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1:出逢いと別れ
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しおりを挟むベリーの調子が戻ってからは、練度の他に精度を上げる練習をした。いかに薄く素早く魔力を送り、詳細に鑑定をするか。多少読み取れる内容が減ろうと、薄さと素早さに重きを置いて訓練する。
気付かれず、負担を掛けず、如何に正確な情報を得られるか。
俺が習得する鑑定をそんな精度にする必要は無いように思うが(常に傍にベリーが居るのだし)、そう思う俺に対して「出来て損はないんだよ」と笑うベリーの顔を見ていると拒否しても無駄だし、まあいいかと思ってしまう。
素早く出来たら、読み込める量が増えるよう気を付けながら速度を上げる。両立がやはり難しい。なんとなく理解はしているが、実行するには俺はまだまだ実力が足りないようだ。
だが、慣れない訓練だからこそ順当に魔力が消費され、新たに作られていく魔力がうまく循環していく。
もしかすると魔力の質も良くなっているかもしれない。それはなんだか喜ばしいことだと思う。
ある程度スキルが整ったら、今度は触れずに鑑定を使えるようにする。当然のことながらいつでも対象に触れていられるとは限らないからだ。
やはり同性で触れすぎては不審がられるし、誤解されても面倒。異性とはそう簡単に触れあうものではないのが常識で、法律だ。そもそも触れる気もないのだが。
なんにしても、最低でも恋人。自然なのは夫婦だろうか。主従辺りも触れあうことはあるだろうが、べたべたするものではないから論外と言えるだろう。
それに物質だって、無言で触り続けている姿は異様の一言で収まるだろう。下手すると警ら隊を呼ばれるだろうし、詰め所に連行などされたら羞恥でのたうち回る気がする。
「……うん、いまのきみに上げられるのはそこまでかな」
「はぁ……はぁ……そうか……はぁ……」
集中し過ぎて酸欠になったようだ。今なら、視界にあるならば詳しく視ることが出来る。ぐるりと部屋のなかを見回してみる。
品目:シャンデリア(中)
詳細:名工エタンセルマンによる至高の逸品。後期作。所々すずらんの花を象った小さく可憐な花が点在する。
丁寧に扱われており、製作されて100年以上たつがきらめきは失われていない。
光の精霊(小)の加護が付与されているため、悪夢を見にくい。貴族の子供部屋、客室などによく求められていた。現在は製造されていない。
品目:カーテン(ロング丈)・蔦柄
詳細:機織りが名産の地、サンシーブルにて作られた。
裾に向かって濃い色合いになる生地、裾から伸びる繊細な花、または蔦、或いは鳥や空などを模した柄が丁寧に縫い込まれている。自然を愛する土地柄、花や蔦がよく使われている。老若男女問わず好まれる柄である。
大量生産が出来るようになり始めた頃のもので、作成時点でも稀にほつれが見られる。この時代のコレクターも存在し、ほつれがある方が好まれている。
状態は良好。とても大事にされている。
品目:ベッドサイドランプ・すずらん
詳細:名工エタンセルマンの初期作。素朴ながら丁寧に作られた小さく可憐な花のランプが連なり、枕元に優しい光を届ける。
明かりの強さは3段階まで変えることが可能。当時画期的な技法として注目を浴びた。
この作品は製造から150年近くたつが、伯爵邸では今でも丁寧に扱われている。
なおエタンセルマンが製造したベッドサイドランプは全部で5つのシリーズがある。現在所在がはっきりしているのは伯爵家のすずらん、公爵家のゆり、バラ、侯爵家のアイリス。
「なるほど」
「鑑定って面白いでしょ」
同じものを鑑定しながら答え合わせをしていく。遊びのようなものだけれど、こう言う方法も学びやすいものだから暫く続けよう、と。
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