学園の王の愛はいらない

starry sky

文字の大きさ
165 / 202

164

しおりを挟む

 夏生が松田を黙らせる事に悪戦苦闘しているのを見て羽田は取り敢えず仲裁に入ろうとした。だがその時、

「夏生!」

鋭く冷たい声が飛んだ。会場のざわめきの中でもハッキリ届くその声に夏生の心臓が跳ねる。
 人波の中を歩いてくる颯斗は高校の頃よりも背が伸びて筋肉の厚みも違う。上等なスーツを着こなす体躯は圧倒的で、漂う怒気がオーラの様に人々を押しのける。まるで彼が通る為に自然と道が開けていくかのようだ。

「何してる」

高い位置から睨み見下ろされ、松田にぶら下がっていた夏生は慌てて体を離した。

「何でもない!ただ、この人が酔って変な事言ってたから・・・」

「いや、酔っておねだりしたのは・・・」

「わー!わー!わー!!」

夏生はまた慌てて松田止めようとしたが「いい加減にしろ!」と颯斗が低く唸る様な怒声を発した。
夏生は肩を縮こませたが、松田は笑って更に煽った。

「あの時の広瀬が俺にした甘え方と声が忘れられないんだよな」

颯斗の眉間に深い皺が刻まれた。

「夏生・・・お前・・・」

「違う!ないない!」

覚えてないけど!ヤってはいない!!

ここでは詳しく言えないが、手を激しく左右に振って否定した。颯斗の怒りを鎮めなくては。

「酔ってこの人の家で世話になっただけ!俺があんま覚えてないからテキトー言ってからかってんだよ!」

夏生が必死に弁明するも、颯斗は松田を睨み据えたまま拳を握りしめる。

「ちょ、ちょっと待て!落ち着けって!」

羽田が三人の中に飛び込んだ。

「ここ会場だぞ、やめろ。みんな見てる!」

確かに視線が集まり、空気が張り詰めている。
その中で颯斗は羽田を一瞥し「夏生、行くぞ」と短く言って手首を強く掴んで歩き出した。

「えっ、ちょっ・・・」

抵抗する間もない。
あったとしても颯斗の機嫌を更に損ねたくはない。ようやく会えたのだ。
 夏生は引っ張って連れて行かれながら羽田の方を見た。
羽田は何度も頷いて「行け」と手振りをしてくれている。
後の事を頼んで良いのだろうか。やけに物分かりが良い。
 そう言えば今日は羽田の様子もおかしかった。酒も飲んでないのに変な絡み方をしてきた。颯斗の登場でそんな事は吹っ飛んだが。
松田の事も気になるし仕事の事も考えていたらあっという間に最上階に着いた。
 エレベーターホールでレストランかバーの利用客とすれ違った。
カップルの女の方が颯斗を見ると一瞬で釘付けになり、すれ違う間もずっと颯斗に視線を送っている。
話し声も急に甲高くなり耳障りで夏生は顔を顰めた。
女は手を引かれて後に続く夏生の顔を見てギョッとした。

見てんじゃねぇよ・・・

心に渦巻く黒い感情が表情に出ていたのかもしれない。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

【完結】生まれ変わってもΩの俺は二度目の人生でキセキを起こす!

天白
BL
【あらすじ】バース性診断にてΩと判明した青年・田井中圭介は将来を悲観し、生きる意味を見出せずにいた。そんな圭介を憐れに思った曾祖父の陸郎が彼と家族を引き離すように命じ、圭介は父から紹介されたαの男・里中宗佑の下へ預けられることになる。 顔も見知らぬ男の下へ行くことをしぶしぶ承諾した圭介だったが、陸郎の危篤に何かが目覚めてしまったのか、前世の記憶が甦った。 「田井中圭介。十八歳。Ω。それから現当主である田井中陸郎の母であり、今日まで田井中家で語り継がれてきただろう、不幸で不憫でかわいそ~なΩこと田井中恵の生まれ変わりだ。改めてよろしくな!」 これは肝っ玉母ちゃん(♂)だった前世の記憶を持ちつつも獣人が苦手なΩの青年と、紳士で一途なスパダリ獣人αが小さなキセキを起こすまでのお話。 ※オメガバースもの。拙作「生まれ変わりΩはキセキを起こす」のリメイク作品です。登場人物の設定、文体、内容等が大きく変わっております。アルファポリス版としてお楽しみください。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

振り向いてよ、僕のきら星

街田あんぐる
BL
大学4年間拗らせたイケメン攻め×恋愛に自信がない素朴受け 「そんな男やめときなよ」 「……ねえ、僕にしなよ」 そんな言葉を飲み込んで過ごした、大学4年間。 理系で文学好きな早暉(さき)くんは、大学の書評サークルに入会した。そこで、小動物を思わせる笑顔のかわいい衣真(いま)くんと出会う。 距離を縮めていく二人。でも衣真くんはころころ彼氏が変わって、そのたびに恋愛のトラウマを深めていく。 早暉くんはそれでも諦めきれなくて……。 星のように綺麗な男の子に恋をしてからふたりで一緒に生きていくまでの、優しいお話です。 表紙イラストは梅干弁当さん(https://x.com/umeboshibento)に依頼しました。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

この胸の高鳴りは・・・

暁エネル
BL
電車に乗りいつも通り大学へと向かう途中 気になる人と出会う男性なのか女性なのかわからないまま 電車を降りその人をなぜか追いかけてしまった 初めての出来事に驚き その人に声をかけ自分のした事に 優しく笑うその人に今まで経験した事のない感情が・・・

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

シスルの花束を

碧月 晶
BL
年下俺様モデル×年上訳あり青年 ~人物紹介~ ○氷室 三門(ひむろ みかど) ・攻め(主人公) ・23歳、身長178cm ・モデル ・俺様な性格、短気 ・訳あって、雨月の所に転がり込んだ ○寒河江 雨月(さがえ うげつ) ・受け ・26歳、身長170cm ・常に無表情で、人形のように顔が整っている ・童顔 ※作中に英会話が出てきますが、翻訳アプリで訳したため正しいとは限りません。 ※濡れ場があるシーンはタイトルに*マークが付きます。 ※基本、三門視点で進みます。 ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...