相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

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1:出逢いと別れ

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とは言え、『邪』のつくもの全てがそのように動くとは限らないことも確かで、その場合は討伐されるのも仕方ないとも思っていると言う。仲間意識はあったり無かったりとも。
近くに存在せず、互いに把握をしながら移動することもあるそうだ。勿論同じ場所へではないだろうが。
世界を巡って、刺激を与えるのが本来の役目などと言う。 

そして『邪』のもの同士であっても、目に余る場合には人間の討伐隊に任せるより早く、他の『邪』のものが始末しにいくこともあるのだそうだ。壊したいわけではなく、世界を強くすることが使命であるから。下手に暴れるものが居るくらいなら頭数を減らし、各々の瘴気を少し強めに撒く方が効果的だなどと言う。 

また、『邪』のつくもの達の死骸は、とある方法で処分すると緑豊かな山になるらしい。勿論人間たちは知らないから素材だ肉だと剥ぎ取り蘇らないように浄化する。だから新しい山が出来ないし、土地の浄化にも時間がかかるのだと。

お伽噺と言われるほど昔の書物にあるような、瘴気にさらされた土地が何十年何百年という期間をかけて癒されていく……といった話は、特別な方法ではない手順で葬られたからに他ならないと。
「……」
『イメージ変わった?』
調子が狂う程度には、と神妙に肯定をした。 

そのあと、ささやかな星の下、蛇に契約の言葉を聞きながら行使した。双方納得の上の、契約だ。真名を与え、さて次は指先から血を与えようと準備をした、のだが。
事もあろうに舌先を噛ませてくれなどと言うから、感情のまま力任せに締め上げてやろうかと思った。
俺はまだ子供だ。それにお前もだろうが。 

……どこを噛ませたかは俺とこいつの秘密だ。


「お前の瞳はブラッドベリーみたいだな。うまそうだ」
『食べるかい?』
「いらん」
きみなら良いのに、などと言うのを聞き流す。

うまそうな色をしてるとは言えお前のそれは間違いなく目玉だし、ほとんどの人間にとって目玉は食い物ではない。
なにより2つ揃ってなくては不便だし意味がない。
「普段は……そうだな、お前のことはベリーと呼ぶか」
『食べたくなったらいつでもあげるよ』
「いらん」
上機嫌なベリーは俺の右腕に絡み付いて、器用に肩へやってきた。
太さと長さと、心なしか艶やかな鱗になったように思う。先程までと大違いだ。

「……育ったか?」
『うん、お陰さまで』
自然と放出していた魔力を吸われていたからなのか、契約のとき消費する魔力はそこまで多くは必要なかった。
恐らくは……短時間ではあったが、触れあいも含めて俺が消費していた魔力が蛇の中で十分に蓄積されていたこと。
そして本当に産まれたばかりの幼体であるから、一度にたくさんの魔力を必要としなかったからなのだろう。
それと、この蛇自身が受け取りを不要と断じたか。本来なら少しでも多く奪おうとするところだろうに。
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