相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

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1:出逢いと別れ

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「まずはやってみるよ、こう言うことはされてみる方が分かりやすいからね」
そう言われて暫く待つと、全身がもぞもぞとしてきた。確かに撫で回されるような感覚がある。
「このくらいだと読み取れるのは有機物か無機物か、名前があるなら名前、性別があるなら性別……ってところかな。質が上がれば、生き物なら元気かどうかとかそう言うのも読み取れる」 

***** 

鑑定をする場合、放出する魔力に属性は乗せない。対象への影響を極力抑えるためだ。
水属性辺りなら肌に潤いを与えるかもしれない(勿論奪う可能性もある)が、火や風などを交えてしまったらどんなことが起こるか計り知れない。
小さな火傷や裂傷で済めば治療がも出来るが、火だるまにかまいたちなどが起これば目も当てられない。
また、そう言った情報火傷や裂傷まで読み取り兼ねないため、属性を交えないことを推奨されている。 

この世界では属性を持つことを尊ばれていることもあり、高度な鑑定(無属性)は非常に難しいとされていた。
ゆえに、鍛練を積み、高度な鑑定を使えるものは神殿や商人と引っ張りだこだった。
武器が持てれば冒険者や傭兵、騎士などに就ける。争い事が苦手であれば、鑑定を覚え後方支援として働くことを考えるものもいた。 

大いなる矛盾とも取れるわけだが、つまり一般的な目標としては属性魔法を極めるか、鑑定魔法を取るかと言うことになる。
なお、神殿関係者は日々の祈りと鍛練によって属性魔法と鑑定(無属性)を両立できているとの噂である。実際は定かではない。 

***** 

鑑定は対象の放出する魔力と己の魔力を交わらせて、対象の状態を知る。これを、可能な限り短い時間でこなすのが目標。
「取り敢えずやってごらん」
そう言われて、されたように魔力を放出してみる。じわりじわりと溢れる魔力がベリーの身体を撫でるよう動き始める。ベリーが自然に放出する魔力と絡まり始めたのを体感出来たので、読み取ることに集中した。 

先程魔力で撫でられたとき、ただ撫でられたと言うよりは、確かに俺の何かを読み取ろうとしていた。うまくは言えないが。
それを思い出して、意識して、絡めとるように、読み取るように。
「……っん、そう……じょうず……っ」
「へんな声だすな」
「んふふ」
きみの魔力が気持ちいいから仕方ない、なんて言う。それは言い訳になるのか?

種族:ヒューマン
通称:ベリー
性別:男
詳細:ルシフの専属執事。 

俺が付けたはずの真名が読み取れない。
「おれの方でも開示する情報制限するようにしてるからあんまり見えないと思うけど……でも感じられたでしょ?」
「……ん」
不思議だ。目に見えると言うよりは、理解出来る・・・・・
「鑑定ひとつとっても、何か少し特別なことを成そうとするには魔力を使う。ただ、鑑定の場合は、一度見たものは調整次第でいつでも見直すこともできる」
「聞いたことないが」
「そりゃね。でも必ず同じものなんて存在しないから、心配性な人間はものを前にする都度、鑑定し直しするだろうね」

薬草の鮮度、剥いだ魔獣の毛皮、大量納品のポーション。
全く同じに見えても、鑑定で確認することで違いが見える。どこに傷があるか、とか。口に含むものであれば、痛んでいるものは避けたいはずだ。
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