相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

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1:出逢いと別れ

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そうして、ある程度技術が身に付いたと思えるところまで鍛えて、これならもう冒険の旅に出ても良さそうだ、となったわけだ。

一番新しいゴブリンの死体をきっちり血抜きして、俺たちそれぞれの血を垂らす。それから髪を一房。
これで魔力測定や血液測定をされても魔物と気付かれる要素がなくなる、らしい。 

最終的にはベリーの力量次第だ。
一番面倒がないのは、測定をしないよう誤認させ続け、葬儀・納棺まで済ませてもらうこと。
残念ながら伯爵家の人間であるから、俺の方は鑑定されるだろうけれど。
ベリーの方は頭部が残っていて、それなりに珍しいやや赤みのある黒毛だから測定まではされないだろう。 

念のため、無事に葬儀が済むまで見届けようと言われて、こうして普段とは違う意味で居たたまれない空間に二人、並んで見守っていると言うわけだ。


俺にとって予想外だったのは、家族が本気で俺の死を嘆いていることだった。
漸く消えたと唾棄されるよりは確かに良いが、どうしてこんなに、と正直戸惑わずには居られない。
「え? それ本気で思ってる?」
「は?」
お互いが何を言っているのかと言う目で見合う中、ベリーが言う。さもこの考えが正しいじゃないかと含めて。
「いやだって、あんなに家具に込められてたじゃん。色々と」
「家具? 込められ……?」
「エタンセルマンのやつ。特にシャンデリア」
シャンデリア……?
シャンデリアに何がある?
「うわ、本気で解ってないんだ……」
「は?」
信じられない。きみって種族ヒューマンじゃなかった?
などと大層失礼なことを言うベリーを、眉をしかめて見る。取り敢えず言ってみろと込めて。
「光の精霊の加護がついてて悪夢見にくいやつじゃん」
「子供部屋と客室向きってやつか」
言われてぼんやり思い出した。
晩年の作とは言え、精霊の加護を付けられる作品を作れるのはなかなか居ない。付与魔法が扱える・知人などに頼める……そんな特別な魔具師だとか、錬金術師の作るちょっとしたアイテム位だろう。
「それも勿論そうだし、アレ、いま世界に一つしかないやつ」
「へえ」
「…………」
「…………は?」
とんでもないことを聞いた気がするのだが?

「エタンセルマンの作品、人気だったんだけど彼の専攻ガラス細工だからさ、基本的に100年以上持たせられないんだよね」
気を付けてもぶつけて割っちゃうとか、戦争とか、魔物の暴走スタンピートとか、魔王出現とか……。
物騒な理由しかないが、100年ほど前となると致し方ない時代でもある。言われて納得はする。
するのだが、その先への情報に思考が追い付かない。
「…………」
「技術的な面でも重要な作品って解ってるんだから、十分かもしれないけど、一応ね」
そんなこと言われても、そんな大事なもの、伯爵家に置いていて良いものなのか?
いや、それこそ、いや、いや……。
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