学園の王の愛はいらない

starry sky

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「会社に本人が直接電話してきたんだ。夏生との仲を取り持って欲しいと」

「⋯あの、ホテルに呼び出された時か?」

「ああ、少し行き違いがあって夏生がヘソを曲げて寮を飛び出したと。居場所を知りたいと言われて俺は心当たりを教えた。その後、夏生が見つかって仲直りにお泊まり会をするから荷物を持ってホテルに来て欲しいと言われた」

「お、お泊まり会って!?」

「最近の男子高校生がお泊まり会をするのか知らんが、俺はお前が綺堂と仲良くしてくれるなら何でも良いと思って直ぐに駆けつけた。食事もせずに帰ったのは一刻も早く行き違いを修正してもらいたかったからだ」

顔を上げた冬哉が夏生を見て言った。

「出来たんだろ?仲直り。お前は昔から人付き合いが上手かったからな。双葉の御曹司なんて難しそうな奴、仲良く出来て大したもんだよ。このままずっと良い友達として関係を続けてくれたらウチの会社の老害どもも牽制出来るはずだ」

「ちょっと⋯」

「海堂で出来た絆は特別強固で一生モノ。どこかの社長がそう言ってた。俺はそれに期待してる、今後も頼むぞ」

「ちょっと冬哉⋯」

「なんだ?」

  なんとなく少しずつ話がズレていると感じる。
  冬哉は転校前、夏生に「双葉の御曹司をたらし込んで来い」と言っていた。
あれはただの言葉の綾だったのかも。
海堂の「絆」の事も、言葉のまんま受け取っているようだ。
やはり学園に通った男子生徒しか知らない暗黙事項という事か。
夏生の荷物をホテルに運んだのも、夏生達を二人にしたのも、性的な意味はなかったのかもしれない。
綺堂が都合よく説明したのだろう。夏生に対しても。
  冬哉がこのところずっと連絡してこなかったのは本当に忙しかったからだし、兄として不甲斐ない気持ちもあって会いづらかったから。
   そう考えると夏生は心が軽くなった。兄に売られたのでは無いという事にホッとした。
だが、意図せず夏生が綺堂と関係を結んでしまった事を知ったら兄はどうするのか。
心を痛めるのだろうか、それとも喜ぶのか。
 
もう良い。言ったって気まずいだけだし

 綺堂に抱かれてるなど恥ずかしくて言えない。

「会社、大変なんだな⋯俺全然知らなくてごめん」

「話してなかったから知らなくて当然だ。俺も余裕が無かった。今後は色々共有し合おう」

「おう⋯」

 10も歳が離れているせいでまともに相手にされた事が無かった。本当に小さい頃は遊んでくれていたが兄も長男として勉強する事が多く忙しい子供だったバズだ。
仲の良い兄弟に憧れていたがこれはこれでもう良い。

会社も守んなきゃだしな

「ところで今日、来てるぞ。お前のお友達」

「え?誰?」

「今の流れで言うと綺堂颯斗のことだろうが。⋯ほら、あそこに」

そう言って冬哉は満面の笑みでティールームの入口の方に向かって軽く手を挙げた。

「あ⋯」

 スーツ姿の綺堂がこっちに向かって歩いてくる。
 長身で肩幅があり、厚い胸板と引き締まった腹筋で見事に三揃えを着こなしている。
想像した通りだ、まさか本当に見ることになるとは思わなかったが恐ろしく似合っている。
 ゆったりと歩く様子は尊大にさえ感じ、とても高校生に見えない。
 仕立ての良さそうな上下はイタリア製の生地なのか光沢があって柔らかそうだ。
綺堂の逞しい体をピッタリと包んでいるのに色気はそこここにこぼれ落ちている。
 彼の側を通る人々は男女問わず振り返って行くし、夏生達の近くのテーブルの女性客は綺堂に熱い視線を送って自分に気付いてもらおうとしている。
 
「なんだ⋯今日はオーラがすげぇな」

 学校では黒髪ストレートの刈り上げマッシュのスタイルだが、今日はスーツに合わせてネオ七三分けにして顔周りをハッキリ見せている。
男らしい整った目と眉が露になり見る者を強烈に惹き寄せている。
悔しいがメチャクチャかっこいい。全てが完璧に似合っている。
優雅に歩を進める姿は洗練されていて
サラブレッド、プリンス、貴族、貴公子、そんなワードが頭の中を飛び交う。

「本当に突き抜けてるよな。あれで17歳とは思えない」

感心して呟く冬哉に夏生は「うん」と上の空で返事をした。

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