相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

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1:出逢いと別れ

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「なら鑑定を教えろ」
『うーん……それも良いんだけど、そろそろ日が昇るから一旦帰らないかい?』
俺の頬のあたりに頭を擦り付け、空を見上げたベリー。つられて見上げれば確かに、木々の合間から覗く星空の端、朝日が昇るのを感じられそうな、ほんの少しの明るさを感じる。とは言え普通の人間の目から見た場合はまだまだ夜中だ。俺たちは闇の魔法を纏っているために理解出来ただけ。目元に集中することで星の光を頼りに視界の補助をしているから、星以外の光があれば眩しさを感じるのだ。
『もう少ししたら人型もとれると思うから、待ってて欲しいなあ』
「そうか」
興味はあるが、期待はしないでおこう。
ベリーを肩に乗せたまま立ち上がる。闇に紛れていられるうちに帰りつかなくては面倒なことになると思い出したからだ。 

思っていたより深い場所へ来ていたけれど、ベリーも傍に居るからか道にも迷わず抜け出せた。
屋敷を囲う塀の傍まで来たら、足元に風の魔法を使う。ふんわりと浮く身体は、小枝に引っ掛かることもなく無事に敷地内へと運ばれた。あとはこのまま部屋の近くの窓から戻るだけだ。目立たないその窓の鍵を外してある。専ら出入りはそこからしていた。
『へえ。用意が良いじゃないか』
「正面のドアはさすがにな」
闇の魔法を纏っていても、やはり近くまで寄れば違和感は感じる。潜在能力が高ければそもそも惑わされにくい。魔法防衛力とでも言うべきか。仮にも伯爵家であり、そこに仕える者達であるから、それなりに察せられるはずだ。……多分。

俺の部屋は奥まっているから、部屋に戻る道すがらで見付かるのも面倒だ。それに窓を開けるのとドアを開けるのでは必要な力も違う。
『つまり正面のドア、開けられないんだ』
「違う」
『んふふふふっ人間の屋敷は豪勢なドア使ってるって言うもんね』
「違うと言っている!」
こうしてむきになればなる程自らさらしているも同然なのに、なぜだか否定せずにはいられない。

因みに自室の窓ではなく近くの窓なのは、自室の方が落下防止として特殊な形状に作られているからだ。侍女が開けることもあるから力は必要ないが、コツは要る。それと、ある程度の身長。特殊な形状ゆえか、開け締めの時にやや大きな音がなるのも避ける要因のひとつだ。
ベリーと軽口を叩き合いながら部屋の傍の窓があるところへ回り込み、周囲の気配を確認してから足元に風の魔法を使う。
ふうわりと身体を浮かせ、廊下を誰かが歩いていないかを確認して、そっと滑り込むように忍ばせた。そして鍵を閉める。

『……へえ。暫く見てたけど、やっぱりきみ、魔力が高いねぇ』
直ぐ傍の自室のドアをくぐったとき、肩に乗ったベリーが染々と呟いた。服を脱ぐため、ベッドへ降りろと腕を伸ばして促すと、察したらしいベリーが大人しく蛇行する。
ああ、濡れたタオルで拭いてからにすれば良かったろうか。……まあいいか。
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