早くパスよこせ」

「真矢頼むっ!」

「げっ、外に出るわこれフライパス下手すぎだろあいつ、ゴミだわ」

トンッ

「は?なんで」

「おいゴミ、今の下手すぎだろ。どうにかしろよ」

「いや、でも今のは取れるでしょ…!」

「はぁ、呆れるわ」

「え、なんでだよ…」



箱田サッカークラブは、随分と雰囲気が悪いな。なんつーか…協調性がない?って言うのかな。

いや、なんか変だ。このチームまるで、あの守備の子だけ同じチームじゃないみたいだ。

「真矢パスくれー」

「ういっ!」

「パスカット、パスカット!」

「パスカット出来るならしてみろ雑魚w」

「くっそ!」

「俺が、止めないとダメだろっ!!!」

「松田!」

「サイドバックがサイド開けるとか、馬鹿?w」

「馬鹿で悪かったなああああああ!」

「走っても無駄だよ…うちの有一右ウイングは速いからさ。」

「余裕で避けちゃうよ、雑魚w」

「くっ、、、そ!」

「松田焦るな!大丈夫、センターバックが止める!」

「しつけえなこいつ、一回下がってっと」

「うおおおっ!」

「松田!」

ピーッ

「足かけられたわ、いってええw何してくれてんだよw」

「…ごめ、」

「ごめんなさいだろ?ガキ…後、ムキになったら終わりだからな?雑魚w」



松田のファールでゴールネット右斜めからの、少し離れめの……フリーキック?だっけ。



フリーキックとは相手からのファールを受けた位置から相手の守備なしでボールを撃てるコーナーキックと同様の、セットプレー



「誰が蹴る?」

蹴るプレイヤーはチームから1人、決めることが出来るんだっけ…

「俺、蹴りたい!」

「…ぷっははははw何言ってんのお前wお前が蹴っても入るわけねえじゃんw」

「でも、蹴りたい!」

「反論すんなってwいいわ真矢頼むわ」

「おうw」

「っ……」

「うわっ!!!思いっきり外しちゃったわwごめーんw」

「雑魚相手だから気にしなくていいよw」

「ぷはははははw」

なんで俺に、蹴らしてくれねえんだよ…蹴りたい、俺だって…俺だって、センターバックでも点を入れてやりたいのに。

なんで誰も俺に輝けるチャンスをくれないんだよ…!!

あいつらばっかり、あいつらばっかり、あいつらあいつらあいつらっ、、、っ!

「サッカーうま!ねえねえきみも僕たちの目指してるクラブいっしょにめざそ!!」

「ほんと?ぼくといっしょにサッカーしてくれるの?やったあ!」

どんなに暑くても、雨が降ってても…俺たちは毎日集まって練習したじゃねえか、、なのにたった1人、たった1人、、

「堂又落ちたんだってよwあいつもう終わりだなwこれからは真矢と俺と慶介の3人だけで練習な!w」

たった1人、クラブ試験に落ちた奴がいて、それがたまたま堂又だっただけだ。

なんで堂又を雑魚なんて言うんだよ…!!!

俺が反発をするようになってからは真矢と幸一の2人…いや、クラブ全体からゴミのような扱いを受けるようになった。

理由は単純。クラブのエースである幸一に反発してしまったから…

 ◆
ピーッ!

「おいおいまたファールかよw荒いねえ君たちはw」

「なあ、今度こそ…俺に蹴らせてくれないか」

「だからーw」

「俺は本気なんだよ。」

「っ…!なんだよ、なんで怒ってんだよ。なに?俺になんか文句でもあんの?」

「いいから蹴らせろ」

「まあいいじゃない幸一wそんなにサッカーが甘くないってことを思い知らせればいいさw」

「そらそうだなwんじゃお前、蹴ろよ。入んなかったら殴るからな?w」

集中、集中だ。

入る…絶対入る。

コンコンッドッ!

ボールは柔らかく、ゆっくりと回転、曲がって、そのままキーパーの取りずらい離れた位置へ

「…入った!!!」

「よっしゃ!よっしゃあああああ!」

入った!入った!やった!やった…

ピーッ 前半終了

「つまんな、まじ面白くねえわ」

「…なんで、だよ。なんで誰も喜んでねえんだ、?」

「当たり前だろ、チームのみんながお前が俺に殴られるのを期待してたんだからよ。」

「そうだよな、まじ冷める」

「それな」

言わないと、言わないと…ダメなんだ。言ってやんねえとなんも、、、変わんない!

「ざっけんなああああああああ!はぁ…はぁ…、」

「何叫んでんだよ、うっさ」

「幸一、、だけじゃねえチームの全員だ!!なんで、なんで誰も全力で戦わないんだよっ!!!!全力で、ゴールを狙いにいけよ!!!!」

「はぁ?誰が言ってんだよ」

「お前ら、俺がいなきゃどうすんだよ!!」

「エースは俺だ。お前が居なくたって俺が点を入れんだろうが!!!」

「ふざけんな!相手ばっかり煽って、結局1点も入れてねえじゃねえか!!」

「てめえほんとに黙れよ」

ドンッ!!

「いっ、、、て。点入んなかったら殴るって言ったじゃねえかよ。俺は点を入れた!約束も守れないガキがよ…、相手をガキって言ってんじゃねえよ!!!!」

「おい、2人落ち着け、」

「でも、監督!」

「…黙れ慶介。後半ではお前を使わないからな。」

「は…!?」

「ほら、早く準備しろお前ら。まだ0-0だと思え。」
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