学園の王の愛はいらない

starry sky

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    強引に連れ込まれた個室は10人位がゆったり過ごせる広さの部屋で、落ち着いた内装と高級感のある調度品で整えられていた。
窓から夜景が見えるが今はそれどころじゃない。

「放して貰って良いっすか?大丈夫なんで」

ぶつけた所の一過性の痛みは引いた。何とか自分で歩ける。
    目の前の男は以前、品川のホテルで会った綺堂の知り合いだ、多分。
でも綺堂の態度は友好的ではなかった。
この馴れ馴れしさも何だか警戒心を誘う。
それでも夏生がキッパリ言うと男は残念そうに手を放して「じゃ、そこ座って」と近くのソファを指した。
夏生が頭を下げて座ろうとしたら氷がポトッと絨毯に落ちた。
    店員が持って来てくれたタオルで髪を拭き、頭から被った液体は水だと言うのでスーツのジャケットだけ預けて乾かしてもらうことにした。

「何か飲む?」

テーブルの上にはティーセットがあるだけで料理などはない。
飛び出して行った女とは話をしていたらしい。
どうしてあんな勢いで飛び出すような展開になったのだろう。

「いいっす」

「そんな警戒しないでよ。前に会ったの覚えてる?」

「ホテルで会いましたよね」

「そうそう、レセプションパーティ。俺も出席してたんだよ」

「はぁ⋯」

    あまり話す気分じゃない。夏生は適当に流してジャケットが乾いたらすぐに帰ろうと考えていた。
このビルにいつまでも居たくない。

「さっき廊下でキミを見つけた時、運命感じちゃったよ」

運命?キモイな。そういう事言うやつ好きじゃない、ジャケットまだかな⋯

「夏生くんって言うんだよね?ちょうどキミの話をしてたところだったから。まさか本人が目の前に現れてくれるとは思わなくてビックリした」

何で俺の話?さっきの女と話してたってこと?つかあの女、人にぶつかっといて居なくなるとかありねぇ⋯

「噂になってるよ。綺堂颯斗が男の恋人に本気になってるって」

⋯え

「海堂でも注目の的なんでしょ?浮名ばっかり流してた颯斗が女遊びをパッタリやめてキミ一人をかまってるって」

夏生が男の顔を見ると「やっとこっち向いた」と嬉しそうに笑った。
    男前だと思う。高い鼻筋も繊細な顎も、彫りの深い目元も。ほんの少し目尻が下がって、笑うと親しみやすい雰囲気も含めて女にモテるんだろうなと思う。
顎の辺りまでの金髪は今日は下ろしているがとても似合っている。
よく見たら髪のハイライトがバレイヤージュだから派手に見えるのだ。かなりキレイに入っていて立体感が良い。
端正な顔立ちとあいまって一瞬西洋人とのハーフなのかと思ってしまう。瞳の色も、

「そんなに見られると照れるんだけど」

「いや、カラコン入れてんのかなーと思って。オシャレすね」

「分かる?ちょっと青なんだよ。ドリーミーグレーって色なんだけど」

よく見えるように顔を近づけて来たが夏生はあわてて身を引いた。

「いいす、いいす、話それてすいません!それよりさっき言ってたのって⋯」

「颯斗と付き合ってるんだろ?」

「⋯っ⋯」

「颯斗もキミに本気なんだね。今日のパーティに婚約者じゃなくてキミを連れてくるなんて、周りに存在を知らしめようとしてるんだよ」

「何のために⋯」

そんな、堂々と婚約者以外と付き合ってる事をオープンにしていいのか。
しかも夏生は男だ。

「よくある事だよ。地位のある人間が本妻以外とも家庭を作るなんて。結婚は決まった相手としないといけないけど、恋愛は本当に好きな相手とするんだ。愛人って言葉で片付けたら可哀想だけど、まぁそういうこと」

「は!?」

「普通は隠すよね、日が当たらないところに。でも颯斗は今から夏生くんの事を表に出して存在を確かなものにしておきたいのかな?婚約者より下に置かない為に。あいつにそんな事させるなんてキミ大したもんだよ」

混乱してきた。
そんな理由でここに連れて来られたと言うのか。

俺に何も言わずに!?冗談じゃねぇ

夏生はじっとしていられずに立ち上がった。
綺堂が本当にそんな事を考えているなら止めなくてはいけない。
夏生にそんなつもりはさらさら無いのだ。
だいたい今の関係は長くても卒業までと言ったし、綺堂も承諾した。

あの野郎⋯

でもまだこの男の話を鵜呑みにするわけにもいかない。
男を見下ろして聞いた。

「何なんすか、アンタ。颯斗とどんな関係ですか?」

男は笑顔で答えた。

「やっと興味持ってくれた?俺は綺堂じょう、颯斗の従兄弟だよ」

コンコン!

その時部屋のドアがノックされた。
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