相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

文字の大きさ
17 / 54
1:出逢いと別れ

17

しおりを挟む

ベリーの調子が戻ってからは、練度の他に精度を上げる練習をした。いかに薄く素早く魔力を送り、詳細に鑑定をするか。多少読み取れる内容が減ろうと、薄さと素早さに重きを置いて訓練する。
気付かれず、負担を掛けず、如何に正確な情報を得られるか。 
俺が習得する鑑定をそんな精度にする必要は無いように思うが(常に傍にベリーが居るのだし)、そう思う俺に対して「出来て損はないんだよ」と笑うベリーの顔を見ていると拒否しても無駄だし、まあいいかと思ってしまう。 

素早く出来たら、読み込める量が増えるよう気を付けながら速度を上げる。両立これがやはり難しい。なんとなく理解はしているが、実行するには俺はまだまだ実力が足りないようだ。
だが、慣れない訓練だからこそ順当に魔力が消費され、新たに作られていく魔力がうまく循環していく。 

もしかすると魔力の質も良くなっているかもしれない。それはなんだか喜ばしいことだと思う。


ある程度スキルが整ったら、今度は触れずに鑑定を使えるようにする。当然のことながらいつでも対象に触れていられるとは限らないからだ。 

やはり同性で触れすぎては不審がられるし、誤解されても面倒。異性とはそう簡単に触れあうものではないのが常識で、法律だ。そもそも触れる気もないのだが。
なんにしても、最低でも恋人。自然なのは夫婦だろうか。主従辺りも触れあうことはあるだろうが、べたべたするものではないから論外と言えるだろう。 
それに物質だって、無言で触り続けている姿は異様の一言で収まるだろう。下手すると警ら隊を呼ばれるだろうし、詰め所に連行などされたら羞恥でのたうち回る気がする。 

「……うん、いまのきみに上げられるのはそこまでかな」
「はぁ……はぁ……そうか……はぁ……」
集中し過ぎて酸欠になったようだ。今なら、視界にあるならば詳しく視ることが出来る。ぐるりと部屋のなかを見回してみる。 

品目:シャンデリア(中)
詳細:名工エタンセルマンによる至高の逸品。後期作。所々すずらんの花を象った小さく可憐な花が点在する。
丁寧に扱われており、製作されて100年以上たつがきらめきは失われていない。
光の精霊(小)の加護が付与されているため、悪夢を見にくい。貴族の子供部屋、客室などによく求められていた。現在は製造されていない。 

品目:カーテン(ロング丈)・蔦柄
詳細:機織りが名産の地、サンシーブルにて作られた。
裾に向かって濃い色合いになる生地、裾から伸びる繊細な花、または蔦、或いは鳥や空などを模した柄が丁寧に縫い込まれている。自然を愛する土地柄、花や蔦がよく使われている。老若男女問わず好まれる柄である。
大量生産が出来るようになり始めた頃のもので、作成時点でも稀にほつれが見られる。この時代のコレクターも存在し、ほつれがある方が好まれている。
状態は良好。とても大事にされている。 

品目:ベッドサイドランプ・すずらん
詳細:名工エタンセルマンの初期作。素朴ながら丁寧に作られた小さく可憐な花のランプが連なり、枕元に優しい光を届ける。
明かりの強さは3段階まで変えることが可能。当時画期的な技法として注目を浴びた。
この作品は製造から150年近くたつが、伯爵邸では今でも丁寧に扱われている。
なおエタンセルマンが製造したベッドサイドランプは全部で5つのシリーズがある。現在所在がはっきりしているのは伯爵家のすずらん、公爵家のゆり、バラ、侯爵家のアイリス。

「なるほど」
「鑑定って面白いでしょ」
同じものを鑑定しながら答え合わせをしていく。遊びのようなものだけれど、こう言う方法も学びやすいものだから暫く続けよう、と。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

処理中です...