相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

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1:出逢いと別れ

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「魔導書を読むようになってから、色々と試していたからな。同年代よりは多いと思っている」
『それでなんで鑑定覚えなかったのさ』
呆れたような声で言われるが、必要性を感じなかった以外に言いようがない。 

ある程度まともに働けば、信頼できる能力者と縁ができることもあるだろうし、本当に必要ならばそのときに改めて学べばいいと思っていた。
『心配になるなあもう』
「心配される謂れはないと思うが」
もう数時間とたてば改めて着替えることになるが、寝巻きに袖を通してベッドに近寄る。
『するじゃん! おれときみ、もうただならぬ仲ってやつなんだよ!?』
「ただ……?」
なにを言ってるんだこいつ。と、思いながらもベッドからすくいあげて枕元へ運ぶ。 

『……腕に巻き付いててもいい?』
「潰れるだろ」
『多分平気。……もう少しなんだよねぇ』
森の中で遭遇した時より確かに育っているとは思うが、さすがに潰れると思う。ベッドが沈むとは言え、痛みとかあるんじゃないだろうか。

妥協して腕を伸ばして寝ることにして、腕を枕にするため巻き付いてきた。
『はぁー……ほんときもちぃ』
「その気持ちいいってのはなんだ」
属性との相性はわかる。慣れた感じだとか過ごしやすさを感じる事が出来れば、その属性と相性がいいとよく言われる。
だから自分と相性のいい属性を簡単に調べるときには、そう言った場所に赴いてみる方法もある。
その他には神殿に布施をだして鑑定してもらう方法だ。これが一番間違いが少なく確実ではある。 

『何て言うか……全身撫で回してもらってるかんじ……』
なんだそれは。気持ちいいのか?
『まあ取り敢えずさ、少しでもいいから寝ておきなよ。おれと契約したし、今も魔力もらってるし』
「そうだな……」
『鑑定は夕方くらいからにしよう』
「いつでもいいぞ」
言いながら目を閉じれば、なる程、確かに疲れていたらしい。あっという間に意識が沈んでいた。 

*****


「坊っちゃま、朝ですよ」
「ん……」
同性だとわかるのに、やたら甘ったるい声で呼び掛け、腹のあたりをぽんぽんと叩く。そんなことをされたら眠たくなるだろうが。やめろ、ベリー。
「……ん?」
「んふふふっ、さすが。もうバレた」
うっすら目を開いて見上げる。とろりとした瞳は昨日散々見ていたブラッドベリーだ。蛇の時が闇色だったし、人型を取れるようになっても黒い肌かと思っていたが、どうやら色白らしい。髪の色が、身の回りでは珍しい闇色だ。 

平民ですら色が濃くても焦げ茶だとか濃い灰色にしかならない。闇色と言うのはとても珍しい。
手を伸ばして、ふんわりとした髪に触れてみる。今度は分かりやすくうっとりした顔で俺の手にすり寄ってきた。
……犬猫ペットみたいだな。
「起きましょうか、坊っちゃま」
「やめろ。気色悪いな」
脇の下をすくわれ、上体を持ち上げられた。
枕をクッション代わりにベッドヘッドに立て掛け、そこに凭れさせられる。手際がよすぎる。なんだこの至れり尽くせりみたいな動きは。

「メイドの方が良かったかい? 女にもなれるよ。まぁ、幻覚だけれどね」
言うが早いか、姿が陽炎のように歪み、女の姿へ変わっていった。
色は同じだ。闇色の髪とブラッドベリーの瞳、色白い肌。ひっつめて結い上げられた髪、つり上がった目元なのに、俺を見る目は甘ったるいまま。母親とは違う種類の美しい姿だ。
「……男でいい」
「そうかい?」
あっという間に戻った。きっとこいつ自身も男の姿の方がいいと思っていたのだろう。
試すような真似を……。
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