僕たちとは

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第1話

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 その日は満月に満たない8月のある日のことだった。クーラーを消したまま寝てしまっていたため背中にや首にびっしり汗をかいていた僕はベットから起き上がりエアコンのリモコンを探す。リモコンを最後に置いた場所なんて覚えてない。置くときにわざわざ覚えようともしない。手探りで辺りを探してみたけど見つからない。蒸し暑い部屋に耐え切れなくなった僕は部屋の窓を開け涼むようにした。こんな真夏の真夜中に窓を開けても涼しくなんかない。案の定とみるばかり元から期待していなかった生温くて湿っぽい外の空気を吸って小さくため息をついた。真夏はエアコンをつけてばかりだから久しぶりに窓を開けて自然の空気というものを吸ったな、そう思いながらたまに通る車とか人とかを目で追ったりはぼーっとしていた。僕の家は都会でもなければ田舎でもない。自転車で15分くらいすれば駅に着くし歩いて5分くらいでコンビニにも着く。近くに中学校もあるしスーパーもある。夜は賑やかではない、これが僕にとっては大好きな時間。こうやって窓を開けて二階の部屋からたそがれる時間がこんなにも気持ちよかったことに今気がついた。誰にも干渉されず誰にも見られてない無常の時間。誰にも見られていないと思っている人を見ている時間。たまに吹く風が心を揺さぶる時間。この静かで暗くて誰も僕のことを考えていないような時間が心地よくてたまらないな。僕は人がたくさんいて賑やかな場所が好きじゃない。人の気持ちは考える方で気遣いもできる、でも考えすぎていつも悩んじゃうからいつも少人数のグループの方が良いと思っている。一人が一番だけど。この時間はそんな僕と似ているような気がするんだよな。人は同じ気持ち、同じ考えを持った人と一緒にいたがると思う。似た者同士ってやつ。そいつといると落ち着く、そいつといると楽しいとか。だから僕はこの時間が好きなんだな、って今、思った。そしてこの時間も僕の様な人間が好きなはずなんだ。

 右のほうから腕を組んだカップルが歩いているのが見えた。女の方はタンクトップ姿にデニムのショートパンツ、髪の毛はてっぺんにお団子を結んでいる。男の方はティーシャツにスウェット、襟足長めの黒髪。2人とも楽しそうだ。彼にもたれかかりながらスタスタと歩く彼女、ポケットに手を突っ込みなんとなくだるそうに歩く彼氏。彼女が何か喋っている。聞こうとしなくても周りが静かだから耳に入ってきてしまう。「ねぇ~手繋ぐのと腕組むのどっちが好きぃ~?」
酔ってるのか酔ってないのか分からないが彼氏にデレているのがよく分かるように彼女は男に聞いた。
「どっちも好きだよ。」
見かけによらず少しだるそうに男は答える。まあそれが彼の性格なのだろう。恋人は常に均衡だと思う。片方が重いくらいに好きならばもう片方は究極にその反対となる。逆に片方が自分を見てくれなくなったときにもう片方は異常なまでの愛情を相手に注ぎたくなる。それが恋人なんじゃないかな。その差がほぼなくて両者とも同じ程度の愛情を持っていれば良い関係が続くと思うんだ。別れるときってのは、元は2人が愛情のコップをもって同じ量のジュースが入っていたのに、なぜか相手のコップにジュースが入っていなくて自分のコップに大量にジュースが入っていたりとか相手のコップにジュースが大量に入ってる時とか、相手のコップもしくは自分のコップが既に割れてしまっている時、なんだと思う。コップに同じ量のジュースが入っている状態を保つのは難しい。今見てるカップルのコップの中はどんなんなんだろうな。半年以内に男の方のコップが割れていそうだな、そう思ったら不意に笑ってしまった。いつからか僕は人の不幸を笑うような人間になってしまったように思える。中学生までは学力は高い方だった。先生からもお気に入りで学年委員にも入って委員長もやったことある。さすがに生徒会はやりたくなかったけど高校受験の内申点を得るための努力はしていたし、その努力が報われ公立で県内で偏差値が上から4番目くらいの高校にも入れた。サッカー部に入って部員が多い中大会にも安定してメンバー入りしていたから本当に充実していたな。それから高校、大学と平凡な生活を送っていたんだけど、やっぱ大人になるにつれていろんなことを経験するんだなぁとつくづく思うんだ。子供の時は純粋で、嘘はついてはいけないだとか、人のことを馬鹿にしてはいけないだとか、電車でお年寄りに席を譲るとか、先生に言われた、お母さんに言われたとかでそれを守ることに必死だった。でも大きくなるにつれてそうじゃなくなってくる。今だって別に社会不適合者ではない。周りから信頼されることもある。でもやっぱあの時の純粋な自分よりは汚れて、何よりもやっぱり自分が可愛くて、自己勝手なところとかが勝ってしまうんだよな。心に住み着く悪魔みたいなやつが浮き出てくるんだよ。人間てそうだよな。みんな性格悪いんだよ。性格良いやつなんていないんだ。みんな自分が一番可愛いんだ。自分か相手どちらかが今死ななければならないって言われたら自分を選べないよ。みんなそうだろう?岬だってそうだろう?成美だってそうだろう?そんな中で僕は友達を作って彼女を作って、自分の作ったコミュニティで生きている。みんなそんな感じだろ?それが普通なんだよ。きっと。
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