相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

文字の大きさ
41 / 54
2:二人旅

18

しおりを挟む

やがて光が収束していき、職員がレバーを戻す。
紙は消えてカードのみになっていた。もう一度別の紙と新しいカードを重ねて置き、レバーを傾けて圧迫させる。 

二枚目も問題無く出来たようで、戻ってきた職員は二枚のカードをカウンターテーブルに並べて置いた。
光沢のない白いカードだ。右上の辺りに階級が印字されている。名前と所属ギルド。その下には、恐らくは得意武器や属性を表現したマークが描かれている。まだまだ空きがあるので、なにかしら会得をしたら追加されていくのだろう。 
ヴェリのカードには体術と鞭術を表してるのだろう拳と鞭、薄い緑色をした渦に杖が描かれてある。多分これは風属性魔法なのだろう。
俺のカードには小さな剣と、薄い水色をした渦に杖が描かれてある。 

「この階級の部分は、特殊で希少な、魔力を記憶出来るよう改良された金属で押されているんです。こちら文字を覆うように指を当てて頂いて、カードにご自身の魔力を流していただけますか。」
「はい」
特殊で希少とはどんなものなのだろうか。
かなり気になるところだが、登録はこの作業を済ませないと終わりではないだろうから、疑問を解くより先に終わらせてしまうべきだ。
腕を伸ばして、「E」とフチだけが印字された部分に親指を当て、ゆっくり魔力を注いだ。注ぎすぎて壊すわけにもいかないので、許容量を鑑定してからだが。 

魔力は誰にでもあるが、操作が苦手なものもやはりいる。その場合はこの部分に血を垂らすのだそうだ。
確かに、血にも少なからず魔力が混じりあっている。本人確認として効果が見込めると言うことだろう。
魔力の操作そのものは属性が関わらないが、この希少金属は個人に秘められた属性に反応を返すことが出来るらしい。恐らくは加工したことによる副産物。面白い。 

鑑定をしてみたところそう簡単には壊れないようだが、念のため少しずつ注ぐ。薄く伸ばすように注いでいけば、見た目以上に吸収がいい。
何となく吸い込まれるような感覚が鈍くなってきたので魔力を注ぐのをやめ、そっと手を離した。
よく見ると、地色と同じだったはずの「E」の字が、きらりと灯りを反射し銅色に染まっている。
俺とベリーの魔力が注がれたカードをそれぞれ確認した職員が頷く。
「……はい、過不足無く魔力が注がれていますので、これにてご登録完了しました。こちらのカードと、ギルドに設置されているとある魔導具が定期的に同期……つまり連携しています。こちらの魔導具にて個人を管理していますから、カードは登録された魔力の持ち主にしか利用出来ませんので身分証として有効になります」 

そして魔物を倒した履歴であったり、ギルドにどんな素材を卸したことがあるかであったり、銀行の開設と預金に引き落としなどなど記録されるとか。
カードにデータが蓄積されていくが、ギルドで把握するには要所要所で更新をする必要もあるそうだ。
更新は近場のギルドに足を運び、カードに魔力を通したものを職員に預ける。カードを作ったときに利用したあの黒い物体で読み込むのだそう。
これらに下手な偽装は出来ないので、採取・討伐データ等を加味してランクが更新されていくようだ。 

「先ほども申し上げました通り、紛失など十分お気をつけ下さい。ギルドについて詳細のご説明、今ご案内可能ですが、こちら冊子でもご用意があります」
成人男性の手のひらの大きさの、長方形の冊子を見せるように持ち上げる職員。携帯に便利そうではある。
恐らくは子供は寝る時間だからどうするかと、気遣いと言うやつなのだろう。はね除けるのはたやすいが、周りから目をつけられるのは避けたい。
実際不明な点は少ないし、ざっと目を通して気になることを後日聞きに来る方が良いとも思う。ベリーを、ちらと見やれば心得てるとでも言うつもりか、冊子を選択した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...