相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

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1:出逢いと別れ

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言葉が途切れたタイミングで、再びドアがノックされた。
ちらりとドアを見て、ベリーを見上げる。ひたいに唇が落とされ、頬を包んでいた両手が離れていった。 

ベリーがドアの向こうのメイドと二、三話した後、食事を乗せたサービスワゴンを押して傍まで戻ってくる。
さぁ起こしますよと言うベリーに両脇の下に差し込まれ、上体を起こされた。然り気無く枕が立て掛けられて、そこにゆっくり背を預ける。 

「自分で食べる? それとも食べさせてあげようか?」
「……、……ぁ」
一拍考えて、口を開けて待つ。じっと見詰めれば、ベリーの顔がゆるゆるとだらしないものに変わっていく。
「んふふっ……そうくるかぁ……」
スプーンでスープをすくい、俺の口へ運ぶこと数回。それからパンを小さく千切って口の中へと入れてくる。交互に口に運ばれて、咀嚼し飲み込むこと数回ずつ。
途中眠気がやって来て、まぶたが持ち上がらなくなってくる。俺の反応が鈍くなったことで、ベリーは食器をサービスワゴンに置いて、俺のひたいに手を当て、頬へ移動させていく。
ひやりとして気持ちいい。
「もう食べないかい?」
「ん……」
「これなら昨日のうちに教えた方が良かったかな……悪いことしたね」
凭れるように座っていたのを、また寝かされる。
「ねない……」
離れようとしたベリーのシャツを掴む。今度こそスキルを教わるのだから。
「眠そうだよ?」
「ねない……」
「あぁ食べちゃいたいなぁもう……っと、いけないいけない」
袖口をにぎりしめていた手を柔らかく包まれ剥がされる。これを戻してもらってくるねと言いながら、残してしまった食事を乗せたサービスワゴンをコロコロとドアまで押していく背をじっと見詰めていた。重いまぶたを必死にひらく。
ベリーがドアを開けて、すぐ側に控えていたらしいメイドに伝えてサービスワゴンを引き渡す。コロコロと遠ざかる音を聞いていると、静かにドアが閉められた。
「さて、じゃあ食休みをして」
「……もうやる」
「すぐ?」
頷いて腕を伸ばす。起こせと。わざとらしい呆れたような溜め息を吐いて、ベリーが俺の身体を抱き上げる。それからベッドの端に座った。
俺は今、ベリーの腿の上に横抱きに座らせられている。
どうやらベリーは手だけではなくて、全身ひんやりしているようだ。もともとは蛇なのだし、当たり前なのかもしれない。思わずすり寄る。
幻覚のはずなのに、男の姿なのに、発達したような見目の胸筋が思っていたより柔らかい。
「ふふ……じゃあ丁度いいからこの体勢で始めよう。初めて鑑定をするときは触れてる方がいい」
「なぜ……?」

「鑑定とは、対象に魔力を注ぐことで情報を視る。注ぎ方や注ぐ魔力の精度で知れる情報は変わるが……方法としては対象の表面を撫でる感じかな? 蝙蝠を想像するといい。彼らは超音波を使って対象との距離・大きさ・有機物か無機物か……そう言ったものを知る」 

「なでる……こうもり……」
わかるようなわからないような。
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